親子事情
萎田笑男が家に帰ると、萎田せらが血相を変えて、座っていた。
萎田せら「おい・・・。」
萎田笑男「あ?なんだ?お前から話しかけてくるなんて珍しいな。」
萎田せら「お金が必要って言われた・・・。しかも、弁護士がついてるって・・・。」
萎田笑男「いくらだ?」
萎田せら「300万。」
萎田笑男「はぁあああああああああああ!?!?」
その額を聞いた途端、萎田笑男までもが血相を変えた。
萎田笑男「どういうことだぁ!?」
萎田せら「知らねえよ!いきなりこんな紙見せてきやがって!
俺を裁判にかけるってよ!ざけんじゃねえよ!あのアマ!」
萎田せらが手に持っているのは請求書だった。そこには300万と書かれている。
萎田笑男「その金誰が払うか知ってるか?・・・僕だよぉおおおおおおお!」
萎田せら「あの家なら!あの家なら払ってくれるだろ?!
財産があるらしいじゃんか!しかも、その上不動産の私有地があるんだろ?
いい機会じゃねえか!」
萎田笑男「馬鹿野郎!もう女と話すんじゃねえ!」
萎田せら「・・・ちっ。」
萎田笑男「はいだろぉおおおお!?」
萎田せらを殴ると、家を出て行った。
萎田笑男は狐塚恋のところに駆けつけた。
狐塚恋「あぁ、笑男か。」
萎田笑男「なあ、兄さん・・・急遽、金が必要になってさ・・・。助けてくれよ。」
狐塚恋「どうした?何があったんだ?」
萎田笑男「俺の息子がさ、女を妊娠させやがって・・・それで・・・。」
狐塚恋「お前の教育がいけないんだろ?
大体な、小学生が女を孕ませるって、お前の妻は何やってたんだよ。」
萎田笑男「俺の妻は他の男に行ってしまってさ、兄さんしか頼りにならないんだ!
頼む!!」
萎田笑男は額を地面につけ、土下座した。
狐塚恋「顔をあげろ。」
萎田笑男「兄さん?」
狐塚恋「俺に頭下げるなんていい度胸だなぁ!?
アハハハハハハハ!!
お前はだから一番下なんだよぉ!」
萎田笑男は頭を踏まれ、顔を地面にこすりつけられていた。
その侮辱さに自分の息子である萎田せらに対する怒りが込みあがった。
それを偶然見た、狐塚詩彩は狐塚恋の腕を引いた。
狐塚詩彩「アナタ!やめてっ!笑男さんは何も悪いことしてないじゃない!」
狐塚恋「笑男、もう僕の前に来るな。」
狐塚恋はそう言い残すと、玄関の扉を閉めた。
萎田笑男「ちっ。」
ボロボロになった萎田笑男は萎田圭のところに向かった。
萎田ナツが出迎えてくれる。
萎田ナツ「どうしたの?笑男さん。」
萎田笑男「圭兄さんを呼んでほしい。」
萎田ナツ「お金を借りに来たのかしら?」
萎田笑男「・・・圭兄さんを。」
萎田ナツ「無理だわ。私の家は狐塚家と雲弧家とは違って貧乏だもの。
今、子どもを養っているだけでも大変だわ。
それを笑男さんは盗もうと言うのかしら?
