第40話 魔法のルールとその力
「あら? 不思議そうですわねぇ」
「そりゃ、そうだ お前の言っているのは説明になってねぇ」
んー?とアプリは笑顔のまま首を傾げる
これだけだと美しい見た目なのだが、今までの奇行を考えると不気味にしか思えない
「あぁっ、キョウヤ様を魔王候補と断定した理由ですかぁ? スキルですわぁ」
「スキル・・・?」
「魔王候補は何かしらユニークスキルを持っているんですの、まぁそれがどんなモノかは自身で探すしか無いんですけどぉ・・・そして、そのスキルは同じ魔王候補には効かないんですのよ、ちなみにぃ 私のスキルは'これ'ですわぁ」
そう言うと、アプリは自身の眼を指差す
だからスロットマシンもアプリには発動しなかったのか
だけど、あれだな、投げて当てる事は出来そうだったんだが・・・まぁいい
あとは自身で探すしか無い・・・か
確かに、スキルと言う割には俺の証明書のスキル欄には言語適応しか記載が無かったしな
俺がスロットマシンを見つけられたのは偶然って事か、いやぁ運が良かった
アプリの場合は・・・あの動作・・・
「眼・・・視覚か?」
眼というとクラリが思い出されて嫌だなぁ・・・つーかあいつら何してんだろう、まじ使えねぇわ
「そう、眼ですわぁ 私は見るだけで相手の魔力量やスキルが分かるんですのよぉ、この力は昔ある方から頂いたんですけれどぉ・・・最初は魔眼の様にまったく使えない能力だと思っていたんですわぁ・・・でも意外にぃ魔王候補を見つけるのに役立つんですのぉ、だって魔法を使っているのに魔力が見えなかったり、スキルを使っているのにそのスキルが見えなかったら それが魔王候補って事ですしぃ」
じゃあ俺はそれで視られたって事か
一体何処で・・・ってあれか、路地裏しかねえわ
あそこでスロットを使ったときにバレたって事か、こりゃ迂闊に魔法やスキルを使うのも考え物だな
あともう一つ、ある方・・・か
俺の証明書にも誰のかわからないコメントがあったからな、何処にいるかはわからねーけど、俺がこの世界に来た重要な手がかりの一つである事には変わりない
「ところでぇ、キョウヤ様は魔王様についてどれくらいご存知なんですのぉ?」
魔王か---
ゲームでは馴染みの存在、最もこの世界では本当に存在している様だが・・・
悪魔や魔物達の王、その力は得てして強大
でもまぁ、ゲーマーならこう言うだろうな
「敵なら厄介だが、味方になれば頼もしい存在だ」と
まぁ、味方になるってのは割と最近の発想だけど
「あぁ・・・その発想ぉ、流石ですわぁあああ、そうそうなんですの! この国の人間は馬鹿ばかり、魔王様と聞けば討伐討伐討伐ぅ、無能なお猿さんばかり・・・違いますわっ 魔王様は味方につけてこそっ真価を発揮するんですわぁあああ」
なるほどな、だから魔王を作ろうと
だがー
「それなら作るんじゃなくて、仲間に引き入れる方がいいんじゃないのか?」
「出来るなら、そうしていますけれど、教団が把握している現存する魔王様は二人しかおりませんのよぉ、’不死王’と’時間王’どちらも何処にいるかまでは分かりませんしぃ・・・魔王様は気まぐれでぇ、世界を支配しようとしたりもするんですけど、そういう場合は大体’勇者’が滅してしまいますしぃ」
勇者、やっぱいるのか
そりゃ魔王がいたら勇者もいるか
「だから私は、魔王様を作ることにしたんですの、自分が魔王様になるよりも遥かに現実的ですし、あぁドラゴニュート様・・・甘美な響きですわぁああああ」
と身もだえする
魔王になる、か たしかに’魔王候補’って事は魔王になれるって事だよな
アプリの言う事を信じるなら、魔王になるのは現実的じゃないって事か、それこそドラゴンの死骸を集めて候補一人の命を犠牲にするよりも
「ちょっと待て、魔王を作ってその後どうする」
「?」
首を傾げるアプリ
何だよ、その何も考えてませんでしたって顔は
え、まじで? まじで何も考えてなかったの?
「世界征服?」
「それ勇者くるやつだろ」
「あ」
「あ、じゃねーよ!」
こいつ本当に大丈夫か? 若干クラリ臭がするぞ
「というのは、冗談ですぅ 教団を大きくするために信仰の対象にするんですわぁ、まぁ邪魔な人は消しちゃうかもしれませんけれど、ちょこちょこっとやる分には勇者もきませんわぁ 彼もそんなに暇じゃないんですのよ?」
マジかよ、この世界の勇者って結構薄情なんだな・・・考えてみれば一人で悪人を倒して回るんだ、小さい悪事にまでかまっていられないんだろうけど・・・
にしてもイメージがなぁ
「まぁ、大体わかったわ、結論・・・俺は、正義とか悪とかまったく興味ねぇけどよ、俺自身が平和に暮らすためには、やっぱりお前を倒さないといけないらしいな、'せざるを得ない'ってやつだ」
「あぁぁぁ、そう、そう、それですわぁ、私やらなくてはならない事は早めにやる主義なんですのぉ、ただぁちょっとだけ意地悪が好きで、遊んでたら時々失敗しちゃうんですけど・・・キョウヤ様は私のためにちゃぁーんと、バラバラになってくださいましぃ、バラバラばらばらばらにぃいいいいいいい!」
アプリの両手の指先が凶夜 目掛けて突き出され
そこに光が収束していく
「っ、容赦無しかよ! このサディストがぁぁぁああ」




