ハチミツ狩り2
「へぇー、結構立派なもんじゃないか。」
「きれいだね。」
「虫が多いな。」
花畑に着いた俺たちは思い思いの感想を言った。
ここは北の森にある花畑である。
記憶にある掲示板の情報を頼りに、俺がユージ達を案内したのだ。
途中でいやし草などの素材を見つけたが、詳しい場所を把握していない俺は、泣く泣く採取を諦めて案内に徹した。途中でウルフに襲われたが、4人パーティーである。少しくらい群れて掛かって来ても瞬殺だ。
途中で道なき道を通ってきたが、ほとんど迷うことなく到着できた。
だが、最初にこの場所を見つけた人は、どうしてこんな場所を通ったのだろう?
不思議だ。
花畑の大きさは大体10a(100平方メートル)程度だ。
一面に白やピンク色の花で埋め尽くされている。
花の周りには極彩色の蝶や黄色い蜂が飛んでいた。
「よし、テル。1匹撃って引き付けてくれないか?」
「分かったよ。」
テルが弓を構えて撃つ。・・・命中した!
10m近く離れているので、10円玉程度の大きさにしか見えない。
よく当てられるものだ。
「なんかこっち見てない?あれ。」
リコの指さした方を見る。
矢を当てられた蜂の周囲にいた蜂もこっちに体を向けて飛んできた。
6匹もいる。多い!
慌ててファイアーボールを撃つ。
テルも矢を放ち続けたが、ここに来るまで2匹までしか倒せなかった。
ユージが前に出て、剣を振るう。
最初の2体はユージが引き付けられたが、残り2体はこっちに来る。マズイ!
10円玉程度にしか見えなかった蜂だが、間近で見るとラグビーボール位大きい。
デカっ。あの針に刺されたら死んでしまうんじゃないか?
そんな事を考え、攻撃するのを躊躇してしまった。
蜂が針をこちらに向けて飛んでくる。
(刺される!?)
ギュッと目を閉じて歯を食いしばったが、来たのは胸にトンっという軽い衝撃だけだった。
HPは5しか減っていない。見掛け倒しだったようだ。
急に冷静になった俺は、恥ずかしさで顔が赤くなりそうになった。アバターなので赤くならないが・・・
恥ずかしさを紛らわせる為、俺は周囲にいた蜂をファイアーボールで焼き、木の杖で叩き、攻撃しまくった。
ものの数分で蜂たちは全滅した。
「この程度の強さでハチミツ落とすのか。結構いい敵だな。」
「集団で襲ってくるから装備を固めるか、パーティーで相手しないと厳しいけどね。」
ユージとテルが話している。どうやらハチミツをドロップしたようだ。
「ボクは苦手だな、あの蜂。」
「ああ、あの針大きいからな。」
「ププ、ジンク刺される時すごい顔してたよね。」
「ほっとけ・・・」
リコの表情が少し強張っていたが、どうやら軽口を言える元気はあるようだ。
寧ろ、俺の方が精神的ダメージを負っている。頼むからあの時のことは忘れてくれ・・・
この後90分程この場所で蜂と戦い続けた。
途中で蝶とも戦ったが、この蝶は【ポイズンバタフライ】という敵だった。
毒を持っていたのだ。
途中ユージの肌が青紫色になった時は本当に気持ち悪かった。
持っていた解毒薬を渡したが、「サンキュー」と言いつつとてもまずそうに飲んでいた。解毒薬も改良が必要そうだ。
ドロップアイテムは目的のハチミツが42個、他に蜂の針や蝶の鱗粉が手に入った。
大収穫だ!
「おい、熊が出てきたぞ。」
ユージの言葉で前方を見ると、黒色で体長3m近くある熊がいた。
【ハングリーベア】と表示されている。ハチミツ目当てなのかな?
結構強そうだ。
「ユージ、どうする?」
「・・・戦えば勝てるかもしれないが、負けた時の損失が大きい。退散しよう。」
「そうだね。」
俺達の意見は全員一致し、転移石を使って町へと戻った。
次回 「祭りの前兆」です。