第20話 調査を始める前に
「おい」
「ぐぬぅ、やりますねミールさん・・・」
「ふふん、僕に頭脳戦を挑もうなんて100年早いんだよ!」
「おい」
「しかし、ここから逆転するのもまた一興というものです、見せてあげましょう私の本気というやつをっ!」
「ぬぁー、そこに置くとは・・・これじゃ数が・・・いやまだ」
「ふんがぁぁぁぁぁあああああ」
「「ああぁああーーーーー」」
「ああぁああーーーーーじゃ、ねぇぇえええ!」
俺は2人が熱心に遊んでいたオセロ(俺考案)をひっくり返す
「お前等、何さも当然の様に俺の部屋に居座ってやがんだ!」
そう、ドゥムドゥムの討伐後、教団の調査の依頼を受けたのだが、調査に日数も必要なので俺は宿を借りた
その際にクラリの案で情報収集のため各自散らばり、ある程度情報を集めたらこの宿に集まる、と言った体にしたのだが・・・
「お前等、俺が情報集めて来て戻ってくる度にオセロやってるよな?てか、オセロしかしてねーだろ!?この無駄飯食らい共がぁぁぁぁ」
まぁ、情報集めて戻ってきた初日にミールと2人きりになって、クラリをただ待つのも暇だからそこらへんの石と木でオセロを作ってみたのはたしかに俺だけど
「な、し、失敬な・・・ちゃんと情報も集めてますよ!」
と、クラリ
完全に目が泳いでいやがる
「ほう、じゃあクラリ’さん’どんな情報があるか教えては頂けませんかね?」
「微妙に他人行儀にしないでください!」
「あぁ?そもそも仲間にした覚えが無いんだが、俺的には犬が勝手に付いてきているくらいのイメージなんだが?」
「うぅ・・・酷い・・・・・・」
「完全残念娘のくせに、パーティーに入れて貰えると思うなよ」
「・・・胸」
クラリがボソッと呟く
「あ?」
「・・・胸触ったくせに!!凶夜さん、訴えてやりますよ! ええ、きっと5年は出てこれないでしょうね・・・しかも!恥辱に正気を失った私は宿屋の前で、鬼畜ヤローに犯されたって、有る事無い事言ってしまうかもしれません・・・ 」
クラリはよよよと崩れ落ちる素振りをし、チラリとこちらを見てくる
くっ・・・女の武器を使ってくるとは、只の中二病患者だと思っていたが・・・汚ねぇっ
「後半なんて、無い事しかねーじゃねーか!卑怯だぞ!胸の件はテメーが勝手に魔力尽きて、背中に押しつけてきただけだろーがっ!」
「私を痴女みたいに言わないでくださいっ」
「キョーヤ・・・もういいじゃん、パーティー入れてあげようよ」
ミールがいつものように俺を可哀想なモノを見る目で見てくる
勝敗は決してしまったと言うのか・・・
俺はこの悪魔に勝てないと言うのかっ・・・
「うっ・・・だが・・・」
こんなまっーーーたく使えない奴をパーティーへ入れる余裕は・・・
「5年・・・懲役、臭い飯・・・」
クラリはさも傷ついた様に俯いているが
俺には分かる、これはぜっっったいにニヤついている
こいつに良いようにされるのは腹立たしい、腹立たしいが・・・ぐぅ
「あーっ、わーったよ!勝手にしろ!」
クラリは俺からの言質をとると、さっと顔を上げ、そして
「ありがとうございます!」
と、いい笑顔で言った
屈辱だ・・・
「だが、オセロは禁止だ」
「「えー」」
こっちも、ささやかな抵抗くらいさせて貰うぞ
「文句言うな!もう調査初めてから3日だぞ、お前等初日以外ずっとオセロしてんじゃねーか!働け!」
2人はぶーたれながらも、しぶしぶうなずく
「よし、じゃあこの3日で分かったことを整理するぞ」
この3日、俺達(主に俺が)教団についておおっぴらにならない程度に情報を集めた
あまり派手に動くと、相手がこちらに何かしらの攻撃をしてくるかもしれないからな
「えーとね、どうやら教団の出入りは1年近く前からあったみたい、その理由は分からないけど、村長と度々会っていたって話だよ」
ミールは村に顔がある程度聞くから、民家から情報収集して貰った
「1年か、その間に目立った動きは他に無いのか?只村に来るだけってことはないだろ?」
「それが、まったく・・・村に来るのも決まって1人だけで、複数で来ることは無かったみたい、あとは・・・袋、そう何回かに一回大きな袋を持って来てたって、宿の亭主の話だったんだけどね、部屋に運ぼうとしたら触るなって凄い怒られたって言ってたよ」
「袋・・・怪しいな、クラリは何かあるか?期待はしてないけど」
ミールの話を、ふんふんと聞いていたクラリに振る、本当にまったくこれっぽっちも、期待はしてないけど
「凶夜さん・・・凶夜さんっ!?酷いですっ、私だってがんばって情報集めて来たんですからっ」
「お、おう、悪かったな、そんなに怒るなよ・・・でどうなんだ?」




