パーティー戦1
時計を見るとまだ11時だった。
昼のバイトまで、まだ時間がある。
携帯を確認すると雄二からメールが届いていた。
「何々、今日の夜9時集合、サイタマサーバーのフロンティア南門か。」
OKと返事を返してバイトへと出ていく。
・・・・・・
いやぁ、コンビニの夕方時って何であんなに混むんだろ。
バイトの前半は暇だったのに、帰る直前になって急に混みだした。
定時に帰るのに同僚のアルバイトに謝りながら帰ったが、今日はもうクタクタだ。
俺は「疲れた、疲れた」と言いつつゲームをセットする。
サイタマサーバーのフロンティアに降り立った。
いつもと同じ場所だが、夜の為、雰囲気が異なる。
噴水は白くライトアップされ、広場や大通りには街灯がついている。
ログインしている人数は昼間よりも多いみたいで賑やかだ。
神殿を通り過ぎて南門までやってきた。
南のフィールドは平原だ。北とは違って茶色い土が見えている。
町の周りは明るいが、遠くまで行くと光が届いていないようで薄暗い。
ここでも座ってパーティを探している人や雑談している人が多い。
雄二はどこかな?探しているとチャットが開かれた。雄二からだ。
「えーと、南門の西のはずれにいる?」
西側へ行くと赤髪で短髪、戦士の格好をした男がいる。
名前を見ると『ユージ』となっていた。
顔が大幅に美化されているが、何となく元の面影はある。
「雄二か?」
「おう、来たな。久しぶり。あとはテルだけだ。今、フロンティアに着いた所みたいだから、待ってようぜ。」
5分ほど待つと、緑色のポンチョに茶色いハットをかぶった男がやってきた。
背中には弓と矢筒を背負っている。
名前は『ヴィル』だ。
「お待たせ。」
「どちら様ですか?」
顔が完全に白人だ。髪は金色だし、眼は緑色である。俺にそんな友人はいない。
「いやいや、僕だよ!テルだよ!自分の体を基にした訳じゃないから、分かり難いとは思うけど。」
「自分の体を基にして作る奴はそんなに多くないらしいぞ。オレは自分のを基にしたけど。」
慌ててテルは説明し始めた。ユージからも説明が入る。
「そっか、これからどうすんの?」
「今日はナナシのダンジョンに行こうと思う。」
「名無しのダンジョン?」
「名無しでなく、ナナシな。ここから南へ行ったところにすぐあるダンジョンだ。フィールドより敵が多いからパーティ戦にはもってこいの所だぞ。」
なら早速、と行こうとするがユージに止められる。
「待て待て、ホント無計画だなお前は。オレは戦士、テルは弓使い、で、ジンクは魔術師だろ。回復手段持ってんのか?」
言われて思い出す。俺は錬金術師なのにポーションを持っていない。
「その様子だと、持っていないようだな。治癒術師募集しようぜ。」
俺が落ち込んだ顔をしていると、ユージは『ナナシのダンジョン 治癒術師募集中!』とウィンドウを出した。
「そんな落ち込むなよ、ジンク。僕も回復手段なんて思いつかなかったしさ。」
テルが慰めてくれる。
「いや、違うんだテル。俺は錬金術師なのにポーションを1個も持っていなかったんだ。それに気づいてショックを受けたんだよ。」
「ポーションってあの不味いヤツだろ。僕はあれ飲みながら戦闘はしたくないなぁ。あと、ヴィルって呼んでね。」
あれ?
「錬金で作るポーション(改)ってやつはそんなに不味くないぞ。抹茶オレみたいな味だったし。」
「そうなの!?」
テルは驚きの声を上げた。
「ん、どした?」
ウィンドウの設定をいじっていたユージが会話に加わってくる。
「ジンクが不味くないポーション作れるんだってさ!」
「マジか!?オレにも作ってくれよ。」
テルが興奮した様子でユージに話しかける。
ユージも騒ぎ出した。ちょっと待って欲しい。
「いやいや、まだ俺の錬金レベルじゃ作れるか分からないよ。素材も足りないし。」
「素材って何なの?」
「えーと、いやし草と水とハチミツかな。」
「ハチミツ・・・か。1個100Gする奴だよな。一回の回復にそれはキツイな。」
「そうだね。」
ユージとテルが諦めモードになる・・・が、手段はあったはずだ。
「ハチミツは北の森のモンスターがドロップするらしいんだよ。
だからそこで集めれば費用はそんなに掛かんないよ。」
「そっか。じゃぁ次はそこ行こっか。」
「賛成ー」
ユージとテルの顔が明るくなる。
まだダンジョンに行っていないのに次の予定が入ってしまった。
『リコさんが入室しました。』
どうやら治癒術師が来てくれたみたいだ。
ようやく定番となるパーティメンバーが揃いました。
長かった・・・
2017/10/28 改行等修正しました。