だって実のところ王子のことはよく知らんのですよ
お茶会回終了です。
では次王子。
……王子、ですか。
「最後に殿下、この国の第二王子、レフィル・ディラン様……」
…………。
「以上」
「はあ!?」
声を上げたのはその紹介対象、王子でした。
「ちょ、それだけ?」
「はい、それだけなのですよ」
「少なすぎじゃない? 他のと比べてもさ」
「はあ……」
しかし王子、他のは曲がりなりにも十年のお付き合いですが、王子とはここ最近のお付き合いですし。
まあ、実際のところ。
「よく考えてみたら、わたしもよく殿下のこと知らないのですよ」
「いやいやいや、何かあるでしょう。優しげとか社交的とか理想のお兄様とか」
「はあ……」
まあ、そう言われれば……。
「……………………うさんくさそうな感じ、とかですか?」
「ためにためて結局それ!?」
うむ、すまんこってす。
「殿下、これでよくおわかりでしょう」
ニールがぽんと王子の肩を叩きました。
「エレナは殿下に対してこれぽっちも親愛の情も親近感も、ましてや兄へ対するような慕情などといったものは欠片も持ち合わせてはいないのですから、これからはそれを自覚し、適度な距離感をもって接することを諌言致します。今後二度とエレナの兄を自称するような発言は避けられますよう。またお分かりではないかと思うので申し上げますと、適度な距離とは半径五メートル圏内ですので、……おわかりですね?」
「こわっ、つか本気で怖いよ、ニール! 後肩に爪くいこんでるから痛いよこれ、本当に! それに五メートルって、それ適度な距離じゃないよね? 話も出来ないよねそれ!?」
「必要があれば伝言して差し上げますよ」
「いや、僕は自分で話しかけるから……っていだだだだ、もげる、もげるよ腕が……!」
何やっとるんですかね、こいつら。
それはともかく。
「すみません、フィル様。紹介と言ったのにこんな為体で……」
「いいえ、よくわかりましたわ」
と、フィル様。
んん? 今の話で何がよくわかったんでしょうか?
ほぼニールと王子の漫才しかなかったですが。
そんなわたしの疑問に答えるように、フィル様はにっこりと微笑まれました。
「殿下につきましては、ご紹介頂かなくてもよく存じあげておりますわ。ですから、わたくしが知りたかったのは、その距離感。関係性ですもの」
はあ、関係性ですか。
別に王子とわたしでは特段関係もありゃしませんな、うん。
「ふふ、それにしても本当に愉快な方々……、いえ、貴女がいらっしゃるから、かしら?」
いや、もともと愉快な方々、でいいと思うですが。
「ぜひ、わたくしもお仲間に入れて欲しいですわ」
おお……っ!
「はい、もちろん喜んで!」
その後、楽しいお茶会は楽しいまま終了とあいなりました。
ん? 王子とラスティですか?
何か王子は顔色が青くなって、ラスティは紙のように白くなってたですが、突然具合でも悪くなったんでしょうかね。
まあ、若いんだから寝れば治るですよ、うん。
次回他者視点一つ入れたら、エレナさんがすっかり忘れているヒロインの話に突入です。




