祭りの前兆1
「まぁ、ぼちぼちだな。」
「ハチミツ40個以上手に入れられたし、上出来でしょ。」
「俺にとっては大金なんだが・・・」
「ハハハ・・」
俺達は今、冒険者ギルドで生産を行っている。
ハチミツを除いたドロップアイテムを売った結果、一人300Gの稼ぎになった。
俺が、狩りにに行く前に持っていた金額と同額である。大金だ。ユージの金銭感覚はおかしい!
・・・コホン、まぁ、モンスターを倒すことで600G得たので、確かに少ないかもしれない。
「よし、ジンクにうまい初級ポーション作ってもらおうか。」
「ん、ここじゃあ作れないから、錬金術の小屋まで来てもらっていいかな?」
「うん。行こう。」
あれ?錬金術師じゃない人も入れるんだっけ?
・・・・・
「へー、こんな所に小屋があったんだね。」
「ギルドの裏なんて、ふつう見ないからね。」
「何でこの建物だけ黒いんだ?・・・ちょっと待て。」
3人を錬金術師の小屋まで案内したが、ユージの様子がおかしい。
壁をじっと見て、顔が半笑いになって強張っている。
「どうした?ユージ」
「この壁・・・黒曜石って表示されてるんだが。」
『んー?』
俺とテル、リコが壁を見る。何も表示されない。
テルとリコも同じようだ。壁を見て首をかしげている。
「何も表示されないけど?」
「オレが鍛冶師で鑑定しているからだろう。鉱石の名前が分かるからな。」
「それで、ユージ。黒曜石って何なのさ?」
「黒曜石ってのはだな、火山の岩石の一種だ。大体のゲームだと、終盤の装備で出てくるんだよ。何でこんな所で小屋に使われてんだ?ここが掘れたらすごい装備ができそうなんだが。」
「何言ってんだよユージ。建物を掘れる訳がないじゃないか。ギルドマスターが、錬金術に失敗すると爆発がどーとか言ってたから、そのせいじゃないかな。」
「・・・爆発って、お前・・・大丈夫なんだろうな?」
「多分・・・」
ユージ達3人は冷や汗をかいている。ドン引きだ。
大丈夫だよ!多分・・・
――コンコンコン♪
「はーい。」
アルクさんが出てくる。長い黒髪だ。今日はおかしい所がない・・・と思ったが、耳が尖っている。
「・・・エルフ?」
「何のことですか?私は人族ですよ。」
テルが突っ込んでいるが、アルクさんに姿のことを聞いても無駄だ。
ユージとリコが後ろでコソコソと話している。
「今日はお友達を連れて来たのかしら?」
「ええ、パーティーメンバーです。錬金術をしたいのですけれど、一緒にいても大丈夫ですか?」
「平気よ。ただ、あまり騒がしくしないでね。」
他の人を連れてきても大丈夫なようだ。
早速、錬金釜の前に立って、錬金術を始める。
初級ポーション改の材料は
いやし草×1 水×1 ハチミツ×1だ。
全て錬金釜に入れ、かき混ぜる・・・・光が溢れてくる。
『初級ポーション改(ランクF)を作成しました。』
「できた!」
「へー、錬金術ってこうやるんだね。簡単そうだ。」
テルの言った言葉をアルクさんが聞いたのか、耳がピクっとしている。
うっ、背筋がゾワっとした。嫌な予感がする!
アルクさんが一瞬、二ヤッと黒い笑みを浮かべた気がしたのだ。
「あ、あと3つすぐ作るから、ちょっと待っててくれ。」
俺は残り3つをさっさと作成し、皆に渡した。
失敗はしなかったが、全てランクF(粗悪品)だ。
「へぇーどれどれ・・・って粗悪品じゃないか。大丈夫なのか?これ。」
「味に影響はないよ。・・・多分」
「ハハ・・」
皆してコルクを開けてポーションを飲む。
「美味しいね。」
「うん、美味い・・・ん、これMP回復してね?」
「ああ、ちょっとだけだけど、MPも回復するよ。」
「どれくらい回復するの?」
自分の初級ポーション改を鑑定する。
「HPが25、MPが2回復だね。」
「粗悪品でそれか。普通のポーションより回復が少なめ程度。MPも少し回復する。しかも美味い、か・・・これは、いけるかもしれないな。」
ユージが何やらぶつぶつ言いだした。