張り合うのやめてください
ニール再登場、です。
ジェレミーが義弟になってから一ヶ月経ちました。
いまだジェレミーはわたしにべったりです。
ええ、本当に言葉の通りべったりと。
起きるのも一緒。
寝るのも一緒。
ご飯も一緒。
絵本読むのも一緒。
隙あらば一緒に入ってこようとするトイレとお風呂は勘弁して、お願いだから。
……一生このままだったらどうしよう……。
「……ねえジェレミー」
「はい、姉様」
「ちょっと離れて……」
「嫌です」
ジェレミーは惚れ惚れとするような愛らしい笑顔で拒否をした。
……あう。
そんなこんなで日々を過ごしていたら、従兄弟のニールが訪ねてきました。
本当に会いにきましたね、こいつ。
銀髪のニールは、お土産にチョコを持ってきました。
ああ、それは行列が出来ると評判のお店の……!
うまそうです、じゅる……。
「またお会いできて光栄です、叔母上。今日も一段とお美しい」
「まあ、ありがとう、ニール。今日はルフォスは不在だけれど、ゆっくりしていってね」
「はい、ありがとうございます。お言葉に甘えまして」
「ふふ。それと、ジェレミーとも仲良くしてあげて。エレナの弟になったの。……事情は、ニールも知っているわよね?」
「はい、叔母上。存じ上げています。微力ながらわたしもお力になれれば、と」
「ありがとう、ニール。あなたにそう言ってもらえて心強いわ」
以上、ママさんとニールの挨拶の会話。
そしてニールは今わたしと対面しています。
大人がいると変に気を遣うだろうと、部屋の中にはわたしとジェレミーとニール、三人だけにされてます。
「…………」
やっぱり喋らんですよ、こいつ。
大人の前での饒舌はどこいったです。
つかまじあの口のきき方、こいつ本当にわたしより年一つ上なだけですか。
サバよんでんじゃないですか。
そんなわたしの疑惑をよそに、ニールはじーとわたしとジェレミーを見てるです。
ジェレミーはわたしの腕にぎゅっとしがみついたまま、ニールを見上げています。
「……羨ましい」
ニールがぼそりとなにか呟きました。
はい?
声が小さくてよく聞き取れませんでしたがな。
それより。
「ニールにーさま」
「なんだい、エレナ」
「お土産のチョコ、食べたいのでしゅ」
「ああ、ごめんね」
ニールはそう言うと、包装を解き、箱を開け、それをテーブルの上に置き、チョコを摘み……。
ん?
「はい、あーん」
はえ?
ニールはわたしの口元にチョコを持ってきました。
こいつ、わたしのことペットかなにかだと思ってるんじゃないでしょーか。
一人で食べられますよ、失礼な!
前回の食べにくい果物とは違うのですよ!
そうは思いつつも。
鼻先にはよいチョコの香り……。
ぱくり。
うっ、うっまあー!
さすが、行列の出来る店のチョコは一味違うのですよ……!
涙の出る美味しさなのですよ!
それを見ていたジェレミーは、無言でチョコとを一つ摘んだ。
うんうん、おいしいよ。君もお食べ。
しかしジェレミーはそれをそのまま私の口元へ持ってきた。
ん?
「はい、姉様。あーん」
ぱく。
あ、思わず食べちゃった。
うん、おいしい。
「エレナ、あーん」
「姉様、あーん」
二人はそう言って、交互にチョコを食べさせようとする。
は? え? なに張り合ってんですか?
つい食べてしまいますが。
お・い・し・い・の・で!
「エレナ、おいしい?」
「姉様、もっと食べて」
「こっちもおいしいよ」
「姉様、ほらこっちも」
え? ちょ、あの……!
「姉様?」
「エレナ!」
結果、わたしはチョコの食べ過ぎで鼻血を出したのでした。
わたし、これでも乙女なのに……、鼻血……。
あう。
次回も同じノリで。




