望まれたもの
そろそろ毎日更新きつくなってきました。
「クラウン伯爵家の伯爵夫人って言ったらすっげえ美人で有名じゃんか。その娘っていうからどんだけだって期待してたのに、ガッカリだぜ」
これが第二声。
「まあ、婚約したからって、絶対結婚するとは限らねーけど? できればもっと美人か可愛い方がよかったっつーの。侍らせておくお飾り人形は見栄えがいいほうがいーからな」
第三声。
「だけどそもそも俺は女なんかうざくてしょーがねーんだよ。きゃーきゃーうっせーし。なんでこんなに早く婚約なんかしなきゃなんねーんだよ。お前もせいぜい分をわきまえて大人しくしてろよ。女は男に黙ってしたがってりゃいーんだからよ。それに家だって俺の家は侯爵でお前の家は伯……がっ!」
第四声、を言いかけたところで、その声は止まった。
ラスティの父であるグランフォード侯爵が、その口を鷲掴みして黙らせたからである。
グランフォード侯爵はラスティとは真逆の、なんか、草食系の優男、って感じでしょうか。
しかし、鼻ごと口を押さえられてむごむ悶えているラスティを無視して、にこにこ笑っているその姿はなにか侮れないオーラを放ってるですよ。
あれですよ、見た目に騙されちゃいかん、とか、こいつ意外に黒いんじゃねーの、とかの。
パパさんは無言ですが、その瞳は結構冷やかです。
初対面の娘相手に開口一番であんなとこ言う奴に、好意的になれってゆー方が無理ですが。
そして隣室からは殺気が漂ってきてますがな。
隣室にはさすがに同席は断られたニールとジェレミーが控えてます。
……なんか空気が寒くて痛いのは気のせいではないですか。
つか、この婚約白紙になったりするですかね?
「ごめんね? うちの愚息が失礼なこと言って」
にこにことグランフォード侯爵はそう言って謝ります。
「うちの愚息、何度躾け直してもその尊大な態度治らなくてほとほと困ってたんだ。このまま成長すると、とってもまずいことになると思うしね」
うん、納得。
胸の内でどー思おうとその人の勝手でしょうが、相対した時真っ正直に侮蔑・無礼な言動するようじゃ貴族社会、というより人間社会でうまくやってけはいけないでしょう。
だって、わたしのラスティの口開いた後の第一印象は、怒るより何よりこいつ馬鹿だ、と呆気にとられたのが先でしたし。
ニールの初対面時の挨拶が完璧だっただけに、貴族の子女ってみんなあんな感じかと思ってたですよ。
まあ、違うことが今はっきりわかったわけですが、それにしてもこいつは酷いですよ。
これが侯爵家の跡取りというなら、グランフォード家のお先は真っ暗ですね!
「そんなところに、君の話を耳にしてね。ぜひうちの愚息の婚約者となって、その性格矯正してもらいたいなって思ったんだ。だから、ルフォスに無理聞いてもらっちゃった。昔のことでちょっと貸つくっといたのラッキーだったな」
はい? どんな話でしょう? 矯正って? そして最後の貸ってちょっと気になります。
「エルハラン公爵家のニール君、とても優秀で有名だったけど、ちょっと優秀過ぎて四角四面というか、人間味がないとの噂だったんだ。だけど君と接するようになってからだいぶ人間らしくなったと聞いたし」
はあ、人間なのに人間らしくないとはこれいかに。
「後は医療の専門家や君の父上であるルフォスでも心を開かなかったジェレミー君、一目で懐かれたそうじゃないか」
はあ、たまたまだと思いますが。
「実は僕、このルフォスとは昔からの友人なんだけどね、こいつも昔はお前人間? 血液流れてんの? その血、その瞳と性格と同じで青くて冷たいいんじゃないのって思ってたけど、こいつも君が生まれてからだいぶ話がわかるようになった……ちょ、ルフォス、拳骨で殴るの禁止!」
うん、タイプは真逆だけどラスティの口の悪さは確実にこの人の遺伝だ!
そして、ラスティの顔色が赤から青になって紫になってきたですよ?
暴れてたのに、ぐったりしてきたですよ?
そろそろ手離してあげないとやばくないですかね?
そして、話はわかりました。
わたしは婚約者兼教育係を望まれたようです。
と言うよりメインが教育係でしょうか、この場合。
ゲームでこんな展開あったんでしょうか?
いや、なかったと思います。
はてさて、どうしましょうか。
ラスティはああ言いましたが、エレナさんは普通に可愛い顔してます。
母・エレインの美貌が別格の容姿なだけです。




