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五話 弟子の実力を見よう

 「お師匠様......行きますっ! ハアアアアアアアアアアーッ!!」


 ハクアが気合いの入った掛け声と共に、右の拳で攻撃しかけて来る。

 凄まじい! その威力は。当たればオリハルコンが砕けるからね。


 そんな攻撃を避ければ、ハクアが逆に怪我をしそうだと思い。 

 タイミングを合わせて手の平でいなす。


 「わぁっ......凄い......」

 「どんどん、打って来て」

 「は、はいっ!」


 ハクアの実力を見るために、攻撃を続けさせる。


 一打、二打、三打、四打......とハクアの連激(ラッシュ)を全て捌く。


 ......基本は出来ている。

 足運び、身体使い、俊敏性、気迫。可愛さ。どれを取っても申し分ない。

 平均的な格闘家の戦闘力を一としたら、今のハクアは五十と言ったところか......上々。


 「そこまで! もういいよ。大体わかったから」

 「......っ! はいっ! ムムッお師匠様ー!」


 頬をプクッと膨らませる。可愛い。

 可愛いさレベルが一万を越えてる。


 「お師匠様っ! もっとしたいです! もっともっと、お師匠様としたいです!」

 

 ハクアが、ポカポカお腹を叩いて来る。

 

 「焦るなって、そんなに焦たってすぐに強くなれないから」

 「でも、お師匠様っ! こんなの......身体が疼いちゃいます」

 

 その気持ちはわかる。

 闘いの為にあったまった身体と心が、動きたい動きたいって、興奮してしまっている状態。


 「それでいいんだ。今からその気持ちを解消させてあげるから」

 「え? お師匠様の夜のお相手をさせてくれんですかー!」

 「......まあ。そんなとこ。着いてきて」

 「はいっ! 喜んで!」


 目をギラギラさせているハクアを連れて夜の樹海に入る。

 暫くすると、ハクアが腕に絡み付いてきた......


 「初めてなのに暗い森の中で、なんて......流石はお師匠様ですっ! 月明かりが良いムードをもり立てていますね」

 「そうだね......今日はもう、ここで良いかな?」

 「私は何処でも構いませんよ? うふふ」

 

 お尻をフリフリ振っているハクアの頭を撫でてから、指をさした。


 「じゃあ、アレを倒そうか」

 「えっ...... 倒す......ですか?」

 「「「「グギァアアアアーーっ!」」」

 

 修練山に住み着いている、人喰い魔獣ビッグベアー。

 三メトル以上の体長と、十トン近い体重。岩を簡単に引き裂く鋭く太い爪。鋼に匹敵する硬い剛毛。 


 攻守のバランスが良い、魔獣で戦闘力は百を越える。

 そんな、ビッグベアーの群れ。


 「あの? 師匠......夜のお相手は?」

 「あの熊達がしてくれるよ......抱かれたらしぬと思うけど」

 「嗚呼! お師匠様の性格を忘れていました......でも、そういうイケずなお師匠様ステキです。うふ」


 懐いてくれるのはうれしいが、ハクアの将来がちょっと不安になるのはなぜだろう......

 まあ、どうしてもダメなら、その時は、俺の妾にでもしてあげよう。

 なんだかんだ、幼いとは言えハクア程の上玉、売るのは勿体ないからね。


 「ハクア。ビッグベアーは強力だけど、動きは遅い。一対一で戦えばハクアなら勝てるよ。少し待ってて」

 

 ハクアとビッグベアーを一対一にするために、群れの中へ身を投じる。


 ふぅ~っと拳に息を吹きかけて、精神統一。

 

 そのまま、ビッグベアーの腹に拳を一打、打ち込むんで、硬い剛毛の護りを串刺しにした。

 

 「グオオオオオオオオオオオ」


 仲間がやられた事に怒った他のビッグベアー達も、一斉に襲ってくる。


 まずは敵の数を見切る。

 前に四体。後ろに五体。計九体。一打一殺!


 一体一体の攻撃を避け、カウンターを打ち込んだ。


 ドス! ドス! ドス! ドス!


 一打、一打が、ビッグベアーの急所を一撃で貫く。

 返り血すら受けることはなかった。


 生の光を失った、ビッグベアー四体が、バタバタ音を発てて倒れて、

 後ろの五体に戦意を向ける。


 すると......

 ビッグベアーが逃げ出していく......


 ......え? 逃げんの?

 お前ら食人魔獣だろ!? 


 「お師匠様ー! 流石ですっ! ステキですっ! しびれますっ~」

 「こらっ、ハクア。抱き着くな。追わないと、備蓄する肉がなくなっちゃうぞ?」

 「えっ......? 肉欲ですかー? (>w< )」


 言ってない。


 「良いですよ! 良いですよ! 私で慰めてください。どんなにハードな要求でも、師匠の欲求なら受け止めちゃいますー(≧∇≦)」

 「お前......台詞の四割が下ネタなのはどうにかならないの?」

 「何言ってるんですかー、ネタじゃなくて、本気ですよー(>_<)」


 ぷにぷにのほっぺたを押し付けて言っている。可愛い......。


 「何でも良いけどハクアが、ビッグベアーを仕留められないなら、破門するからね」

 「は、破門!?」

 「当たり前だ。この俺が、ただの穀潰しを弟子に置いとくわけ無いだろ? 肉欲のまえに、食欲だ。餓死するからな」


 ハクアには、コレから独りで調達させるつもりだったが、それが出来ないなら......

