わがまま娘、ミッション完了! なのです
エレナさん、基本的にわがままの意味取り間違えてます。
食べさせてあげよう、という誘惑に。
「……あい」
わたしは静かに屈服しました。
ぐりゅりゅんるん!
わたしのおなかが喜ぶような音を立てた。
すでにここまでくると羞恥心は失せたです。
ってか、このおなか、意思でも持ってるんですか、おい!
すべては!
すべてはこの腹減りおなかが悪いのです!
わたしは悪くないもん!
そして。
ニールは流れるような美しい所作でフォークを操ると、器用に果物をわたしの口元まで運んできました。
本当器用です、こいつ。
本当にわたしより一つ上なだけですか。
……公式攻略ガイドにあったから間違いないですね。
まあいいです。
ぱくり。
わたしはおずおずと、果物を口に入れた。
う・わ・わ・わ・わーん。
あ~ま~い~。
すっごおいしーです~。
さすが公爵家。いつものより、よりレベルUPしたお味がするです~。
ふにゃにゃにゃにゃーん、と頬が緩みます。
「……もっと、食べる?」
こくこくこくこくとわたしは猛烈な勢いで頷きました。
それからはフォークはわたしと果物が入った器の間を忙しく往復します。
「おいしい?」
「あい!」
「これ好きなの?」
「あーい!」
「もっと食べる?」
「あいー」
「おいしいねー」
「ふりゅりゅー、おいしーのー」
「……かわいい」
ん? 今なんか言った?
食べるの夢中で聞いてなかったですよ。
気がつくと、すっかりガラスの器の中の果物は空になってました。
わたしのおなかはくちくちです。
はー、満足ですなー。
うーん、でもよく考えるとですよ?
食べさせてもらったということは。
わたしはニールを下僕のようにこき使ったわけですよ。
ふつー、貴族のお坊ちゃまはそんなことする機会なんてないですよ。
てゆーことは、わたしはニールに屈辱を与えたってことですか。
これって、わがままですよね。
とゆーことはわがまま娘だと、ニールの中にはインプットされたわけですよ。
はう! 災い転じて福となすとはまさにこれ!
……ちょっと、やりすぎたでしょうか。
いやいや、最初が肝心です。
後は後で調整していけばいいのですし。
まあまだ十年はあると思えば、どうとでもなるのですよ。
この勝負、わたしの勝ちに決まりですな。
よし、今回のミッションは完了! なのです。
そういえば、なぜニールがこの部屋に果物もって来たですか。
……まあいっか。
次回はニール視点です。




