ダンス・パーティは面倒がたくさんなのです
大変お待たせ致しました。
ダンス・パーティ。
その単語で思い浮かぶのは、綺麗なドレスを纏ってクルクル踊る、アレですな。
何だか曲とずれていると指摘されて、意識すると余計にずれていくアレのことですな。
練習でジェレミーやラスティの足を踏みまくりの、アレでもありますな。
あれ?
わたしのアレってダンスと言えるのでしょうか?
まあそれは置いておくとして。
「……その、ダンス・パーティがどうかしたのですか?」
こてりと首を傾げて尋ねてみるですよ。
そりゃあ、お貴族様の集まりの学校ですから、ダンス・パーティの一つや二つ、あるんではないですかね。
適当なドレス着させてもらって、適当に髪やアクセサリーで飾ってもらって、ニールかジェレミーかラスティにエスコートしてもらって、適当に相手の足を踏みながら踊れば終了、なのではないのですか。
フィル様はわたしの質問に、「やはりご存じないのね」と言ってにっこりと微笑んでくれます。
その微笑み、威圧感バリバリです。
うん! 今日も悪役令嬢真っ青なお素敵な微笑みですな! 羨ましい!
「来月のダンス・パーティは新入生限定の比較的大規模なものなのですわ。会場設置などについては学校の方で手掛けますが、そのドレスや装飾品、パートナー選びを自身の裁量で行うのです。つまりは、その場に相応しい、自身も最も最適な選択が出来るかの試験ですわね」
「ふえ?」
自身の裁量とは?
どやて?
わたしの疑問に答えるように、フィル様は続けて説明してくれます。
「通常、ドレスや装飾品は自分の『家』で用意されるものでしょう? 今回のテーマでそれをしてしまうと、自身で選ばれたものかわかりませんわ。それに、これは一種の試験であるのに家の資産の貧富によって差が出ては元も子もありません。ですから、学校側で用意された業者にそれを注文をするのです」
「予算はどちらから?」
ここでアニーが質問を投げかけます。
ん? アニーの目がキラリと光った気がしますが見間違いですかな?
「もちろん、学校側ですわ。まあ、元を糺せばわたくしどもの家から、ということにもなりますが」
んん? アニーが「よし」と握りこぶしをかためた気がしますが見間違いですかね?
「それゆえ、予算も上限は決まっております。その予算内で最上な状態に仕上げるもの、試験のうちなのです。予算を知るということは物の価格を知っているということにもなりますしね。ああ、でもあくまで予算は品物の分だけですわよ。デザイン料や仕立の費用は含まれておりませんわ。安心なさって?」
むうう。
自慢ではありませんが、このエレナさん。
物の金額などまったくこれっぽっちもわからないのです。
欲しいと言えば翌日に実物が用意されているこの環境が悪いのです。
しかも欲しいものは食べ物くらいしかなかったですし。
仕方ありません。
ここはツンドラニールの知恵袋をちょいと拝借……。
「ちなみに相談は自身がお決めになったパートナーにしかできませんので、ご注意なさいませ」
…………何ですと!?
次回もお願い致します。




