ニール・エルハラン視点
書いててこっちが転生者の間違いじゃねーの、というしっかりしたお子さんになりました。
その日、わたしは初めてエレナ・クラウンという従姉妹に会った。
噂に聞いてたエレイン叔母上とルフォス伯は想像通りだった。
しかし、前情報のない従姉妹は、エレイン叔母上のミニチュア版を想像していたら、まったく違っていた。
大きな瞳が、物珍しげにくるくると動く。
まだあまり言葉はうまく話せないようだったが、お祖父様に口答えするなど自分はしっかりと持っているようだった。
その子は、わたしを見ると驚いたような顔をして気を失った。
少しショックだった。
わたしは、そんな気を失うほどの怖い顔をしているのだろうか。
あの、お祖父様でも大丈夫だったようなのに。
客間に運ばれたあの子はなかなか目を覚まさないようだった。
そうこうしてるうちに、夜会の時間がきてしまった。
これは、伯母上が戻ってくる日を選び、当家で主催したものだったので、お祖父も叔母上もルフォス伯も中止や不参加などはできない。
着飾って女神のように美しくなった叔母上は、わたしにこう頼んだ。
エレナのことよろしくね。目が覚めたら好物の果物を食べさせてやって。せっかくの従姉妹なのだから、この機会に仲良くなって欲しいの、と。
正直、困った。
わたしは子供の扱いなどわからない。
わたし自身子供と呼ばれる年齢なのは百も承知だが、幼い頃より将来の公爵家世継ぎと厳しく育てられ、気がつけば自身の資質もあってか子供らしくはない子供になっていた。
しかし、頼まれたからには仕方がない。
わたしは従姉妹の好物だという果物を用意してもらうと、彼女が眠る部屋へと向かった。
そこで、目にしたのは……。
わが従姉妹殿の奇怪な行動だった。
百面相してたかと思えば、突然叫びながら枕を放りなげ、ジタバタしていたと思ったら、ガッツポーズをしている……。
なんなんだろう……。
わたしは、頃合いを見計らって室内へ入った。
すると、彼女は最初は警戒していたようだったが、好物を目の前にそれが緩んだ。
叔母上の考えは正しかったようだ。
しかし、彼女は手先もあまり器用ではないのか、それを食べることが出来なかった。
泣き出しそうになったため、手助けを申し出た。
すると、彼女は素直に頷いた。
少し、感動した。
こう、慣れない子猫を懐柔できたような。
そして少し戸惑った。
わたしはあまり感情の揺れがない方だと思うのだが。
彼女を見ていると、その揺れ幅が大きくなっているような。
そして。
果物を食べさせている時の、彼女の、エレナの笑顔。
ものすごく、かわいかった。
全身で幸福を表しているような、彼女の笑顔。
見ているこちらまで、幸せになってしまうような、そんな。
わたしはこの笑顔のためなら、どんなことでもしてあげようと、心に誓った。
エレナさん、ツンドラニールを攻略した!