残念だけど、それは無理だわ。」
萎田笑男「・・・。」
萎田ナツ「その様子じゃ、狐塚家か雲弧家に断られたのかしら。
残念だけど、他を渡って欲しいわ。ごめんなさいね。」
萎田ナツは扉を閉めた。
最後に行く場所は雲弧颯のところしかなかった。
萎田笑男は雲弧颯が遺産のことをケチっていたのを覚えている。
足取りが重くなる。
きっと馬鹿にされるのは分かっていたからだ。
雲弧颯の家に行くと、使用人のキムが出迎えた。
キム・グームー「どうしたでアルますか?」
いつも出迎えてくれるのは戌亥雪野かゆるこだ。
萎田笑男は疑問に思う。
萎田笑男「雪野さんとゆるこさんがいないなんて珍しいじゃないか。」
キム・グームー「ああ、雪野さん、ゆるこさんは、理音ちゃんが襲われてから、使用人を辞めたらしいアルますよ。」
萎田笑男「そうか・・・。そういえば、颯姉さんを出してくれよ。」
キム・グームー「何の御用でアルますか?」
萎田笑男「急遽お金が必要になってな・・・。颯姉さんならなんとかしてくれるだろうと思ってな。」
キム・グームー「雲弧颯様はケチな人だから無理アルよ。
会議に出席していない笑男様の遺産をなしにする言うてたアルね・・・。
だから、お金のことは諦めたほうがいいアルます。
300万なんて、10年かけたら払えるアルよ!落ち込むだけ無駄アル!」
萎田笑男「ありがとう。キムさん。」
数日後、萎田笑男は弁護士の羽田を訪ねた。
羽田「お久しぶりですねぇ、萎田笑男さん。」
萎田笑男「ああ。僕が急遽お金が必要になってね。
それなのに兄さんや姉さんは助けてくれなくて・・・。」
羽田「それは酷いですねぇ。
私が助けてあげましょう。」
萎田笑男「本当か!」
羽田「努力を尽くしましょう。」
萎田笑男は笑みを浮かべた。
会議には雲弧家、狐塚家、萎田三男家、萎田四男家の他に雪野親子が来ていた。
一同は唖然とする。
口を開いたのは雲弧颯だった。
雲弧颯「どういうことなの?雪野さん、使用人を辞めたんじゃなくて?」
戌亥雪野「私はウンナ様の子どもなのです。
それを主人様の葬式の後に知りました。
なので、遺産を私にも分けて欲しいかと。」
雲弧颯「使用人の身分だったくせに調子乗ってるんじゃないわよぉおおおお!」
戌亥雪野「それを知ってて、あなたが学生だった頃、私とゆるこをいじめたんですか?」
雲弧颯「それはっ・・・違う私がやったのよ!
あなたたち、使用人には関係ないわ!」
雲弧颯は少し焦っていた。
戌亥雪野「ウンナ様は私とゆるこに優しくしてくれたっ・・・。
学校に行かせ、恋愛も許してくれた・・・それなのにあなたはっ!!」
雲弧颯「あれは!あれは違うの!!
あれは私じゃないわっ!!
あれは違う人だわっ!」
雲弧颯は気が動転していた。
雲弧鰤太郎は雲弧颯の肩を支えていた。
雲弧鰤太郎「雪野さん、そんなに責めても遺産は渡せない。
ウンナお母さんは俺たちに遺産を分けると遺書には書かれてあった。
それに血が繋がっているだけで戸籍には入ってないだろう?」
戌亥雪野「そうです・・・けれども・・・そんなのっ・・・!」
狐塚恋「颯姉さんは芽論兄さん以外嫌いだったんだよ。
颯姉さんの悪事は元々酷かった。特に中学、高校の頃はね。
芽論兄さんもウンナ母さんが死んでからおかしくなったし、ウンナ母さんがいなかったらこんなこと・・・。」
萎田ナツ「前に颯さん、言ってたわ。
笑男さん以外に遺産を受け渡すって。
恋さん?それ以上、颯さんを責めてはいけないわ。
だって、あの颯さんが遺産を分けてくれるのよ?
文句ないでしょう?」
萎田笑男「僕はどうするんだよぉおおおお!?!?
お前らだけずるいぞ!なぁ?!」
狐塚詩彩「そうよ・・・平等に分けるべきよ・・・。
姉弟なのになんで協力しないのよ!?」
萎田圭「お前らいい加減にしろ!
颯姉さんが遺産を分けてくれるだけ有難いって思え!」
狐塚詩彩「私の舞知を利用しようとしたのよぉ!?
そんなの許せないわっ!アナタ!どうかしてるのよ!」
雲弧颯「恋の子どもは男子校に通ってるって聞いてねぇ。
私が可哀想な恋の子どもに彼女を・・・。」
狐塚詩彩「酷いわっ!遺産なんて貰わなくて結構!」
狐塚恋「颯姉さんは・・・酷い人だよ・・・。」
雲弧颯「あなたたちには遺産は渡さないわ!
勝手に地を這いつくばっとけばいいわ!」
雲弧颯はその場を離れた。
それを追いかけるようにして、雲弧鰤太郎もその場から離れた。
約30年前、萎田颯の悪事は酷かった。
使用人をこき使い、弟たちをいじめていた。
萎田颯「ギャハハハハハ!
