アニー・カーティス視点
今回はゲームの内容の説明回に近いです。
この乙ゲーは伯爵令嬢アニー・カーティスがヒロインである。
攻略対象者は四人、王子と公爵・侯爵・伯爵の各子息。
エンディングはベストとノーマルエンド。
バッドエンドは存在しない。
ベストはもちろん各攻略対象者との恋愛エンド。
ノーマルは少し趣が異なり、王子の場合は王子に気に入られ専属侍女への道が開かれる。
公爵子息とは仲の良い先輩後輩的な結末へ。
侯爵・伯爵の子息とはいわゆる友情エンドである。
特定の攻略対象を決めずにゲームを進めると、一番好感度の高いキャラのノーマルエンドに行きつく仕組みだった。
また、悪役令嬢の立ち位置であるエレナ・クラウンは適度な邪魔はしてくるが、物語を進める為の駒くらいのもので、いなければいないでも、という感じだ。
なぜこれが悪役、と首を傾げるのは、アニーのストーリーを進めていくとわかる。
攻略対象者四人のすべてのベストエンドをクリアすると、ヒロイン選択が出来るようになる。
ノーマルエンドは全クリアしなくても問題なし。
ヒロイン枠、つまりは主人公決定に、アニーの他エレナ・クラウンの名前が追加されるのだ。
それを見た時には妙に納得したものだ。
エレナ・クラウンは悪役令嬢であると同時にヒロインでもあるのだから。
ドギツイ悪役を演じさせて本気で嫌われたら、その構図は成り立たない。
では、エレナがヒロインの時にはアニーが悪役の立ち位置になるのかと思いきや、そうはならない。
エレナの攻略対象は全部で五人。
メインヒロインであるアニーよりも多い。
というよりこちらが本命でないかと思ったものだ。
攻略対象者は全部で五人のうち、四人はアニーと同じ。
ただこの攻略対象者達のエンドは全部で五つ。
ベストエンドは各攻略対象者との恋愛エンド。
恋愛エンドに至らなかった場合は、四人まとめてのノーマルエンド。
恋愛要素のないハーレムエンドと置き換えてもいいかもしれない。
姉のように、妹のように慕われるエンドで、好感度の高いキャラに囲まれて笑いあう、という結末だ。
四人まとめてというのは、このイラストカットが一人の場合もあれば四人全員の場合もあるが、内容は全部一緒という意味である。単純に好感度が低い、もしくは接点を持たなかったキャラは除外されるのだ。
エレナがヒロインの場合は悪役令嬢は存在しない。
少しばかり、王子の婚約者候補の令嬢ややっかんだ女子が出てはくるが、基本は攻略対象者達のトラウマや関わり合いがメインになる。
エレナの場合、王子以外の他三人のキャラとは幼少時からの関わりあいの為内容が濃い。
こちらの方がメインでは、と思わせるところの理由の一つである。
一部ユーザーの間でもどちらがメインヒロインであるか、というような論議があったような覚えがある。
結局、ゲーム製作者側の取り扱いや、エピソードやストーリの長さはアニーの方が多いといえば多いとのことで、アニーの方が一応メインヒロインで間違いない、という結果に落ち着いたような気がする。
それはそれとして、二人の一番の違いであるエレナの最後の攻略対象者、アニーの双子の弟のレニー・カーティスの存在。
このレニーが存在する時、つまりはエレナがヒロインとして選択される場合、例外なくアニーは存在しない。
それは、レニー攻略時に明かされる。
レニーには事故で亡くした姉がいる、と。
また、エレナがヒロインのストーリーもすべてこなした後、もう一つだけアニーが主人公で選択できるものが増える。
簡単に言うと、女子友情エンド。
エレナやフィフィルティール・フィッツグラットフェルト侯爵令嬢との友情エンドである。
結構なシナリオの量である。
正直、ゲーム製作者が何を目指していたかさっぱりわからないが、これが、この乙ゲーの概要であった。
それはともかくとして、大事なことはこの女子友情エンドストーリ-展開時にも、アニーの双子の弟が病気で亡くなったと明かされる、ということだ。
つまりは、アニーとレニーは同じ時間軸で生存できないフラグがこのゲーム開始前の世界に存在しているというわけで……。
アニーはうつ伏せで寝ていた状態から、むくりと起き上がると、座った目のままぼそりと呟いた。
「冗っっっ談じゃないわ。わたしは、絶対生き残ってやるんだから。絶対に…………!」
よく覚えているアニー姉さん。
エレナさんのゲームの記憶は穴だらけだった、というわけです。




