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わたしのために争いはやめてくださいなのです

大変お待たせいたしました。

 フィル様とアニーのバトルが止まりません。


 とは言っても殴り合いではないのですよ。


 口と口との闘い。


 舌戦なのです。


 しかも言ってることが、フィル様は女性としての品格だの身分に応じた品の選び方だの、アニーはアニーで経済的効率だの使いまわしによる減価償却率だと、よくわからないことのオンパレードなのです。


 しかも二人とも笑顔が崩れてないのがちょっと怖いのです。


 キュル……。


 今日はお食事のお呼ばれではなかったのですかね。


 いや純然たるソレ目的ではないとはさっき聞きましたがね。


 でも夕食食べさせてもらえるって話は間違いではないんですよね?


 グルグルグル……。


 この争いはいつ終わるんですか。


 女の闘いは長いんですね。


 こうなると、いつも一緒のラスティがポカをやり、ジェレミーが嫌味とともに一発入れて、ニールはツンドラビームで黙らせる、といういつものノリがとても懐かしいものに感じてしまうですよ。


 グルックグルックキュリルルル……。


 さっきからわたしのおなかが主張をしてやみません。


 そりゃわたしだってさっさとおいしいごはんを流し込んでやりたいですよ?


 でも……。


 チラリとそばで控えている侍女さんへ視線を向けてみます。


 侍女さんは申し訳なさそうな顔をして静かに首を横に振ります。


 そりゃそうですよね。


 自分の仕えている主人の会話に割って入るっていうのは普通ないですよね。


 グルグルグルクルルルルルルルル――――――!


 しかし!


 わたしの腹減りっぷりももう限界なのです!


「……やめてくださいなのです!」


 突然声を張り上げたわたしに静かに言い争っていた二人はぴたりと口を閉ざし、わたしの方を見たのです。


「「エレナ?」」


「もう、もう……わたしの為に争うのはやめて下さいなのです……!」


 わたしはキッと二人を見据えて言い切りました。


「エ、エレナ……」


「そうよね、つい夢中になってしまって。今まで放置してしまって悪かったわ」


「そうですわね、本当にわたくし、大人げなかったですわ。謝罪申し上げます、エレナ。あなたのことを心配に思うあまり、熱が上がってしまって……。逆に傷つけてしまったようですわね。許して下さる?」


 わたしはこくこく頷きました。


 謝罪なんていいのです。


 わたしの(おなかの)為に争いはやめてくれればそれで。


 そしてわたしにごはんプリーズ!


「……じゃあもうみんなで仲良く夕食食べるですか?」


 上目遣いでそう尋ねるわたしに、二人は極上の微笑みを浮かべました。


 よし!


 やっとごはんの時間なのです!


 グルッ!


「わたしの為に」の解釈がエレナさんと、フィル様&アニーで異なることを指摘するツッコミ役が不在の現状……。

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