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第34話 能力とその秘密

「愛に、愛ぉぉっぉおぉお」


絶叫し、ガリガリと髪を掻き毟るアプリ


おいおい、何だってんだよ? マジでやばい

どう見ても狂人のそれだ


だが、これが普通と言わんばかりに、男はそんなアプリを見ても微動だにしない


「キョウヤ様ぁ、ふふふ、ははははは、さぁ! 今こそ貴方の命を!」


「おい、ちょっと待てよ、なんなんだよそれは」


「は?」


信じられないモノを見るかの様にアプリの動きが止まる

さも、それを知っていて当然かの様に


「キョウヤ様ぁ・・・ォ戯れを、これは魔王ですわぁ そうっ、教団の教団による、教団のための・・・私の魔王様ぁあああ」


アプリは髪を振り乱し、そこに何かがあるかの様に天井を見据える


「そういぇば、キョウヤ様は教団を探っていらしたんでしたねぇ」


ふと、思い出したかの様に呟く、先ほどの牢獄でのやり取りなんて既に昔の事の様に思える


「あぁ、教団の人間が、村に頻繁に出入りしていたとか、何かを運び込んでいたとか、それくらいしか分からなかったけどな」


「それでしたら、そこに転がっているのがその何かですわぁ」


大量の骨・・・


その骨の太さから少なくとも人間の物ではないのは分かるが・・・

どっかで見た事が・・・尖がった、口か?


爬虫類・・・


まさか


「そう、ドラゴンの骨ですわぁ、まぁそこに転がってるのは低級のドラゴンモドキが主ですけれどぉ」


「一体何のために、お前らはドラゴンを崇めている狂信者共じゃなかったのか!?」


アプリは何処か虚ろな目で凶夜を見ながら言葉をかみ締めるように、うんうんと頷く


「心外ですわぁ、それそれそれっ、とぉーっても心外ぃぃぃ」


ガリガリと髪の毛を掻き毟る


「それそれですわぁ、元々教団はドラゴンを信仰するものではありませんの、昔気まぐれにドラゴンを助けた教団を見て、どっかの馬鹿共が勝手に勘違いしただけの話ですのよ、まぁ・・・材料としてドラゴンは必要なんで噂を利用させて貰ったりはしてましたけどぉ」


「なっ・・・じゃあお前らは一体なんなんだよっ!」


「言ったじゃぁありませんか? 魔王を教団のための魔王様を作るのです」


魔王を・・・作る?

そんな事が可能なのか・・・


・・・!


たしか、俺のやったゲームにも魔物を合成して魔王を作ることが出来た気が・・・


大量のドラゴンの骨・・・


棺桶・・・


ドラゴン・・・


強い人間の贄・・・


「ドラゴニュート・・・か?」


「す・・・素晴らしいぃぃぃぃですわぁぁぁ」


髪を振り乱し、愉悦の笑みを浮かべ、棺桶をガンガンと叩く


「流石はキョウヤ様ぁ、これだけの情報でよ くよく よくよくそこに気がつきましたわっ」


そう、ドラゴニュート 半人半龍・・・古くは八大竜王、四海竜王伝承、西遊記の竜王の絵や像に語られる伝説の生物

完全に人と龍に化ける事ができ、ゲームでもトップクラスの魔王だった


だが・・・


「だが、ドラゴニュートを作るならこれだけじゃ足りない筈だ!」


「そうですわぁ、実に博識でいらっしゃいますね・・・」


ドラゴンの宝玉・・・確か、そんな合成アイテムが必要だったはず・・・


「あらぁ?何か不思議そうなお顔ですわねぇ? もしかして気が付いているのですかぁ?一体どこで・・・まぁいいですわぁ、ここで質問ですぅ、これはなんでしょーか?」


「・・・!?」


アプリが懐から出したのは虹色に輝く球体だった


「そう、教団に前々から取り入ろうとしていたぁ、どっかのおバカさんから献上されましたのぉ・・・キョウヤ様の情報と一緒にねぇ」


ふふふ、と珠を恍惚の表情で眺める


あれは、村の入り口でマークにドラゴンの素材と一緒に預けた魔石・・・


やられた・・・あの門番のおっさんグルだったのか、たしかに素材を態々隠すなんてよくよく考えれば可笑しな話だ、ミールの上司って言うから警戒が薄れちまってた


後悔は先に立たないってよく言ったもんだ・・・だがっ


「スロット!」



掛け声と共に凶夜の前に透明なスロットマシンが出現する



状況は把握した



教団全体の意思かは分からないが、少なくともこの村にいる教団は魔王を作って操ろうとでもしているんだろう


条件は俺の命と魔石、そして棺桶の中にある何か・・・あとはこれらを組み合わせる糊しろとしての術式か何か


これが揃ったら、魔王ドラゴニュートは作られるはずだ


なら、話は簡単だ、アプリを倒すか、魔石を奪っちまえば事足りる


凶夜はアプリを標的に見据え、無駄なくスロットのレバーを倒す


「キョウヤさまぁどうなさいましたのぉ?」


スロットが見えていないのか

アプリは微動だにせずこちらのやる事を見ている


「なんだかわかんねぇが、このチャンス、逃してたまるかよ」


絵柄が回転し、同じ柄を目掛けボタンを押していく


タンッタンッ


凍らせるっ


その思いにスロットが呼応し、氷のマークが揃っていく


「くらいやがれっ・・・」



タンッ



しかし、最後のボタンを押したにも関わらず、何も起こらず場は静寂に包まれる



「ふふふ、あーっはっはっはっはぁぁ」



ただ、そこに狂ったようなアプリの笑い声だけが響く



「なっ・・・」



どうして何も起こらないんだっ!?


「どうしたんですのぉ?愛を私からの愛を受け入れる準備がぁぁあ出来たんですの? ぁあ もしかして’ソレ’が上手く動かなかったとかぁ?」


やはりアプリにもスロットは見えている

だとしたら何が・・・



不審に思った凶夜がスロットを見ると



たしかに揃った筈の目は全て出鱈目な柄を表示していた



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