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心のまま、アニーについて語り合うのです

レニー迷走、エレナさん暴走、の回。

 わたしはレニーを連れてトイレとサロンの間の廊下に設置されているソファの所まで移動し、座るよう勧めました。


 だってやっぱりいつまでもトイレの前で話してるのも何だし、なのですよ。


 それにこの学校あちこちの廊下にソファや椅子が設置されているのです。


 最初はそんな短い距離も休憩を入れないほど皆さん体力ないのですかねー? と思ったのですが、どうやらそうではなく立ち話は美しくない、とのことらしいです。


 ご挨拶程度ならかまいませんが、カフェやサロンなどに場所を移すまでもなく少しお話がある時こーゆー所を使いましょうって言われたのですよ。後は様式美、とのこと。


 様式美って何ですかな?


 それはともかく、今はレニーのお悩み相談室なのです。


「では、どうぞ! あ、でもあんまり時間かかると皆心配してしまうので手短にお願いするのです」


 お腹壊したと思われるのも、ちょっと……なのですよ。


 乙女心は複雑なのです。


 レニーは軽く頷いた後、顔を私の方へ向けて口を開きました。


「……僕が聞きたいことは……」


 うんうん、何なのですか?


「アニー……、姉さんにとって、君が……何なのか。君をどう思っているか。どういう存在なのか……、それが聞きたい」


 レニーはずいぶんと思いつめたような声音でそう呟くように言いました。


 ……アニーにとってのわたし……?


「そんなのは、アニーに聞くべきことじゃないですか?」


 他者アニーの心のうちを知りたいと言われても、他者わたしが答えられるものではないですがな。


 希望としては、絶対無二の親友って思っていて欲しいところでありますが。


「聞けるもんならとっくに聞いてるよ!」


 しかしそのわたしの返答に、レニーが叫ぶようにそう返してきました。


 いきなりの大声に、わたしはびっくりなのです。


「だって、だって怖いじゃないか。あれは何なの。何を考えているの。何であんなに出来るの。僕の双子の姉なのに、全然姉さんの考えていることがわからない。行動も理解できない。どうしてあんなに優秀なのかも……。家のことだって、姉が男だったらって皆陰で言ってるのも知ってる。どうしてアニーはああなってしまったの。昔は誰よりも近い存在だったのに、今ではこんな……。君は、君は……、姉さんのことが怖くはないの。姉さんのこと、どう思っているの……?」


「わたしが、アニーを、ですか?」


 正直、わたしは頭の回転がよろしくはないので、レニーの言ったことは早口過ぎてよくわかりませんでしたが、最後の質問だけはわかりました。


 わたしがアニーをどう思っているか、ですね?


 これならお答えできるのですよ。


 なぜなら、答えはわたしの中にある!


 どう思っているかと問われたのなら、お話するのが当然の流れ。


 正直そのネタは最近ジェレミーやラスティからは聞き飽きたと嫌煙されてモヤモヤが溜まっていたのですこの話したい欲求が。


 ふふ、ではお答えいたしませうっっっ。


「アニー? わたしのアニーに対する思いなのですね。ふふふふふ、よくぞ聞いてくれたのです。アニーはわたしの長年待ち望んでいたヒロインなのです! パーフェクトビュリホーガール、皆の憧れ、わたしの理想の乙女、世界の絶対、それがマイヒロイン! 実際にお会いして、確信したのです! アニーこそわたしのヒロインだと! 実際にアニーは、想像していた通りのサラサラの美しい髪に、綺麗なお顔をしていたのです。近寄ると、いい匂いがしてヒロイン度倍増なのですよ。あ、あとアニーの手料理は食べたことありますか? ありますよね、弟なんだから。すっごくおいしくて毎日でも食べたくなってしまうあの癖になる味! 正直レニーの立場羨ましいのです。わたしも妹だったら毎日食べさせてもらえたのに~! と思ってしまったですよ。貴族の令嬢なのに料理も出来るなんてすばらしいのです。その部分だけでもポイント百倍追加なのですよ! 美人は正義! 可愛いは絶対! おいしいものにはかなわない! これは世界のルールなのです! それに頭も良くてびっくりなのです。何か難しいこととか言ってたですねー。わたしはよくわからんのですが、すごいのですー。でもちょっと謙虚過ぎるとも思うのです。もっとアニーはわがままになってもいいと思うのですよ。レニーは知ってますか? アニーの寮のお部屋はとっても寒々しいのです。カーティス伯爵領の自邸もあんなのだったのでしょうか。もっとアニーにあった可憐なお部屋にすればいいと思うのですよ。きっとまわりのことばかりでついつい自分のことを後回しにし過ぎているのではないかと思うのです。アニーはとっても優しくて思いやりのある女の子だから。でも大丈夫! これからはわたしがついているのです。わたしがアニーを守ってあげるのです! 自分のことを疎かにしがちなアニーの分までわたしがアニーを大事にしてあげるのです。そしてアニーに微笑んでもらうのですよ! アニーの笑顔はとろける蜜のようなのです。ふふふん、わたしはアニーの笑顔にめろめろなのです~。さすがわたしのヒロイン! アニーはわたしのとってもとっても大切な親友なのですよ。わたしはアニーが大大大大大大大大大大大っっっっっっ好き! なのです!!!」


 ふーっ。


 久々思いのたけを思いっきり吐き出せてスッキリなのです。


 わたしは心の軽やかさそのままに、にこにこしながらレニーを見ると、何故かレニーはぽかんとした顔をしてわたしを見ていました。


 おや?


 どうしたのですかね、レニー君?


次回もよろしくお願い致します。

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