予定と違うのです
エレナさん残念っぷりがご開帳!
今日から家庭教師の日です!
わたしは燃えに燃えてます!
わたしの実力の見せどころなのです!
「姉様、楽しそうだね」
おお、ジェレミーわかりますか!
「もちろんです、頑張るのですよ! ジェレミーもわからないことがあったらわたしに聞くがいいのですよ!」
「はい、姉様」
素直に頷くジェレミーを見て、わたしははっと気がついた。
わたしはいじわる姉なのです!
義弟の面倒なんかみては駄目なのでした!
「や、やっぱり駄目なのです! ジェレミーはジェレミーの力で頑張らないといけないのです! わたしは手助けなんかしてあげないのですよ!」
「はい、姉様」
またもや素直に頷くジェレミー。
……この子わかってるんでしょうか。
もしや、いい加減に返事してるなんてことは……。
まあ、いっか。
さあ、始まりなのです!
最初は学問の授業。
「はい、ジェレミー様はよくできました。エレナ様は……、反復で繰り返し覚えることが大事なのです。大丈夫ですよ」
「姉様、ここはこうやって覚えるといいよ」
あれ?
次は貴族社会の勉強。
「はい、ジェレミー様はよくわかっていらっしゃる。エレナ様は……、大丈夫です。まだまだ時間はありますからね」
「姉様、僕がサポートするから安心してね」
あれれ?
次は音楽のレッスン。
「まあ、ジェレミー様はピアノもバイオリンも才がありますわ。将来が楽しみですこと。エレナ様は……、音楽とは音を楽しむ為にあるのですから、ええ、はい」
「姉様、僕にとっては姉様のお声が一番の最上の音楽だよ」
あれれれ?
次はマナーのレッスン。
「まあ、ジェレミー様は覚えが早いこと。もう一人前の紳士ですわね。エレナ様は……、とてもお子様らしくて微笑ましいですわ。時間をかけてゆっくり身につけていきましょうね」
「姉様、姉様は自然体が一番素敵だよ」
あれれれれ?
次は刺繡の……なんでジェレミーもいるですか。
「ほほほ、ジェレミー様ったらこんなことまで器用でいらっしゃる。男の子にしておくのが惜しいほどですわ。エレナ様は……、きゃああああああー! ち、血らだけではないですか、……ああ」
「ね…姉様……」
うっかりハサミで手をバッサリ切って大騒ぎ。先生は倒れるわジェレミーは青い顔して震えるわ。
お医者様に来てもらって無事治療完了。
……ちょっと痛いけど、むーん。
ママさんは「針で布を血に染める子は見たことあるけど、ハサミで布を血で浸す子ははじめて見たわねー」と呑気に笑ってました。
……もしやその針で、の子はママさんですか?
あと、ジェレミー。お義姉ちゃんは手切ったくらいじゃどーもないので離れてください。
離そうとしたら、爪が肉に食い込んで、いでででで!
……血で事故のこと思い出させちゃったかな、しばらくは優しくしてあげよう、うん。
結果、わたしの授業から刺繡のコーナーは姿を消しました。
あと、ジェレミーとわたしは別々に授業を受けることになりました。
理由は進行ペースが違うということと、ジェレミーがわたしのこと気にかけすぎてしまうから、とのこと。
………………あれ? なんか予定と違うのですよ?
エレナさん、いつ自分のスペックの低さに気がつくのか。




