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王子様は意外と見ているのです

あれ、レニーが何か……。

「レニー・カーティス……」


 その名前に、ピンとくるものはありません。


 まあ、ヒロインも決まった名前はありませんでしたし。


「カーティス……、カーティス伯爵家の嫡子か」


 横で呟くように、ジェレミーが言いました。


 よく名前だけでわかるですね、とは言いません。


 王宮より毎年、貴族のその家系図を記したぶっっっっっっっっっっっっっっっっ厚い本が発行されているので、それを覚えてさえいれば名前を聞くだけで一発で相手の素性がわかるのです。


 まあ、生まれたり亡くなったりで毎年内容変わりますしね。


 これは社交には必須アイテムですが、全部覚えている人はまずいないでしょう。


 いや、ニールだったら覚えていそうな気がします、恐ろしや。


 ジェレミーも全部覚えているわけではないでしょうが、同じ年頃ということで調べておいたのかもしれません。ジェレミーは意外とそういうところ、抜け目ないのですよ。


 きょとんとしたところを見ると、ラスティは覚えてませんね、仲間!


「僕は、ジェレミー・クラウンです」


「お、俺はラスティー・グランフォードだ」


 おとと、いけない。わたしも挨拶し返さないと失礼になるのですよ。


「わたしは、エレナ・クラウンです。先ほどはありがとうございました。そして、従兄弟のニールが失礼しました。ニールはとても過保護なのです」


 一つ下くらいで過保護もないですがな、と自分に突っ込みいれつつ頭を下げる。


「いえ……」


 それに対して、レニーの態度はどこかそっけない。


 はて、ニールの威圧ある空気に腰が引けたか、元来のものか、どっちだろう。


「では、誤解も解けたようですし、僕はこれで」


 レニーはそう言うと、足早に立ち去っていった。


「……珍しいタイプだねー」


 それまで静観していたらしい王子がそう言うと寄ってきた。


 いるいる、いるですよ、こういう奴。やっかい事が過ぎてから、寄ってくる奴。


「珍しい、ですか?」


 わたしはこてりと首を傾げた。


「うん。だってまず名を売るのに都合のいい僕らが勢ぞろいしてるのに寄ってこなかったでしょう。それは大体野心がないか、別に腹があるか、気後れするタイプか、だよね。まあ人が集まり過ぎてるものあったから、別の機会でと考えてる可能性もあるけど。それだけならともかくとして、今のエレナに関してのニールのこの勘違い、ある意味自分を売り込む絶好の機会だったはず。だけど、それもしないし。それどころか、早くこの場を離れたい感がありありだったね。かと言って、ニールに怯えてるとか、人目を集めるのが嫌だとか、恐縮してるとかって感じもしないし。うん、やっぱりちょっと珍しいタイプかな。気になるね、彼」


「へー、殿下って意外と周りをよく見てるんですね」


 節穴だらけかと思ってたですよ。


 思わず本音を言ったわたしに、殿下ににっこり笑うとにじり寄ってきました。


「うん、それどういう意味かな? 僕達、もっとお互いを知るためによく話し合ったほうがいいかもしれないね」


 王子、顔近い、近いって。


「……殿下、それ以上エレナに近づかれるようなら……」


「うん、ないない、ないから。適度な距離感って大事だよね」


 ツンドラニールの冷たい殺気漂うブリザード気候に晒され、王子はさっとわたしから離れました。


 ニール、便利ですな!


 しかし……。


 わたしはレニーの去っていった方を見ました。


 そこにはもう彼の姿はありませんでした。


 レニー・カーティス。


 彼はいったい、『何』なのでしょうか。

次回は、エレナさんもんもんと考え込む、の回です。

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