第94話 マディを追って酒場まで
「はぁ?辞めただぁ?」
俺とクラリは以前アプリコットとも来た事のある酒場にやってきていた、ここで働いていた猫耳の店員…俺を牢獄で助けてくれたマディに会いに来たのだが…
「えぇ、一週間日ほど前に…」
と、居酒屋の店長と名乗ったお兄さんが言う
一週間と言えば、俺が牢獄から出たあたりか…タイミングから見て俺に会わないためか? 態々(わざわざ)姿を隠す意味が分からんが、何か理由があるのだろうか…
「あの、どこに行くとかは…」
「いやぁ、アイツ書置きだけ残していなくなっちゃったんで…給料も渡してないのに、あっ もしかして知り合いなんですか?だったら渡して欲しいんですが」
そういうと懐からお金の入っているであろう袋を取り出す
「ごくり…」
「ごくり…じゃないですよ! 何受け取ろうとしてるんですか、犯罪ですよ!」
「ばっ、まだ受け取って無いだろ!人聞きの悪いこと言うんじゃねーよ!」
いや、ちょっと心は動いたけど、金を稼がなくてはならんのは事実だし…
こちらを見ていたお兄さんも事情を察したのか、訝しげな顔をして懐へ袋をしまう
「いや、違いますよ あぁ、そんな目で見ないで!」
店長を名乗るお兄さんは、じゃ私はこれで、と言うとそそくさと店の中に入ってしまった
それにしても、マディがいないってことは万策尽きた感じだ…もうこれは大人しく余生を過ごせって事なのか?
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ どうすればいいんだぁあああ」
「うわっ、凶夜さん…ついに可笑しくなって…いたっ、な、なんで殴るんですかぁ…」
「うるせぇ、人が真剣に悩んでる時に、くそっ 何か、何か無いのか…」
アイツは何か言っていなかったか? なんでもいいヒントになるような事でも
さっきからクラリが俺を非難するような目で見ているが今はそんなことは気にならない、ホントまったく…おい、いい加減にしろ殴るぞ
「ここでこうしていても仕方が無いですし、ミールさんの所でも行ってみましょうよ」
確かに、クラリの言うことも一理ある
そうだな、何が解決する訳でも無いしなぁ、ミールの家か…そこで事態が好転するとも思えないが
「まぁいいけどよ、ミールの家って俺知らないんだけど…」
「大丈夫です、場所なら私が聞いています! 一応ミールさんが家に帰る時にメモも用意してくれていたので、迷うこともないと思いますよ」
いつの間に、こいつ等…いつも小競り合いしているくせに意外に仲が良かったりするのだろうか
「よし、じゃあ行ってみるか、案内は頼むぞ」
「まかせてくださいっ」
こうして、休暇中のミールの家へ行くことになったが、まさかこれがあんなことになろうとは夢にも思わなかった、ほんと異世界って怖い




