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第24話 通りすがりの…

 乗り掛かった船だ

 とことんやってやろーじゃねーか

 

 アニキの方は俺の趣味に付き合って、投げ飛ばさせてくれたわけだし

 

 先ほど投げ飛ばしたアニキの方へチラリと目を向ける

 壁に沿って置かれていた樽の上に落下したのだろうか、散乱した樽の残骸に埋もれていて、ピクリとも動かない

 

 あ、死んでないよ? ・・・死んでないよね?

 

「おめぇは何をぶつぶつぶつぶつ言ってやがるんだぁあああ、ここで死ぬんだよテメェはよぉおおお?」

 

 アニキに気を取られていたら、いつの間にか半裸のゴロツキのテンションは最高潮になっていた

 

 はぁ、なんだコイツ

 危ない薬でもやってんじゃないの?

 この世界にそんなものが存在あればだけど

 

 にしても、今にも飛びかかってきそうだなぁ

 

 不意に、最初からクライマックスだぜ!という某特撮ヒーローのセリフを思い出す

 

 ・・・変身ヒーローか

 

 うん、面白そうだな

 これから身を隠す場面も出てくるだろうし、異世界人ってのがバレたらやばいってのもファンタジーのお約束だしな

 この場にいるゴロツキと女にはバレちゃうけど、それくらいなら大丈夫だろ、きっと

 

 凶夜はうんうんと頷き

 

「よっしゃ、決めたわ」

 

 あっさりと決断した

 

「あ、ああああ? なんだよぉ! もういいから死ねよぉ!」

 

 凶夜の態度にイラついたのか、色々限界だったのか、ゴロツキは手に持ったナイフを構え、凶夜へ飛びかかってきた

 

「スロット!」

 

 ゴロツキがナイフを振り下ろすとほぼ同時に、凶夜の目の前にクリスタルの輝きを放つスロットマシンが召喚される

 

 ガキンッ

 

 ナイフとマシンがぶつかり合い鈍い音を放つ

 しかし、マシンはナイフを難なく弾きかえし、傷一つついていないのが見て取れる

 

 ・・・フォリンは村内での魔法はご法度っつってたけど、これは自衛のためだし、か弱い女性の命もかかってるからセーフだよな?

 うん、緊急避難ってやつだ

 ほら、あんな端っこで震えてるし

 早く助けてやらないと!

 誰かに言い訳でもするかの様に考えを巡らせる

 

 ナイフを弾かれたゴロツキは目を見開き驚愕しているが、そんなに魔法が珍しいんだろうか?

 

 ミールはそこまで驚いてなかったけどなー

 冒険者的には珍しく無いけど、一般人的には珍しい、とか?

 まぁ、こんな半裸で奇声を発する一般人は嫌だけど

 

 にしても、俺に向かってきてくれたおかげで、ゴロツキと女との距離が離れたな

 

 これで、女への被害を気にせずコイツをぶっとばせる

 

「ま、魔法だって!? お、お前 魔術師かぁぁ?」

 

 また、おあつらえ向きなセリフを、ここまで完璧な引き立て役だったとはゴロツキ弟侮りがたし・・・せっかくだし、ここは乗っかるしかないだろう

 

「それは、違うな・・・間違っているぞ!」

 

「な、なんだと!?」

 

 ビシッ、といつかテレビでヒーローがやっていたポーズを真似て決め台詞を言う

 

「俺は通りすがりのヒーローだ、俺に遭遇した事を後悔しろ、変身!!」

 

「お、お前は一体!?」

 

 ゴロツキは驚愕の表情で一歩後ずさる

 

 ・・・本当にコイツ仕込みとかじゃないよな?

 

 ゴロツキのモブっぷりにちょっと感動しながらも

 厨二病臭いセリフにちょっと後悔もしつつ、口上と同時にスロットマシンのボタンを押し切る

 

 瞬間、光と旋風が巻き起こり

 凶夜を包み込んだ

 

 光に包まれると同時に自身の体が変化していくのが分かる

 

 ・・・本当に変身出来るかは半信半疑だったんだけど、これはもしかしてもしかするのか!?

 

 旋風が収まり、その中心には、琥珀色のライダースーツ姿の凶夜が立っていた

 顔は同じく琥珀色でバイクのフルフェイスメットに近いデザインだ

 ただ、視界のレンズ部分は金色に輝いている

 

 そして、手には鉄パイプの様な・・・というか、まんま鉄パイプが握られていた

 

 ・・・・・・うん

 

 これテレビで見た事あるわ、密着警察24時とかそんなんで見たわ

 

 ちょっと待って、どう見ても暴走族なんですけど

 せめて、もうちょっと武器はなんかあっただろ・・・

 

 華麗な変身シーンからコレが出てきたら子供もトラウマもんだよ!

 

「うわぁぁぁぁ、 な、なんだ く、くそがぁあ、姿が変わったくらいで俺がビビるとでも思ってんのかぁ!」

 

 めっちゃ驚いてる・・・取り乱しすぎだろ

 確かに、俺も急に目の前に鉄パイプ持った族が現れたら取り乱す自信はあるけど・・・

 

 ゴロツキは口では虚勢を張っているが、足がガクガクと震えているのがわかる

 

 にしても

 

「なんだこれ、見た目はアレだけど、めっちゃ体軽いな・・・あれぇ?こんなところに悪人がいるなぁ?ちょっと試させてもらうぜ、簡単に死ぬなよ?」

 

 凶夜はニヤリと笑うと手に持った鉄パイプ(仮)を地面にガリガリと引きづりながらゴロツキへと近づいて行く

 

「ひぃっ」

 

 こうして、この世界に悪人が1人増えた

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