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アニー・カーティス視点

アニー姉さんとエレナさんの対面までカウントダウン、です。

 やはりゲームの強制力とは恐ろしいわね。


 しみじみそう思い知った。


 あのタイミングで窓枠が壊れるなんて、誰が思うものですか。


 幼いころからの鍛錬の賜物で事なきを得たけれど、危ないところだった。


 脚一本で済んで本当に幸いだった。


 だけれども。


 それも今日でお終い。


「ふ、ふふふふふふ」


 わたしは生徒名簿を眺めながら溢れ出る笑いを抑えきれずにいた。


 そこには、わたしアニー・カーティスと双子の弟レニー・カーティスの名前が載っている。


 周囲の人が止める中、わたしは入学式への出席を強行した。


 その後しばらく学校にはいられなくてもかまわない。


 その日、その場にわたしとレニーが存在していた、という既成事実さえ作ってしまえばそれでいいのだから。


 あくまでもわたしを排除しようとするゲームの強制力に勝つためにはそれしかない。


 名簿だけでは安心できない。


 その場に二人いた。


 その事実で、ゲームとしての世界観は覆される。


 残るは、わたしとレニーが存在する、現実。


 そうなってしまえば、もうこちらのものなのだから。


 未来の生き死にがわからないのは当たりまえのこと。


 ゲームの世界の前提を整えるために世界から排除される、そんな理不尽な強制力ことさえなくなれば、それでいい。


 わたしは満足な息を吐くと、檀上を見上げた。 


 ただいまその入学式の真っ最中。


 歩けないわたしは、人の手を借りて早めに席につかせてもらい座っていた。


 二人並ぶとさすがに目立つので、レニーには近寄らないよう言い含めてある。


 そう指示した時、レニーは何かを言おうとして結局言葉を発せず黙り込んだが、アレの言わんとしたことはわかる。


 ほぼ間違いなく、「言われなくても」と返そうとしたのだろう。


 ……伯爵家の世継ぎとしてもう少し腹芸が出来なければ駄目ね。


 そんなところから弟の再教育を見直す必要性を感じた。


 でもそれはまた後での話で、とりあえずはこの式が終わればわたしはそのまま医師の診察を受けてカーティス邸へ逆戻りの予定である。


 しばらくは怪我の治療・養生をしつつレニーから報告書を上げさせる予定である。


 そして、今後の対応を決めるのだ。


 目立たないようにしながら、要対象者達を観察した。


 年長者である為不在の王子やエルハラン公子息は別として、クラウン姉弟とラスティはその姿を見てすぐにわかった。


 ジェレミーとラスティはさすがの美形である。


 エレナも非常に可愛らしい少女だった。


 ゲームの記憶によると、ジェレミーにはもう少し陰があり、ラスティの態度には傲慢さが見え、エレナはもっと気が強そうなタイプだったような覚えがあるけれど。


 ただ、こちらの出方が決まっていない以上現時点で迂闊な接触はしない方がいい。


 今日はここまでと、わたしは意識して目を逸らす。 


 やっと、ここまで来たのだから。


 やっと。


 思いもかけず、わたしの目の端から零れた何か。


 わたしはそれを確かめることはせず、ただ真っ直ぐに前を見据えていたのだった。



エレナさんと対面シーンまで行ったら、またエレナさん視点に戻ります。

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