入学式は退屈なものと相場が決まっているのです
エレナさん……、自覚が出てきた模様。
何の自覚かは本文へどうぞ。
入学式は、学園長・来賓者等々のお偉いさん方のお話しが延々と続く、退屈極まりないものでした。
ニールとジェレミーにお菓子をもらっておなかを満たしたわたしは、当然のごとく……。
「…………すー…………くー…………すー…………」
爆睡でした。
エレナ・クラウン、十四歳。
特技は、目を開けたまま寝ることです!
……こわっ。
でも、意外とこれイケるんですがな。
白目なんかむいてませんよ?
ちゃんとジェレミーに確認してもらいましたからね。
小さい頃からおイタしてみっちり叱られる、これをエンドレスで繰り返している間に取得したワザなのです。
でも大丈夫。自分でも摩訶不思議ですが、何故だか空気は読めて、話しかけられたり起きなきゃいけない時はきちんときっぱり目が覚めるんです。
何て便利!
……全然自慢できるもんじゃないですね。
てゆーか、貴族の伯爵令嬢って、わたし、生まれてくる場所間違ったんじゃないでしょーかねー。
悪役令嬢以前の話ですもんねー。
今更ですか。
そうですよねー。
……わたしの前世って、どんなんだったんですかねー(遠い目)。
そんなこんなで入学式は終わりました。
入学式の内容の記憶はさっぱりです!
次は新入生歓迎の懇親会なのです!
……おいしいもの、でるですかね?
はっ、いや、そうではなく!
この機にぜひ、わたしのヒロインをさがさなくては!
ヒロイン、夢にまでみたわたしのヒロイン。
この世の至高の美少女!
待っていてくださいなのです、あなたのエレナが今行くのです!
「姉様、何してるの? 会場移動しないと」
「ああ、ジェレミー。ごめんなさいなのです。考えごとしてたのですよ」
気がつくと、入学式会場の中にはわたしとジェレミーしか残っていませんでした。
「まったく、姉様ったら。これだから、僕がいないと駄目だね」
そう言って、ジェレミーはわたしの右手をぎゅっと握ってきました。
「あ、エレナ! いないと思ったらまだこんな……。あ、お前何エレナの手握ってんだよ!」
バタバタとラスティが戻ってくるなり、そう叫びました。
「煩いな。お前には関係ないだろ」
「エレナは俺の婚約者だ!」
「僕の姉様だよ。名ばかりの婚約者に何かを言われる筋合いはないね」
「くっ……」
顔を真っ赤に怒るラスティーとツーンと素気無くするジェレミー。
まったく、この子達は仕方がないのですよ。
わたしはあいているいるもう片方の左手で、ラスティの手を握るとくいっと二人の手を引っ張ります。
「さあ、喧嘩ばっかりしてないでもう行くのですよ。二人とも、もう大きくなったのだからもう少し大人にならないと駄目なのですからね?」
「……姉様にそれを言われるのは」
「お姉さんぶってるエレナも、…か、かわ……」
「……ぷっ」
突然、扉の方から笑い声が聞こえ、わたし達はいっせいにそちらを見ました。
そこには、一人の男の子が立っていました。
淡い金色の髪。
エメラルドグリーンの瞳。
女性的というわけではないけれど、優しげな微笑みを浮かべた、麗しい容貌。
いうなれば、なんというか、王道の王子様、的な……。
はっ、思い出しました!
これはマジもんの王子様です!
四人目の攻略対象者なのですよ!
この国の第二王子、レフィル・ディラン! その人です!
新キャラ登場です!
ただ例のごとく登場しただけ。




