第46話 この魔眼で決着を
「何がどーなってやがる・・・」
「貴方・・・ああああぁぁぁ、こんな事が 何故何故ですのぉっ、魔眼っそれは魔眼のぉぉぉ」
「そう・・魔眼ですっ! あぁ素晴らしき魔眼・・・ついに私はその秘めたる力を解放したんです!」
発狂とも呼べる叫びを上げるアプリを前に、ドヤ顔で語るクラリ
・・・魔眼? 何言ってんだコイツら
魔眼は産廃スキル、いや魔法だろうが
頭がどーにかなっちまったのか・・・可哀想に
しかし、アプリが何かしらの理由で攻撃が出来ない事も事実
「今、貴方は私の支配下にいる・・・ふふ一度言ってみたかったんですよ、これ魔眼魔王の物語の一説なんですよ、ちょっと聞いてます? 凶夜さんっ」
「いや、ちょっと待て、黙れ残念魔眼娘」
「酷っ、誰のおかげで助かったと思ってるんですか」
「はぁ? 何ちょーしのってるんだ、残念魔眼変態娘が てかお前は何を言って・・・」
変態が追加されてます! と抗議の目を向けるクラリ
ったく、さも自分がこの状況を作り出したかの様に言いやがって・・・いや?
’作り出した’・・・のか?
まさかそうなのか、魔眼・・・支配・・・魔法が使えなくなったアプリ・・・・・・えぇ・・・
認めたくない現実が、しかしこの圧倒的な状況が凶夜を追い立てる
「あぁあああ、愛の信徒共っ やぁああああっておしまいですわぁあああ」
ここにも認めたくないものが一人いた
アプリは自身の力が使えない事を悟ったのか、入り口付近に待機していた自警団の団員もとい教徒達に命令を飛ばす
ドロン〇ョかお前は
命令された教徒達からも「よっしゃ、俺達の力見せてやりますよっ」とか「ついに出番だな」とか色々聞こえてくる
なんか俺が戦ったアプリの付き人的な奴らと違って妙に人間くさい
じりじりと差を詰め「うおっしゃーーー」と教徒の一団が襲い掛かって来た、が
「下がってください、凶夜さんっ」
一段の前に颯爽と立ち塞がるクラリ
頼りになると思ったことは一度も無い、魔眼マニアのど変態で頭が可哀想なクラリに助けられる日が来てしまうとは・・・
「凶夜さん、何か失礼な事を考えてませんか」
くそっ妙に鋭くなって、くやしいっ
「まぁ良いです、今の私は何でも許せそうな気がしますっ、クラリオット・ノワールが崇拝する我が主に代わり命ず、貴様達は死っ・・・は、やりすぎなんで・・・ひれ伏せっ」
ずだんっだだだだんっ
と、さっきまで騒いでいた教徒の一団は地べたへと叩きつけられた
まるでひれ伏している様に見えなくはないが、明らかに腕が変な方向に曲がっているものもいる
「ぐえぇえ」「ぎゃああああぁぁぁ」
とみんな叫んでる、なにこれ怖い
これが阿鼻叫喚ってやつか・・・
しかも、今クラリのやつ 死ねって言おうとしてたよな、ノリで人を殺すとかヤバイやつだな サイコパスか
思わず「サイコクラリ」 とボソッと呟いてしまう
「え? 何ですか? 最高ですか? いやぁ照れるなぁ 凶夜さんも魔眼の素晴らしさに気がついたようですね」
いやぁ、あ?一緒に習得しますか?付き合いますよ! と頭を掻いてはにかんだ笑顔を見せるクラリ
あぁ、駄目だコイツ・・・今一番世界で守りたく無い笑顔に出会ってしまった気がする
「きぃいいいい、悔しいですわぁあああ、どういうことですのぉおおおお その力はまさしく魔王、不死王の力ですわ なんでそんな小娘が使えるンですのぉおおおお」
ムッキャーと、声のした方をみるとアプリの姿が見えない、あ 他の教徒達と一緒に地面に這いつくばっていたからか
その姿を見て、若干ホッとする
「能力も使えない、身動きも取れない・・・屈辱ですわぁああ 絶対に許さないですわっ絶対にですわっ」
こいつは殺しておいた方がいい気がするなぁ、なんとなく人類のために
まぁ、もっとも俺に人を殺す度胸なんて微塵も無いが・・・
「なぁ、クラリ こいつは、どうすーーー」
!?
