冒険2日目2
目が覚めると、前方に黒い修道服を着たシスターがいた。
長い金髪を後ろで三つ編みにしてまとめている。
周りを見渡してみると、すぐ側に木でできた長椅子がある。
シスターの後ろには、両手を組んで祈っている羽の生えた女神像があった。
その上部には、色とりどりのガラスでできたステンドグラスがある。
そこから光が差し込み、室内を明るく照らしていた。
神殿に転移したのかな?
周りを見ると至る所で光ってからプレイヤーが現れている。
俺と同じくきょろきょろ見渡す人がいた。
だが、ほとんどの人はすぐに外へと出て行っている。
急いでいる人に聞くのも迷惑なので、目の前のシスターに聞いてみよう。
「ここはどこですか?」
「ここはフロンティアの神殿です。死亡してしまったのですか?」
シスターは微笑みながらそう返答した。俺は黙ってうなずく。
「死亡した場合、一番最寄りの神殿に転移されます。デスペナルティとして持ち金の半分が失われます。」
え?慌てて残金を見る。俺の所持金は200G程度だった。
森に出た当初とあまり変わっていない。
何度か戦闘をしていたので、その分所持金が増えていたのだろう。
元は400Gあったはずだ。たかが200Gとはいえ、今の俺は金欠だ。
無くなってしまった金は、地味に痛い。
「大金を持ち歩きたくない時には、冒険者ギルドにお金を預けてください。体力を回復したい時は、100Gかかりますが、私に言ってくださいね。」
そうシスターが言ってくれたが、今100G出すと所持金が更に半額になる。
少し悔しい思いを感じるが断った。
(お金ためなきゃな。)
クエスト達成を報告すべく、冒険者ギルドまで来た。
がやがやと混み合っている。
見渡すと、前回と同じく1カ所だけ空いている所がある。
「クエスト完了しました。」
受付のお姉さんに、いやし草とギルドカードを渡す。
「はい。いやし草を10本ですね。えーと、品質は・・・まぁまぁですね。クエスト達成です!」
『クエスト達成!』の文字とスタンプが目の前に出てくる。
「今回ウルフも1匹倒していますね。報酬に加えておきます。ジンクさんは後4Pでランクアップします。頑張って下さいね。」
お姉さんから報酬とギルドカードを受け取った。
報酬の中身を見ると
報酬 130G(クエスト110G、ウルフ討伐20G)
冒険者ポイント 6P(クエスト5P、ウルフ討伐1P)
となっていた。
クエストの報酬は100Gだったはずが110G貰えている。
Dランクの低めの品質だったが、少しプラスされたようだ。
最低品質が基準になっているのだろうか?先に鎌を買って良かった。
ランクは後クエスト1回かウルフ4匹で上がりそうだ。
結構順調だな。金以外は。
ログアウトの時間までまだ少しある。
俺はまだ行っていない商店街へと向かって行った。
商店街は他の場所と違って比較的NPCが多い。
ざっと見ると、道具屋、武器・防具屋、食料品店などが並んでいる。
今は金欠なので買うことはできないが、ぶらついてみる。
えーと、本屋・・・喫茶店・・・パン屋がある。
結構色々な店があるんだな。ん?いい匂いがする。
匂いのする方向へ行ってみると宿屋が並んでいる所の側に屋台があった。
ケバブの屋台だ。噴水の所で食べている人を見た。
食べたいが、1個200Gする。買ったら所持金がほとんど無くなる。買えない。
屋台をボーっと見ていると、
「2つ下さい。」
大剣を背中に背負った灰色の髪をオールバックにしたオッサンが買っていた。
400Gだ!自分の所持金より高い額をポンと出す様子に思わず目を丸くして見る。
目が合ってしまった。こっちに歩いてくる。
失礼だったかな?俺は立ち去ろうとすると、声をかけられる。
「おう、嬢ちゃ・・・違うな、兄ちゃん食うか?」
と両手に持ったケバブの内片方を出してきた。このオッサンはいい人だ!
「え?いいんですか?ありがとうございます!」
一瞬性別を間違えられたような気がしたが、気にしない。
今は腹が減っているのだ。
紙に包まれたケバブを持つと温かい。
中身がこぼれない様に気を付けつつ噛り付くと、
よく焼かれた牛肉と新鮮なキャベツとトマトに
少し辛めの濃厚なソースの味がする。旨い!
「旨いです!」
「そうかそうか。俺も昨日食ったんだが案外旨くてな。また今日も買いに来ちまったよ。」
そう言いながら肩を叩いてくる。結構力が強い。
「けほっけほ、そ、そうなんですか。」
俺は少しむせそうになりながら答えた。
「オッサンが子供の頃はゲームっていうとテレビの画面見てやるもんだったんだよ。まさか、ゲームの中で食べ物の味が分かるようになるなんてなぁ。」
今はVRゲームが主流だが、味まで分かるフルダイブのゲームはSEOが初だ。
ゲームでなければ、既に食品メーカーで使用されている技術ではあるが。
「おれもゲームで料理食べたの今回が初ですよ。」
「お、そうだったか。まぁそんなんで、料理に興味が出てきてな。料理人になったんだ。その内、屋台出すから食って行ってくれよ。」
オッサンがそう言うと、
『マサからフレンド申請がされました。承認しますか?』
と表示されたので、『はい』を選んだ。
SEOで初めてのフレンドだ!うれしいね。
ピピピ♪
ログアウトの時間が迫ってきたため
「屋台で来たら呼んでくださいね。食べに行きますよ。」
と伝え、俺はログアウトした。
次回、ようやくパーティー行動ができます。
2017/10/28 改行等修正しました。