新たな家族
今年の親族会議は一段と賑わいを増していた。
保育園の園長をしている雲弧比呂利が実家に戻り、山の離れの寮で暮らしていた戌亥優音、戌亥月音も実家に戻ることになった。
極夜と専属医師の有志は契約が更新され、芽論の元で働いていた。
しかし、親族会議では部外者である羽田が加わっていることによって荒れていた。
雲弧颯「貴方は親族会議に関係ないんじゃなくて?」
羽田「私も同行させていただきたいものですねぇ・・・。
芽論さんの親友であり、笑男さんの弁護人である私がなぜ呼ばれていないんですかねぇ?」
雲弧颯「おかしいわっ!貴方、今すぐ出て行ったらどうなのぉ?」
萎田圭「ゴミィ!てめえは入ってくんじゃねえよ!」
羽田「いいじゃないですかぁ~。
もしかして、私を歓迎してないんですかぁ~?
少なくとも笑男さんは私のことを歓迎していますよ。」
萎田笑男「まあまあ、落ち着いてよ。兄さん、姉さん。
責めるなら僕にすればいいじゃないか。」
萎田芽論「私の客人なんだ。
一緒に祝おうではないか!ハハハハッ!!」
羽田「ということですし、一杯どうですか?」
狐塚舞知はテーブルを叩いて、反論した。
狐塚舞知「こんなのおかしい!
なんで、家族じゃない貴方が一緒に食事してるんだ!
僕はこんなの許せない!」
雲弧比呂利「舞知くん。落ち着いて。
僕たちはおじさんに招かれたんだから、言うこと聞かなきゃダメだよ。
お母さんもおじさんも嫌がってるけど、ちゃんと一緒に食事を食べているわけだし、せっかく遠くから来てくれたんだから、ちゃんと祝ってあげるべきだよ。」
狐塚舞知「はあ?!
比呂利兄ちゃんはそうやって周りに合わせるのかよっ!!」
戌亥月音「あたいも反対だぜ!
あんな奴と飯食えるかよ!舞知の言うとおりだ!」
戌亥雪野「こらっ!月音!
少しぐらい我慢しなさい!」
戌亥月音「あたいや舞知の他にあいつと一緒に食べたくない奴は手上げろ!」
狐塚恋次、萎田人らが手を挙げた。
食事の場が凍りつくように静かになった。
萎田芽論が隠れて使用人のキム、ガスタに指示をする。
キム・グームー「戌亥月音様、萎田人様、狐塚舞知様、狐塚恋次様。部屋に案内するアル。」
戌亥月音「行くぞ。お前ら。」
月音、人、舞知、恋次はキムに別の部屋に案内される。
部屋に残った親族たちと羽田は食事を黙々と続けていた。
萎田せら「なんだよ。あいつら。
赤の他人が部屋に入ってきただけで、ギャーギャー騒いで。
うるさい奴らだな。」
戌亥理音「せらくん、仕方ないよ。」
雲弧颯「芽論兄さん、雪野さんの子どもに優しすぎるわ。」
萎田芽論「月音が困ってたからな。」
羽田「このローストビーフ美味いですねぇ。
どこの牛を使っているんですか?」
角南ゆるこ「これは三重の松坂牛を取り寄せたものでございます。」
静かな食事は羽田が食べ終わるまで続いた。
夜には、親族の話し合いが始まった。
その話し合いにも羽田が加わることによってより一層荒れていた。
萎田ナツ「笑男さん?よし子さんに逃げられたんですってねぇ。」
萎田笑男「あいつが他に男を作ったんだ。仕方ないだろう?
馬鹿な女は逃がしてやらないと。」
雲弧颯「随分、余裕なのねぇ?」
萎田笑男「遺産を芽論兄さんの物にはさせないよ。
だって、僕には弁護士がついてるからねぇ。
分割してもらわないと困るんだよ。」
羽田「芽論さん、独り占めはズルいんですよ。
それにこの遺産の元を辿れば萎田の物ではないですよねぇ~?」
萎田芽論「うるさい!羽田!
お前は俺の親友だっただろ!?
なぜ俺に反抗する?俺はお前のずっと前からの友達だぞ?」
羽田「分かっています。
でも、遺産は皆さんのもの、法律によって、非嫡出子でも戸籍に入っていれば、貰えるようになるのですから。」
狐塚恋「確かに羽田さんの言うことも一理あるな。」
狐塚詩彩「そうよ・・・みんなで分ければ文句ないわっ!」
雲弧颯「何を言っているの!?
遺産は私と芽論兄さんのものよ!!
萎田の血のつながっていないアンタたちは黙ってて!」
萎田芽論「お前ら、全員出て行け!!
遺産は全部俺のものなんだよ!!!
先祖代々が稼ぎに稼いだお金なんだ。
お前らに邪魔されるか!!」
極夜「出て行ってくださいますようお願いします。」
極夜はポケットに隠していた拳銃を取り出し、威嚇するように芽論以外に向ける。
親族たちは文句を言いながらも会議室を出て行った。
今年の親族会議もなかなか決まらなかった。
二十年前のこと、萎田ウンナとフウ・ロザリーゼは言い争っていた。
フウ「私の遺産を返してくれないかしら?」
ウンナ「遺産とは何のことかしら?」
フウ「貴方の夫である萎田咲太郎さんに渡した全遺産の金20tを返して欲しいのぉ~。
もちろん、あるわよねぇ~?ないとは言わせないわぁ~。」
ウンナ「それってあげたものじゃなかったの?
貰ったんだから、返す必要ないでしょ?」
フウ「萎田グループが倒産しそうになっていたのを私が助けたのよ?
それに萎田家の元老たちが咲太郎さんと貴方と結婚するように仕向けたのよ。
貴方だって本当に愛していた人がいたんでしょう?
・・・ああ、便器の開発に失敗して死んじゃったのかぁ~。」
ウンナ「私の愛した人を馬鹿にしないでよっ!!」
フウ「ああ~、そのストレスで毎晩、他の男を抱いているのぉ~?
毎日がシークレット?ギャハハハハハハハハ!
笑わせてくれるわねぇ~。」
ウンナ「快感を求めてるもん!!
みぃはアンタみたいにゲスくないもん!!
みぃは不倫大好きで、みぃは避妊具付けてなくて、みぃは妊娠しても性行為してたけど、でも、みぃは病気にはかからへんかったもん!!」
フウ「・・・アンタ、馬鹿ぁ?
女の人の性病ってねぇ、男より症状出ないのよぉ~?
いずれアンタも死ぬわ。さっさと金の在り処を教えなさいよ。」
ウンナ「絶対、金は返さへん!
アンタのものであっても、返さへんもん!!」
ウンナは返さないの一点張りだった。
その後も言い争いが続き、十年後にはウンナは性病にかかり、命を落とした。
それをいいことに金の在り処についての謎を解き、フウは金の在り処に近づこうとした。
フウ「ここが・・・やっと、私のお金が戻ってき・・・」
どこからか銃声が鳴り、気づいた頃にはフウの胸を貫いていた。
フウ「うっ・・・苦しい・・・。」
フウは金の前で倒れ、何者かによって、引きづられて、死体は処理された。
殺人については未解決事件で終わり、探偵のぞえは事件を追っていた。
ぞえ「山荘未解決事件について教えてくれませんか?」
警察「個人情報になりますので、教えられませんねぇ。
それに場所も教えられませんので、すみませんねぇ。」
未解決事件については世間に公表されず、新聞の小さい記事の一面だけで終わった。
新たな情報はまったく出ず、ぞえの捜査は平行のままだった。




