パーティー戦2
『いらっしゃーい』
俺達は入室した人を歓迎した。
「治癒術師募集でよかったかな?」
そう言いながら入ってきたのは黒い髪で前髪を下したショートカットの少年だった。一見ボーイッシュな女の子に見えたが、男用の黒い修道服を着ているので男の子だろう。背丈は俺と同じくらいだった・・・俺の身長はユージとテルに比べるとだいぶ低いが。
「ああ、そうだよ。」
ユージが代表して答える。
「良かった。ソロでやるのは心配だったから。ボクはリコ。
まだ始めたばっかりでレベル1なんだけど大丈夫かな?」
「そうだな、オレはレベル8だから大丈夫だけど、ジンク、テル、お前ら今レベルいくつだ?」
「僕はレベル6だよ。」
「俺はレベル3」
「ジンク・・・まだ2つしかレベル上げてなかったのか。まぁ、差は10レベル以内だから大丈夫だな。」
ユージが余計なことを言っていたが大丈夫なようだ。
俺のレベルが低いのは楽しみながらゲームをしているからであって、下手な訳ではない。そうに違いない。
「良かった。」
リコはほっと胸をなでおろしている。
ホント、一々可愛らしい動作をする奴だな。そっちの趣味のお姉さんがいたら大変そうだ。
「よし、パーティメンバーも揃ったし出発するか!」
「おう!」
「はい!」
・・・・・
あいつら、足速いな。
AGIの差が露骨に表れて、前方にユージとテル、後方に俺とリコで離れた。
向こうはこっちに気を使ってくれているのか、一定以上の距離は離れない。
「ジンク・・・君は魔術師なのかな?」
歩いているとふとリコが話しかけてきた。
パーティメンバーだからな。コミュニケーションをとらねば!
「ん、そうだよ。まだファイアーボールしか使えないけどね。
あと、ジンクでいいよ。ジンク君って言いにくいでしょ。」
仁君君になってしまう。
「フフ、なら、ボクのこともリコって呼んでほしいな。
ボクもまだヒールしか使えないからね。攻撃力が低いから
兎倒すのも一苦労だったし途方に暮れていたところだったよ。」
「ハハハ、俺だって一匹が相手ならいいけど、複数敵がいると防御力がないからすぐやられてしまうよ。」
俺たちは互いに笑いながら愚痴りあった。こいつ、なかなか話せる奴だな。
「リコって生産職は何にしたの?」
「ボクは音楽家さ。都合が合えば、ダンジョンで披露するよ。」
「音楽家って生産職なのか?」
俺は前から思っていた疑問を聞いてみた。
「うーん、レベルが上がっていけば作曲できるらしいけど・・・
ジンクは何の職業にしたのさ?」
「俺は錬金術師だよ。ポーション1個も持ってないけどね。ハハハ」
少し自棄になりながら生産職を紹介した。
「そんな自分を卑下するなよ。MP回復するポーション作れたら贔屓にするからさ。」
「ハハハ、サンキュー。お前良い奴だな!その時は頼むよ。」
社交辞令だろうが、俺は嬉しくなり、リコの肩を叩いて礼を言った。
「おーい、ジンク、リコ、こっちだ!」
俺達が笑いながら話しているとユージの呼ぶ声が聞こえた。
パーティー戦のサブタイトルなのにまだ戦闘していないことに気付く作者。
次回から戦闘に入る予定です。