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またか! なのですよ

お待たせいたしました。

 ジャー。


 コポコポコポコポ……。


 は-、スッキリスッキリ。


 トイレは我慢するものなのではないのです。


 病気になってしまうのですよ。


 ハンカチでフキフキと手を拭いながら鼻歌交じりでお手洗いを出たところ、「あのさ、ちょっといいか」と声をかけられたのです。


 振り返ると、そこにはうつむきかげんに視線を落とすレニー・カーティスの姿が。


 またか!


 人がトイレ出たところで声をかけるんじゃないのです。


 わたしはトイレに行くのを口に出すのは何とも思わないですが、トイレを待たれてるのはNGなのですよ。


 だって長いと思われても嫌だし音が漏れ聞こえてるかもと思うのも嫌なのですよ。


 いや別に長くも特段大きな音出してるわけでもないですけどね!?


 いやうむこほんっ。


 話はそれましたが、つまりはマナー違反なのですよ。


 と、抗議の意味も込めてわたしが返事もせずにキッと睨みつけると、レニーは視線を落としたまま話出しました。


 はっ。


 この抗議は相手が自分の顔を見ていなければ意味がないのです!


「ええと、あの……さっきサロンから……、じゃなくてその、僕の…、姉が……」


 レニーは何やら言いにくそうに言葉を選んでいるようです。


 が、姉という言葉に、私はピンときました。


「アニーのことですか?」


「あ、ああ、うん」


 そうですかそうなんですね。


 納得なのです。


「アニーは今サロンでわたしの兄弟やお友達と親睦を深めているのです。お誘いしなくて悪かったのです。レニーも参加したかったのですね」


「は……!?」


 うむうむ、わかるのですよ。


 弟はお姉ちゃんについてまわりたがるものなのです。


 ジェレミーもいつもそうだからよくわかっているのです。


 お姉ちゃんは大変なのですよ。


「サロンはこっちなのです。みんなにも紹介するので、ついてくるがいいですよ」


「…じゃなくて!」


「わきゃ!?」


 先導するつもりで歩き出そうとしたわたしは、いきなり後ろからレニーに袖をつかまれバランスを崩してそのまま倒れこみました。


「危ない……!」


 それを支えたのがレニーで、危うく転倒は免れました。


 が、原因を作ったのがそもそもレニーなのです。


 わたしは立腹でわたしを支えているレニーの腕の中から睨みつけました。


「それはこちらのセリフなのです! いきなり引っ張ったら危ないのですよ!」


「ご、ごめん……。これくらいで転ぶなんて思わなくて。僕は別にサロンに参加したいわけじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあって。だから本当に転ばすつもりなんか、だって姉さんなら……、姉さんなら……きっと……」


 レニーは慌てたようにそう弁解すると、また暗い顔をしてうつむいてしまいました。


 くっ、何なのですか。


 アニーと同じ顔でそんな表情、卑怯なのです!


 放っておくことなんてできないのですよ、もうっ。


「わかった、わかったのです。お話聞いてあげるのです。でもみんなが心配してしまうので手短にお願いなのです。いいですか」


 わたしのその言葉にやっと顔を上げたレニーの表情が、どこか迷子になった子供のような顔をしていたのに、わたしはそこではじめて気がついたのです。


「うん、ありがとう……」


 そう返す声も、どこか頼りげない幼さを含んだもので、わたしのお姉ちゃんハートにボッと火がつきました。


 ふっ、まったくしょうがないのです。


 迷える子羊(レニー)よ、みんな(ジェレミー&ラスティ)のお姉ちゃんであるこのエレナさんが面倒みてあげるのですよ。


 さあ、何でも相談するがいいですよ、このエレナさんに!


次回もよろしくお願い致します。

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