転生者には転生者がわかるものなのですか、いやわからんです
お待たせしました。
食後にまったりコーヒータイム。
最高なのです。
たとえカップの中身が半分ミルクであっても、「それコーヒーっつかコーヒー牛乳じゃね?」というツッコミがあったとしても、コーヒータイムが最高なことには変わらないのですよ。
「ところでエレナ、一つ質問してもいいかしら?」
目の前でわたしと同じようにゆったりとコーヒーを口にしていたアニーが、そうおもむろに切り出しました。
「はい。もちろんいいのですよ?」
わたしはこっくりと頷きます。
「わたし、遠回しな物言い好きではないから、ズバリで尋ねるけれど」
「はいな?」
「あなた、転生者でしょう」
………………。
「てん、せーしゃ?」
はにゃ? と首を傾げたわたしに、アニーは軽く眉を顰めました。
「……ほぼ間違いないと思ったのだけど、予想が外れたのかしら。意外だわ……」
何か小声で呟かれましたが、その声はわたしにまで届きませんでした。
んー?
アニーは何を聞いたのでしょうか。
てん、せー、しゃ。
うーむ?
そんな単語あったですかね?
ぬ?
てん……転?
ふぬ?
転生?
ふぬぬぬぬ?
てんせいしゃ……、転生者?
おおう!?
「まあ、いいわ。エレナ、ごめんなさい。今の質問は忘れ…」
「転生者なのですか! アニー、なぜそれを知っているのですか!? はっ! もしやアニーは……!」
「……」
「人の心が読めるのですか!?」
さすがヒロイン!
特別な力も持ってるのですね!
キラキラとわたしが尊敬のまなざしでアニーを見つめると、アニーは脱力したように溜め息を吐きました。
「……エレナ?」
「はいです」
「あなた、転生者に間違いないのね?」
「はいなのですよ」
「で、さっきの間は何?」
「てんせいしゃという言葉の音が、とっさに転生者に結びつかなかったのですよ。最近その単語あまり思い出すこともなかったですから」
「……で、それを言ったわたしが心を読める思ったわけは?」
そんなアニーに問いに、わたしは胸を張り答えました。
「わたしが転生者と知ってるのはわたしだけです。なのでそれを知ってるアニーはわたしの心をを読んだに違いないのです!」
「今あなた、最近転生者という言葉を思い出すこともなかったと言っていたのに? 矛盾してるとは思わない?」
うりゅ?
言われてみれば、ふぬ?
わたしの脳内、ヒロインヒロインうるさいだろうから、心が読めるとしたら、「そのヒロインって何?」が正しいのでしょうか。
と、すると。
「はっ、もしや」
わたしは重大なことに気がつきました。
「アニーは……、過去の記憶まで見ることができるのですか!」
「……あなた、過去に自分が転生者だって言ってまわっていたの?」
「ないのです!」
そんなこと言ってたら、変な子だと思われてしまうのです。
エレナさんは、空気は読めるのですよ。
ん?
「それだと、アニーにはわたしが転生者だってわかるはずないのですね」
わたしが腕を組み「じゃあ思考とかじゃなくてこう魂の色がわかるとか、転生者独自のオーラが見えるとか?」と首を傾げていると、アニーはゆるく首を横に振りました。
「いいかげん、そのわたしが超能者だっていう方向性から離れなさい。わたしにはそんな特別な能力はないから。もっとこう、一番当たり前の回答にならないものなのかしら、あなたは」
「当たり前、ですか」
「そう。あなたが転生者だって知っているその理由。転生者が何かって知っている、その理由」
転生者。
それは、この世界がゲームの世界、もしくはその世界によく類似した世界だって知っている、それは……。
アニーは、ふっとヒロインの名にふさわしい可憐な笑みを浮かべました。
「そう。それは、わたしもエレナ・クラウン、あなたと同じ転生者だからよ」
次回へ続きます。