「おい、どうしたっ」
後ろを振り向くとクラリが倒れていた、アプリにクラリが打ち抜かれる場面がフラッシュバックし鼓動が早くなる
「クラリしっかりしろっ・・・」
すぐさま駆け寄り声を掛けるが
「うぅ・・・魔力が、魔力が足りません・・・あぁ、眼がかすむぅ」
と、当の本人は目をぐるぐるさせて、凶夜の服の袖を掴んでくる
どうやら単なる魔力切れようだ
「・・・驚かせやがって、とりあえずお前が倒れてもこいつらは身動き出来ないみたいだから、牢にでも入れておけばいいか」
「イタッ なんで蹴るんですかっ」
「うるせー、とりあえず運んでやるからおぶされ」
「また胸を・・・」
「置いていくぞ」
「あぁっ嘘です嘘!」
「二人とも早く行くんだよ、この教徒が警備団は塔の2階に軟禁してるっていうからちょっと行って助けてくるんだよ」
どうやら、ミールは教徒達から情報を聞き出していたらしい、そういや「ひぃ」「やめたげてよぉ」とか声がしていたからなぁ 拷問かな?
ともかく、こうして騒動は収まりを見せた
崩れかけた塔の補修とか、念のため能力を封じる結界をアプリの入る牢に施したりとか、助け出した団員が牢でホモっていたとか
まぁ雑務もあったが・・・
魔王の媒体の棺桶とドラゴンの骨は団員に頼んで念入りに破壊して貰っておいたから当分大丈夫だろう
棺桶の中には骨が1本入っていただけだった、何の骨かは分からないが一応預かる事にした、そこらに捨てたりすると魔王復活フラグな気がするし
それにしてもアプリの言っていた「その力はまさしく魔王、不死王の力ですわ」ってのが非常に気になる
クラリの使った力はめちゃめちゃ、それこそ俺のスロットと同じくらいと言ってもいい程に強力な力だった
産廃の魔眼がああも化けるとはなぁ、トリガーは何だったんだろう、思い当たるのはいくつかあるが・・・何気に人類初なんじゃないか、魔眼を本当の意味で使えるようになった奴って
それよりもクラリがこれからドヤってきたらどうしよう
・・・うん、殴ろう やる事は変わらない
男女平等パンチをするだけだ、決して変態が強くなったのがムカつくわけではないと自分に言い聞かせる
それにしても不死王ねぇ・・・恐らく能力の事からもアプリの言う不死王とクラリの言う魔眼王というのは同一人物なのでは?と思う
まぁ不死王は魔眼以外にも色々使えて、魔眼王は魔眼だけで2人とも別々の存在って事も十分考えられるけど
クラリが能力を使ったと思われるのは2回、それで魔力が切れて身動きが取れなくなってしまった
対象が多かったからか? 少なければもう少し回数が使えたりするのだろうか、相手の強さとかも関係するのか?
スロットもそうだが分からない事が多すぎる
帰り道、何気なくクラリに話しかける
「なぁ、クラリ」
「ん?なんですか?」
俺におぶわれているものの
魔眼を使ったからだろうかクラリに若干疲れが見える
そういやコイツをおぶるのは2回目だな
・・・あいかわらず無い胸だが
「魔眼を使う時に、長い詠唱してたじゃないか? あれってそのコマンドに書いてあったのか?」
あの時クラリが唱えた詠唱、あれを聞いたアプリは魔王のものだと断定していた
なら、あれはクラリが作った詠唱じゃなくて、元々存在する呪文って事になる
「あっ、あれはですね」
クラリがおぶわれながら胸を張ろうとする
胸が強調されて俺の背中に当たる
あえて黙っておこう
「コマンドには効果しか書いてませんでしたね、その効果から詠唱はすぐにわかりましたけど、強いて言うならマガニストの常識です!」
「はぁ?」
ちっちっちと、クラリは指を振り
ダメですね、凶夜さんは そんなんじゃ立派な魔がにすおにはなれませんよと、続ける
「マガニストの間では魔眼を操る魔王の物語は数多く語られているんです、その中には詠唱とその効果も多く記されているのです! 特に相手の魔法とスキルを完全に封じる詠唱はカッコよくてマガニストの間ではあれを空で唱えられないとにわかと言われています」
はぁ、それはなんとも
「マガニストやべぇな・・・」
クラリみたいなのがまだ何人もいるのかと思うと頭が痛くなってくる・・・
「はぁ、もう疲れた・・・とりあえず、泥のように眠りたい・・・」




