それは非常に食べにくいのです
なんだか話がスローテンポ。ニール編はとりあえず後二、三話の予定ですが。
「おなかしゅいたでしゅ!」
とりあえずわがまま言ってみるです。
すると、ニールは驚いたように、わたしを見た。
ふっ、さっそくわたしの先制わがままに振り回されるがいいです!
……だけど、本当に口にしたらおなかへってきたですね。
きゅるるるる……。
すると、ニールは半分扉の陰になるようにして立っていた所から、部屋の中へ入ってきた。
その手に銀のボールで覆ったお皿を持って。
どうやら扉が邪魔で見えなかったみたいです。
……あらかじめ用意してたですか、こんちくしょう。
「わたし、今はあまい果物しか食べたくないでしゅっ」
ニールはそっと銀のボールをとった。
そこにあったのは、わたしの大好きな果物、……葡萄にによく似た、ただ甘さは半端ないものが、ガラスの器に盛られてました。
じゅる……。
は、いけない。ここで喜んでは簡単な奴だと思われる!
わがまま、わがまま……、ここでふさわしいわがままは……。
「そ…そんなの食べないでしゅ。もっと気の利いたものが食べたいでしゅ!」
「わかった」
ニールはすっとそれを下げようとした。
「あう……!」
ぐきゅるるるるるる……!
「………………」
「………………」
思わず反応した私の声と、部屋中を響き渡ったおなかの主張の音に、その後の沈黙が痛い。
「…………食べる?」
わたしは無言でこくりと頷いた。
すべて空腹が悪いんだい!
ニールはわたしの前にベッドの上に置ける簡易テーブルを用意すると、そこに果物がのったガラスの器を置いてくれた。
じゅるり。
実はこれ、わたしの大好物なのです。
腹減りおなかが主張するほど、大好きなのです。
だけど、つるつるして食べにくいのです。
だからいつもはママさんに食べさせてもらったり、ちょっと行儀は悪いですが手づかみで食べるのです。
が、ここには用意されたフォークが。
さすがに手づかみするのは気がひけます。
たとえ幼子でも貴族はマナーにうるさいのです。
思わずニール、どっか行けと念じましたがニールはじっとわたしを見ています。
仕方がないのでわたしは用意されたフォークを使うことにした。
つるっ。
つるっ。
つるっ。
まったくフォーク使えません。
いらっとくるです。
再度挑戦。
つるっ。
つるっ。
つっ…、てんてんてん、ころころころ……。
「………………」
「………………」
つかみそこね滑った果物の実が、床に落ち転がっていきます。
ぐるきゅるるるるる……!
なにやってるんだとおなかが情け容赦ない突っ込みを入れてきました。
「ふりゅ……」
思わず泣きが入りそうになった所で、思わぬ助け舟が入りました。
「わたしが、食べさせてあげようか……?」
エレナさんは食い意地がはってます。




