2.まずは会社を乗っ取りましょう
小学六年生、お祖父様の屋敷で住む夏休みに今まで知らなかった衝撃の事実を聞きました。
父は、弟が生まれてから一切会社に行っていないのです。
つまり、一切出勤しないで社長として仕事もしないのに給料を会社からもらっているという、詐欺師。
前世の私は言っている、「私は遅刻なしで真面目に通勤して仕事して働いてお給料をもらっていたのに、あんたは引き籠りのニート状態で高給をもらっているんかい!」と。
現代社会に生きるすべての働いている大人たちを馬鹿にしている態度ですね。
私も将来、責任を放棄して、そういう社会を馬鹿にした態度で生きてみたいと思わないけれど。少し羨ましく思う気持ちがあるのは否定しない。
まず、ヒロインこと佐藤柚月さんを助けるためには財力がいります。
これは、お祖父様に教えていただいて小さい頃から株をやっていたので何の問題もありません。
いや、だって聞いて下さいよ。
私のお小遣いは月五千円と一般的なものなのに、弟は月五十万円のお小遣いと差がありすぎなのです。
これは悪意の何物でもない!
しかし、すごすぎるのはこの五十万円を一ヶ月たたずに使いきってしまう弟。
ぶっちゃけ、両親たちはこれ以上に金遣いが荒いので、これがあの二人の血を分けた子かと私は戦慄しました。
そう、私はこの時に思いました。
もう、子どもとか言い訳せずに会社を乗っ取るしかないのではないのかと!
ゲームの私が会社乗っ取りを子どもながらにしていたのは何のファンタジー要素を入れたのかと疑問に思ったのですが、現実でこれを見れば納得できてしまいます。
まだ見ぬ(父が社長の)会社で勤めている人たちとか会社の株主とか会社のに関わるすべての人たちに対して罪悪感をチクチク刺激される。
あのダメ人間を社長にしていたら、この会社が潰れてしまう...!
なので私は、執事の岩渕に相談しました。
何の知識もない子どもが、綺麗事だけで会社を乗っ取れるはずがありません。
少々、ぶっ飛んだ発想のような気がしなくもないですが、岩渕は思う所があったらしく、「少し、お時間をください」と言って出かけて行った。
数日後には、株主総会で私は社長挨拶をした。
脚本は、岩渕です。
もちろん、私の意見もほんの少しだけ取り入れています。
株主の中にいたお祖父様の友人は、「理沙ちゃんのお祖父さんは、理沙ちゃんの年にはもう会社を乗っ取っていたから、もう少し早く会社を乗っ取ると思っていたよ」と言われました。
他の株主の方々も納得したように頷かれています。
まあ、あの両親たちがいるなら私がすることは誰でも予想済みでしょう。
それにしても、お祖父様、一体何をしていらしたのですか!?