ハチミツ狩り1
「おい、仁。今日一緒にSEOやろうぜ。」
今日、遅めの朝食を食べていた俺に兄さんがソファーから話しかけてきた。
「今日は昼予定があるから、夜からなら大丈夫だよ。兄さん。」
「お、そりゃ丁度いい。今日は日曜日だからな。皆が集まれる日なんだよ。
ギルドメンバーに紹介したいから、夜にトーキョーサーバーのフロンティアに来てくれ。」
ギルドメンバー?
「ギルドメンバーって何?そんな機能あるの?」
「いや、まだ実装はされてないんだがな。次回のアップデートで実装されるらしい。今からメンバーを集めてるんだよ。仁もよく知っている奴がいるからな。」
俺の知ってる人?まぁ、いいか。夜になれば分かるだろう。
「分かったよ。兄さん。」
「それじゃあ俺出かけてくるから。また夜にな!」
兄さんは、さっと右手を挙げて外へと出かけて行った。
・・・・・
「おーい、こっちだ!」
ユージが呼んでいる。テルとリコもいた。
「はぁ、はぁ、悪い、俺が最後だったか。」
「まだ時間前だし、大丈夫だよ。」
俺は今、SEOのフロンティア北の門の草原にいる。
30分以上前にログインした俺は、時間に余裕があるからと冒険者ギルドの売店を見ていた。
色々目新しいものがあったので、ウロウロしていたらギリギリの時間になってしまったのだ。
結果、息を切らして走ることになってしまったが、目的のモノは買えた。
「ほら、ユージ、返すよ。」
「ん?ああ、『転移石』か」
「あ、忘れてた。ボクも返さないと。ありがとね。」
ああ、とユージはリコからも転移石を受け取っている。
この転移石、200Gした。【200G】もである!
ユージに返した分と、今回の帰りに使用する分で400Gかかった。
今の所持金は300Gである。昨日パーティー行動した時とほとんど変わらない。
「はぁ・・・」
「何始まる前からため息ついてんだ。行くぞ。」
ユージに肩を叩かれ出発した。
――何やら騒がしい。
声のする方向を見ると、兎の化け物がいた。
大きな角が額から生えていて、全長10m位ある。
周りには大勢のプレイヤーがいて、魔法や矢が飛んでいるのが見える。
「フィールドボスモンスターだ!俺達も行こうぜ!!」
「うん!」
ユージとテルは、何が起きているかをすぐに察し、兎の化け物に向かって走って行った。
「行っちゃったね・・・」
「・・・俺達も行くか。」
騒ぎの場所に着くと、そこは戦場だった。
プレイヤーたちは連携せず、思い思いに攻撃し、回復していた。
兎の化け物は『ジャイアント・ホーン・ラビット』という名前だ。
既にHPバーは2/3削れている。大分優勢なようだ。
周りには一角兎が20匹ほどいる。倒されてはいるが、すごい勢いで増えている。
ボスを倒さない限り、出現し続けるのだろう。
ジャイアントホーンラビットの周りでは、突進を受けて吹っ飛ばされるプレイヤーや、ジャンプで踏みつぶされているプレイヤーがいる。
優勢ではあるが、油断できない状況だ。
お、ユージがいる。
ジャイアントホーンラビットの目の前にユージがいた。
ジャイアントホーンラビットは大きな角を正面にして走り、刺そうとしている。
ユージは盾を構え、角の接触した瞬間左へと弾いた。
(だから、あいつのSTRおかしいだろ!)
よろけたジャイアントホーンラビットにプレイヤーが群がり、攻撃をしていく。
俺も便乗し、ファイアーボールを撃ちまくった。
しばらくすると、ジャイアントホーンラビットと、周りの一角兎達はポリゴンとなって消えた。
『ジャイアントホーンラビットを倒しました。』
ウィンドウと共に、アイテムが手に入った。
『兎の毛皮×2』と『兎の肉×4』だ。経験値もレベルアップするほどではないが、大量に入っている。
「運がよかったな。」
ユージが近づいてきて言った。テルも一緒にいる。
「フィールドボスモンスターは、他のプレイヤーと戦っても横殴りにはならないんだな。」
「ああ、1つのパーティじゃ倒せないことがほとんどだからな。ただ、先に戦っていた方がレアアイテムが手に入りやすくなるから、先に戦うメリットはあるぞ。」
俺の疑問にユージが答えてくれた。レアアイテムか。狙ってみたいな。
・・・人数が足りない気がする。
「ん?リコは?」
「リコなら、あっちにいるよ。」
テルの指さす方向を見ると、戦士のお姉さん方に話しかけられている。
ちょっと困った様子だ。
「リコ!」
「っ、ジンク!・・・ごめんね。これから今組んでいるパーティーと用事があるからさ。また、今度機会があったらね。」
『ええ~っ。』
話に割って入った俺をリコは顔を輝かせて喜んでくれたが、
お姉さん方は不満そうだ。
やめてくれ。俺をそんな目で見ないでくれ。
ちょっとおかしな視線も感じるが、それもやめて欲しい。
「助かったよ、ジンク。さっき色んな所にヒールかけていたら感謝されてね。
それは嬉しかったんだけど、パーティに誘われてね。ちょっと強引だったから中々断り辛かったんだよ。」
リコはそっちの趣味のお姉さんには堪らないんだろう。
羨ましいよな、哀れなような。
「連れてきたか。ご苦労だったな。
じゃぁ森へと向かうか。」
此奴!偉そうなことを言うユージの脇腹を殴ったが、俺の手が痺れただけだった。
次回こそ、次回こそはハチミツ採りに行きます。