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ごまかしの代償に、わたしは何かを失ったのですよ

何かを得たとも言えます←サブタイトル

「エレナ!? どうした!」


 わたしの悲鳴に似た叫び声に、ニール・ジェレミー・ラスティが飛んできました。


 その声に、わたしははっと気がつきました。


 思わず上げた大声と、人寄せホイホイの攻略対象者達がこぞって寄ってきたせいで、人目が集中しています。


 いーやー、目立ってるのです~。


 お前らこっちくんななのですよっ。


「貴様、エレナに何をした」


 しかし、わたしがあわあわしている間に、勘違いしたらしいツンドラニールが本領発揮してブリザードボイスで、ヒロイン? な男の子へ詰め寄っています。


 ラスティも憤ったような顔をしているし、ジェレミーはわたしを庇うように手を広げました。


「何を、と言われても……」 


 ヒロイン? な男の子は困惑したような表情で佇んでいます。


 そりゃそうだ。


 転んだ相手を助けたら、ガン見されたあげく悲鳴を上げられたら意味わからんですな。


 別に悲鳴上げられるような容貌をしてるわけでもなし。


 こりゃいかん。


 わたしは慌てて、ジェレミーを押しのけニールの袖をひっぱりました。


「違うのです、違うのですよ、ニール兄様。この人は転びかけた私を助けてくれただけなのですよっ」


 わたしがそう言うと、ニールはその瞳の冷たさを少し和らげた。


「だが、どうしてエレナは悲鳴を上げたんだ? 転びそうになった声には聞えなかったが」


「そ、それは……」


 ここでまさかヒロインだと思った相手が男の子で驚いたから、などとは口が裂けても言えない。


 頭のおかしい奴、だと思われてしまうですよ。


 え、ええと、あ、そうだ。


「む、虫、虫なのですよ……っ」


「虫?」


「そう、虫! 転んで足を捻ったかな、と感じて足元みたら、虫がいたのですよ! それでびっくりして声を上げてしまったのです! 見間違いで勘違いだったけど!」


 おう、我ながらいいごまかしなのです!


「しかし、芋虫だって嬉々と素手で捕まえてくるエレナが今更虫くらいで……」


 こちらを見ている周囲から、ざわっとどよめきが起きました。


 ……お前、なぜそれをこの衆人環視の中で言う。


 あう、ツンドラニールめ~、お前の発言のせいで、わたしは芋虫を素手で摑む令嬢に確定されてしまったでないですか。事実だけど。


 くっ、この報復は後でするとして、今は何とかごまかさないとなのです。


「わ、わたしだって駄目な虫くらいあるのですよ。た、たとえば、そ、その、あの、……そう、あの黒くてテカって生命力と繁殖力は半端ない……!」


 その名をゴ〇ブリと言う。


「……ああ」


 やっとニールも納得してくれたようです。


 ヒロイン? な男の子に向き直ると、軽く頭を下げた。


「すまない。助けてくれたのに、あらぬ疑いをかけてしまって。エレナを助けてくれて、礼を言う」


「いえ……」


「わたしは、ニール・エルハランだ。今後、何か困ったことがあれば相談してほしい。ところで、君はの名前は?」


 心のうちで、礼を言うって礼は言ってないじゃねーですか、と思わず突っ込みを入れてたわたしは、そのニールの問いに、ヒロイン? の男の子を見た。


 わたしは確かにゲームのヒロインの名前を知らない。


 だけど、名前を聞けば、思い出す何かがあるかもしれない、と。


 よしニール、グッジョブ!


「僕ですか? 僕は……」


 ヒロイン? な男の子は、澄んだ声でまっすぐこちらを見たまま言った。


「僕は、レニー・カーティスと言います」

ヒロイン? な男の子、この短い文の中に何回出てきたんだか。

エレナさんしつこい……。

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