 前言撤回。

 いくら可愛いくても妾に囲うつもりは無い。性奴隷はいらない。

 今すぐ、売り払おう。


 「破門はっ! いやですぅうううううううううううううううううーーっ!」

 「えっ? おい! ハクア!?」


 ハクアが絶叫しながら、ビッグベアーの後を追っていた......

 五体の! ビッグベアーを......


 ハクアに五体同時は荷が重い!

 ハクアが死ぬ!

 あの優しくて、ちょっとおマセなハクアが......


 それは......嫌だ。


 子供のおふざけに破門は言い過ぎたと、ハクアを急いで追った。

 そして、追いつくと......


 「えいっヤーーーっ!」

 「グオオオオオオオオオオオ............グオっ......」


 ハクアが四体目のビッグベアーを始末したその瞬間だった......


 あれ? 倒せちゃったの? 

 さっきの組み手を見た限り、無理だった筈なのに......


 まさかの読み違いに困惑していると、地面が揺れるほどの雄叫びが響いた。


 「グガオオオオオオオオオーーっ!」

 

 堂々と姿をあわらした。声主を見てハクアがいう。


 「また出ましたね。私と師匠の愛を引き裂きに......ビッグベアーさん」


 違う。愛云々はちょっとよくわからないけど、出で来た熊さんはビッグベアーじゃない。

 アレは、ビッグベアー達の......いや、恐らくこの修練山密林地帯の主。

 名を、《キングベアー》

 戦闘力は三百を越える。


 体格は殆どビッグベアーと体差はないが、体毛の色が違う。

 暗い森の中でも、輝く銀色。オリハルコンに次ぐ、白銀の硬鉱石、ミスリルの輝き。

 体毛の硬度もそれに準ずる......

 しなやかで、弾力性があるから、ミスリルよりも厄介か。


 ハクアの勝てる相手ではない。


 「ハクア!! 下がれ! 俺がやる!」

 「破門は嫌なんですぅーーッ!」


 言うことを聞かなかったハクアが、ビッグベアーへと接近する。


 速い! 弾丸の如く......


 しかし、ハクアの繰り出した攻撃(パンチ)は、硬さミスリル級の体毛と、分厚い筋肉の弾力性によって打ち消される。


 「えっ! くっ! このこのこのこのこの!!」


 一撃でダメなら連檄でと言うように、ハクアがラッシュを繰り出す。

 だが......効かない。


 ハクアの攻撃には技が無い。

 アレではいくらオリハルコンを割れる威力を持っていても、キングベアーの様な本物には敵わない。


 連激も虚しく、ハクアはキングベアーに弾き飛ばされた。

 

 「ハクア!! もういいって!!」

 「嫌っ! 嫌っ! 嫌ーーっ!」


 吹っ飛ばされたハクアを助けようと近付いたとき......それが起きた。


 「嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌なの! もうっお師匠様と離れるのは嫌なの!」


 《気》。

 生物なら誰もが持っている、その生物の本質の様な空気。 


 「お師匠が私なら倒せるって言ってくれた!」


 それが変質する。


 「私は出来る。私は出来る。私は出来る! お師匠が見ているから!」


 それは、自己暗示。

 自分は出来ると思い込むことで、力を覚醒させるもの。

 それこそがハクアの才能の片鱗。

 

 「ハアアアアアアアアーーッ!」


 ハクアがさっきよりも更に速く加速して、キングベアーの胸元に一撃を入れる。


 ドスン!!


 「クガオ......っ」


 力だけで......キングベアーの体毛を貫いた。凄すぎる。

 

 ハクアはキングベアーからゆっくりと腕を引き抜いて、コチラを見る。


 「お師匠様......倒しました。破門......は?」

 

 キングベアーの返り血で、どろどろになっているハクアがノソノソ近付いて倒れてきたのを、服が汚れのを構わず受け止めた。


 「お師匠様......私は、お師匠様の弟子でいて良いですか?」

 「......」

 「お師匠様と一緒にいて......良いですか?」


 泣きそうなハクアを抱きしめて、言った。


 「ああ。ハクアは俺の可愛い弟子だ。誰にも渡さないよ。ずっと一緒に居ていいよ」

 「えへへ......嬉しい......師匠。約束......覚えてますか?」

 「......ああ。アーデル」

 「ふふっ......約束通り......」


 幸せそうにハクアは眠りはじめた......

 その安らかに眠る、寝顔は不甲斐にも少しドキドキしてしまう程、可愛かった。

 俺、もうダメかも......ハクアが可愛すぎて......

 



 しかし、その夜。ムドウは知ることになる。ハクアが掃除に引き続き料理も出来ないことを......


 「フフーフ♪ フフフ♪ フフフーフフ♪ フフフフフフー♪ フフフフフフー♪ お師匠様ー。夕飯が出来ましたよー」

 「......」

 

 この日、ハクアの作った熊鍋を食べて死にかけたムドウは思った。

 やっぱり、弟子なんか取るもんじゃないと……


 「あっ♪ お師匠様ったら~ ちゃんと布団で寝ないとダメじゃないですかー。ご飯も残ってますし......アーン。しましょうね(うっとり)」

 「......(昇天)」




 

 

 

 

 


 

 

 

 


 


 

 

 

 



 


 

 

 

 

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