第63話 ミールとクラリに鉄槌を
「じゃ、方針も決まった事ですし、さくっと脱獄しますか」
「しますか、じゃねーよ! しねーよ、お前について行くくらいだったら俺はここで暮らすね!」
「でも、数日でその生活も終わりますよ? だって凶夜くん死刑が確定していますし…」
「何俺を可哀想なものを見る目で見てんだよっ、全部お前のせいだろーが!」
あはは、凶夜くんは面白いですねぇ、と手をひらひらさせるレッド
だめだ、コイツ完全に遊んでやがる
何かこの状況から逃れる術は…
というか、こういう肝心な時に何でアイツ等はいないんだよ
この場に居ない、ミールとクラリを思い愚痴る
普段役に立たないんだからこういう時こそ助けにくるべきだろーがっ
「うーん、そろそろ飽きて来たので、いい加減ここらへんにしますか、アプリコットも連れてこなくてはいけませんし」
マジか、ここでゲームオーバーなのか
ゲーム…いやまてよ
たしかゲームだと牢獄のシーンで魔王の幹部みたいなのに襲われている仲間を主人公が助けに来たような…
まぁ、そのシナリオはバッドエンドだったから主人公は幹部に返り討ちにされて死んだ訳だが…みもふたもねぇ
助けにくるって所が本当なら、まだ可能性がある
主人公とコイツがドンパチやってるうちに逃げ出せば…すまん名前も知らないどっかの誰か、俺のために死んでくれっ
と凶夜が、来るかもわからない僅かな希望に縋った、その時
絶妙なタイミングでコツコツ…と牢獄の入り口から足音が響いてきた
これにはさしもの凶夜自身もちょっと出来すぎてるだろ、思ってしまう
コツコツという足音は凶夜の牢獄に近づくにつれて
タタンッと軽快なステップに切り替わり
後から遅れて、タタタタタと足音が後を追うように聞こえてきた
どうやら足音の主は2人の様だ
「ふんふふーん♪」「待つんだよっ」
足音の主は聞きなれた声で鼻歌を歌いながら凶夜の牢獄の前まで来ると
「あれー、ここじゃ無かったんでしたっけ? 誰もいないじゃないですか」
「おかしいんだよ、確かにここで合ってるんだよ? 前回は確かに……」
裁判所で拉致されたはずのクラリと、どこで合流したのかミールが平然としてそこに立っていた。




