誰か穴掘ってくれませんか?
エレナさん、気がついたら食い意地はってるだけではなく大食い設定になってました。
「「「………………」」」
くっ、沈黙とみんなの視線が痛いのですよ。
すべてはこの聞き分けのないおなかの虫が悪いのです!
わたしはおなかを押さえて俯きました。
さすがに恥ずかしいのですよ、乙女心を持つ身としては。
誰が乙女かって? ぶっとばしますよ。
「……エレナ、おなかがすいてるんだね? かわいそうに。こんな時の為に、ドライフルーツを用意してあるんだ。これなら手早く食べられるしね。ほら、食べなさい。寮へは後で話をして、食事の量を増やしてもらうようにするから」
ニールがすっと胸元から白い布に包まれた包みを出してきました。
はっとわたしは顔をあげました。
「ニール兄様……」
ニール、思えば小さい頃から雛に餌を与えるがごとくわたしにご飯やお菓子をくれました。
こんな日まで、きちんとわたしのことを考えてくれていたのですね!
「やっぱり、姉様に寮の食事では足りないと思ったんだよね。はい、姉様。僕もクッキー用意してあるから、おなかの足しにして。あと、後で家に連絡して姉様の食べる夜食やなんやらを頼んでおくからね。自分の部屋に食べ物置いておけば安心だもんね?」
ジェレミーもすっと上着のポケットから紙袋を取り出しました。
「ジェレミー……」
ジェレミーも小さい頃からわたしにおかずやおやつをいつもわけてくれました。
わたしの胃の容量をばっちり把握しているのですね!
「は……? え……? 何でそんなん持って……。あれ、俺、俺も何か……、な、ない……」
ラスティは慌てた様子でごそごそと自分の身体を探りますが、まあ予め用意してなきゃ出てくるわきゃないですよね。
やれやれ、ラスティは昔からイマイチ間が抜けてるのです。
まあ、それはともかく。
「二人とも、大好きなのです……! これで入学式の最中も安心なのですよ!」
ぴょんっとわたしは二人に抱きつきました。
その隣りでラスティが途方に暮れた顔をしていたのと、そんなラスティにニールとジェレミーが勝ち誇った顔をしていたことを、わたしは知りませんでした。
それから、そこが男子寮と女子寮の真ん前のことで、イケメン三人に構われていることで生徒のみなさんから注目を浴びており、しかもその内容がとっても残念であったことなどの噂が飛び交うことになるとは、そう。
その時は知る由もなかったのですよ(泣)
穴があったら入りたいとのこのことだと、後から悶えったのは数日後の話……。
次回は入学式です。新キャラ登場予定です。
しかし予定は予定なので出なかったらすみません。




