やっと、会えました
やっと、登場。
ひっじょーに重く暗く悪い空気の中、わたしはしずしずと無言でレニーの後をついて歩くのです。
何がそんなにレニーを怒らせたのか、さっぱりなのですよ。
レニーはあれから無言なのです。
もともと口数多い人ではないですが、まったくなのです。
わたしのパパさんもママさんも子供に激アマな方達ですし、ニールやジェレミー達もくどいほどの過保護っぷりをわたしに発揮してくれていたので、こんな扱いにはなれていないのですよ。
レニー・カーティス。
あなたは、何者なのですか。
わたしのヒロインでは、ないのですか。
……男の子ですもんね。
ふわっと風が髪を揺らします。
レニーに連れられて、普段はこない学校の裏庭にまできていました。
……意外といい景色なのですね。
風に攫われた花びらが、どこからか舞い落ちてきます。
その光景はとても綺麗なもので……。
こんな場所でヒロインと語り合えたら素敵なのに。
ああ、わたしのヒロイン。
きっとその姿は乙女の理想の姿に違いないのですよ。
風になびく、長いサラサラの髪。
揺れるスカート。
その優しい瞳の色はどこまでも澄んで。
桜色の唇は、淡い笑みを浮かべていて……。
「……あなたが、エレナ・クラウン?」
そう、その発する声はこんな風に、可憐な……。
………………え。
顔を上げると、いつの間にかそこには、木陰の下に立つ今想像していた通りの姿の女の子がありました。
風に舞う、長い髪は儚げな美しさで。
透けるような透明感のある白い肌。
その淡い琥珀の瞳は、優しい眼差しを湛えています。
唇は、人工的な着色など一切ない自然な淡い桜色。
呆然として見つめるだけのわたしに、その女の子は優しく微笑んで言いました。
「はじめまして。わたしは、アニー・カーティス」
その声を聞きながら、わたしの瞳からつっと一滴の涙がこぼれおちました。
間違い、ない。
…………やっと、会えた。
彼女が……、彼女がわたしの、わたしの求め続けた…………。
…………わたしのヒロイン。
この後どうしましょうか……。
ラストだけはもう決めてあるんですが。