ちゃんとお茶入れなよ。
まっずー。どこでお茶の淹れ方を学んだのかなぁ?」
戌亥雪野「すみません、颯様っ・・・。」
萎田颯「狼にもなれない犬は黙っててくれるかなぁ?」
萎田颯は手に持っていた紅茶を戌亥雪野にかける。
戌亥雪野は何も言わず、部屋を出て行った。
それを見たウンナは戌亥雪野を慰めていた。
萎田颯「あんたの担任は字を教えるのが下手なんだねぇ・・・お気の毒。
私の担任の先生は勉強を教えるのが上手いのよ?
こんなノート見せても無駄。
そうだなぁ・・・」
と言い始めると、颯は恋のノートに絵を描き始めた。
男性器の絵を描いて、あざ笑う。
萎田颯「あんた、男にモテるらしいじゃない?
だから、男だって思わせるために絵を描いたの。
これ見せたら、きっと男って認めてくれるんじゃなぁ~い?
ギャハハハハハ!!!」
恋は惨めなノートを見て、大泣きした。
恋の部屋を立ち去ってから、後に気づいたのはウンナだった。
ウンナは泣いてる恋を慰めていた。
萎田颯が悪事を働かせ始めたのは中学二年生の夏だった。
萎田颯は雪野やゆるこが自分の姉だったことはその前からウンナに聞かされていた。
それは高校生になってからもずっと悪事が続いていた。
いや、それよりかは酷くなっていた。
それに中学一年生とは違い、成績が著しく上がっていたのだ。
それにはウンナも疑問に思っていた。
ウンナ「颯。」
萎田颯「何?お母さん。
私また悪いことしたのかな?」
ウンナは気づいていた。
それは萎田颯とは違う別の人格だということを。
ウンナ「颯、健康診断をしてくれるお医者さんが見つかって。」
有志大河「初めまして。颯様。」
萎田颯「お母さん、でも・・・私、学校ではちゃんと健康診断受けて、異常は何もなかったよ?」
有志大河「颯様には精密検査をしていただきたく思います。
そうですね、まずは内視鏡検査からレントゲンまでしたいと思っています。」
萎田颯「・・・。そう・・・ババア、嘘をつくなんてなかなかやるわねぇ。」
萎田颯は顔色を変えた。
それは全くといって別の顔だ。
ウンナ「私の娘はそんなことする子じゃないわ。
雪野やゆるこが私の子どもだって、芽論や颯には言ったの。
颯はもちろん嫌に感じたけど、そんな人をいじめるような悪い子じゃないって分かってるわ。」
萎田颯「私はここの狼なの・・・っふふふふ・・・アハハハハハハハハハハハ!!!
偉いのは私なのよぉ!!わかるぅ?!
ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
有志大河「あなたの名前は?」
萎田颯「私の名前ぇ?か・え・で。
有志先生?でしたっけ?
お金が欲しくて、ここの専属医師になったのかしらぁ?
ババアが死ぬ前にこの屋敷を出ることねぇ・・・っふふふふ。
きっと弟たちが遺産を欲しがるわぁ・・・雪野とゆるこもねぇ・・・なぁ~んていやらしい・・・。」
ウンナ「・・・。」
それにはウンナも否定はしなかった。
ウンナの顔色を窺い、楓は発言した。
楓「きっと泥沼戦争が起こるわぁ!
あぁ~やだやだ!こっわぁ~い!
きっと仲間同士で殺し合う日が来るのよ!
笑男!あの子は殺人を犯しそうだわ!
圭はぁ・・・あの子はドジだから無し・・・と。
恋、私はアイツが大嫌いっ!死んじゃえばいいのよぉ!!アハハハハハハハ!」
ウンナ「有志先生・・・お願いします。」
有志先生「はい。」
すると、数人の看護師がやってきて、颯の腕と足を縛る。
楓「何をするのよぉ!?!?
お母さん!?ひどぉ~い!アハハハハハハハ!
実の娘なのよぉ~?手と足を縛るなんて、親がすることじゃないわねぇ。」
ウンナ「あなたは私の娘じゃないわ・・・悪魔よっ!
精々、檻の中で大人しくしていることね!」
楓「はぁ~い。」
萎田颯は数年もの間、閉鎖病棟に閉じ込められていた。
その間、何も暴れることはなかったという。
萎田颯は解離性同一障害あるいは多重人格と医師から判断を受けた。
医師は小学生から中学一年生の頃にかけて酷いいじめが行われていたのではないかという推測をした。
萎田颯はいじめのことについては何も話さなかったという。
原因は謎のままだ。




