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各務原と壬申の乱

作者: 各務原逍遥

 今から千三百年前の七世紀後半、六七二年六月に起きた皇位

継承をめぐる内乱を《壬申じんしんの乱》という。

 このときに活躍した、美濃の豪族・村国男依むらくにのおよりとはどんな人物

であったのか……。

 地元に住んでいることもあり、歴史の中で六世紀末から八世

紀中頃までの、いわゆる飛鳥時代が個人的に、一番魅力ある時

代だと勝手に自負している。


 六七二年三月、天智天皇が崩御ほうぎょ。次期天皇となるのは、弟の

大海人皇子おおあまのおうじであることは皇位継承上決まっていた。

(当時は、同母の兄弟相続を原則としている)

 だが、天智天皇は息子可愛さに嫡男ちゃくなん大友皇子おおとものおうじに継がせるこ

とを弟に告げる。

 しかし、このことが発端となり、弟は兄に対し次第に嫌悪感

を抱くようになっていく。そんな中、追い打ちをかけるように、

天智天皇は大友を太政大臣だじょうだいじんにしてしまう。

 大海人皇子の忍耐もこれまでと、皇女(天智天皇の娘)と身

近な者たちを連れて、大津宮を後に吉野に向かう。

 人々はこのとき、

『翼のある虎を野に放つようなものだ』と噂したという。

 

 大海人一行は、二十四日朝に吉野を立ち、二十五日伊賀上野、

二十六日伊勢、二十七日野上行宮、不破に二十九日着という強

行軍であった。

 その間に美濃国各務郡みのこくかがみごうりの豪族・村国男依は、約三千の兵を招

集し、大海人の嫡男・高市皇子たけちのおうじが総指揮を取る中、ちゃくちゃ

くと戦さの準備を整えていった。

 そして七月二日、いよいよ大友の拠点である大津宮に向けて

戦闘が開始されたのである。

 男依等は、七日横川、九日取籠山、十三日安川、十七日栗太

と、二週間の間に四つの場所で戦さが行われたことに驚くほか

ない。

 そして、二十二日に瀬田に兵を進め、大友引き入る近江軍と

対峙することになる。このときの様子を、日本書記はこう記し

ている。


  《近江方は、瀬田橋の西に陣を構え、打ち鳴らすかね

 太鼓の音は数十里に響き、弓の列からは雨のように

   放たれた》


 大友皇子や側近の者たちは身ひとつで逃げたが、もはやそれ

まで、大友は死を覚悟する。そして山前(現在の京都府乙訓群)

で自害をした。

 後に六七三年、大海人皇子は即位し天武天皇となる。


 ここに、いくつかの謎がある。

 大友皇子は、果たして即位していたのだろうか?

 個人的な考えだが、この混乱した最中さなかに即位する余裕などな

かったのではないかと思っている。

 それと、天武天皇が亡くなったのが六八六年。このとき、六

十五歳であったとする説がある。これが事実だとした場合、逆

算してみると生まれたのが六二二年になる。

 これだと兄の天智天皇より四歳上になってしまう。

 どうも当時の作者が、五十六を六十五と間違って記してしま

ったのではないかというが、果たして真相は……。

 また、天智天皇と天武天皇とは、兄弟ではなかったという説

もあるくらいだ。


 村国男依は、壬申の乱の功績によって、むらじが与えられ、

村国連男依むらくにのむらじおよりとなる。

 その四年後の六七六年七月に死去した。

 現在は、重要有形民俗文化財に指定されている《村国座》の

横にある《村国神社》に、村国男依は祀られている。

 廻り舞台のある村国座は、小生の小学生時代のかっこうの遊

び場でもあった。この頃は、奈落ならくに入る扉にカギがかかってお

らず、そこから侵入して暗い奈落を通って舞台に上がり、友達

三、四人で舞台上で、歌舞伎の真似事をした後、また花道を通

って奈落へと下りて行き、廻り舞台を皆なで廻して遊んだりし

ていた。

 また、親に連れられて歌舞伎を何度も観に行っていたが、観

ても分からず退屈であったのを覚えている。

 

 今は、毎年のように村国座では、こども歌舞伎が演じられた

り、コンサートなども開催され、市井しせいの人々の憩いの場でもあ

ると同時に、歴史的建造物から若者たちが、いにしえを学べる環境を

育て守ることの大切さを、未来に向かって、地域活動の必要性

に変えていくのであろう……そこには、不易流行も考慮してお

かなければならない。



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