表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/126

お茶会再びなのです

お待たせしました。

 またまたミニサロン活用の場がきたのです!


 フィル様を皆に紹介した時に利用したお部屋アゲイン! なのです。


 さすがいいとこの坊ちゃん嬢ちゃんは違うのですよ。


 バッタリ出くわしたからそのまま立ち話でいいよね。


 お話してれば一時間二時間は軽いよね。


 井戸端会議は目と目があったその瞬間から!


 ……っという具合にはいかないのですよ。


 ただ今回は約束をしていて、というわけではないので急な申請も準備も王子のお付の人がやってくれたですよ。


 もちろん費用も王子のポケットマネーからなのです。


 王子、便利!


 まあ、発端も王子が「じゃあこんなところでも何だし、皆でお茶でもしよーか」と言い出したところからなので、当然と言えば当然ですね。


 いくつもあるカフェのどこかでもいいですが、このメンバーだとちょっとないですな。


 なまじ地位の高さと顔が整っているだけにこの目立ってこの上ない攻略対象者共と、可憐なヒロインことアニーと、迫力ある美貌の悪役令嬢顔のフィル様。


 注目してくれとその存在だけで主張されてしまってるのですよ。


 衆人環視の中のティータイムは正直勘弁なのです。


 わたしはしょせんモブに紛れるようなオーラのない特出した美貌もない、しがない出来損ないの悪役令嬢でしかないのですから。


 なんかないない尽くしですな。


 …………ふっ。


 べ、別に拗ねてなんかないのですっ。


 本当なのですよ!


 まあ、それはそれとして。


 サロンの準備も整い、お茶会の仕度も整ったようなのです。


 あ、あのお菓子、おいしそうなのです。


 さすが、王子の用意されたもの。


 王室御用達なのでしょうか。


 ……じゅるり。


 いかんです、涎が垂れてしまうのですよ。


 ぐきゅるん。


 腹の奴も催促してきやがりました。


 いかん、いかんですよ。


 最初のご挨拶、紹介が終わるまでは我慢なのですよ。


 ぐっきゅりん。ぐっるる。


 くっ。


 可愛くおねだりしたって無駄なのです。駄目なのですよ。


 っぐ!?


 ぐるるるるるるるるるるるるるる!


 駄目ったら駄目なのです駄目駄目なのですよ……!



「……様、姉様」


 っは!


「な、なんなのです? ジェレミー? ちゃんと聞いてるのですよ。お菓子になんか、気をとられてはないのです!」


「……姉様、そんなに食べたければ先に食べてもいいですよって、殿下がおっしゃって下さってますから。お言葉に甘えて頂いてください」


 はう!?


 そのジェレミーの言葉に慌てて周囲を見渡すと、笑いを堪えて悶絶しそうになってる王子、ゆっくりと頷いているニール、慈愛の籠った笑みを浮かべるフィル様、苦笑を浮かべたアニー、それと満面の笑顔のラスティが。


 ……なぜにそんなに反応違うですか。


 そんなにバラバラだと、わたしも反応返しに困るのですよ。


 しょうがないので、勧められるがままお菓子を口に入れました。


 もぐもぐもぐ。


 はう、やはりおいしいですなー。


 もぐもぐもぐもぐもぐもぐぐぐぐぐぐぐぐ………ぐっ、喉につまった!




 しばし無心に菓子を頬張ること…………どれくらいですかね?


 やっとお腹も満足したのか、わたしもお腹も落ち着きを取り戻したのです。


 ぐーっとカップの中のお茶を飲み干し、ふうっと一息。


 では。


 いくですか。


 わたしのヒロイン、アニーを皆に最高な形で紹介せねばなりません。


 となると、やはりアレしかないのです。


 わたしは立ち上がると、アニーの隣にいって横からがばりと抱きつきました。


「皆に紹介するですね。私の新しいお友達、アニー・カーティスなのです。すっごく可愛くて、とってもいい子なのですよ。こうやって抱きつくと、とってもいい匂いがしてやわらかくて最高なのです。羨ましいですか? 羨ましいでしょう? 今ならアニーのハートをゲットした先着一名にこの権利を譲ってあげるのですよ! さあさあ、我こそはと思う者が名乗りをあげるがいいですよ!」


 シーン……。


 あれ?

 

 予想と違うですよ?


 女性のフィル様は別として、我も我もと押してきてもいいはずなのに。


 だってアニーは、このゲームのヒロインなのですから。


 この沈黙は何なのです?  


 首を傾げるわたしに、アニーはそっとしがみついてるわたしの手に触れました。


「エレナ? 場を盛り上げる茶番はもう十分だから、そろそろ自己紹介に入ってもいいかしら」


 茶番?


 わたしは真剣この上ないのですが。 


 それと王子、いいかげんその腹と口を押えて無言のまま笑い転げるのやめないとどつくですよ。


 なんかイラッとくるですよ。


 そんなわたしをやんわり自分の席に座らせると、アニーはすっと立ち上がりこれぞ淑女の見本、というような礼をしてみせた。


 そして、ゆっくりとその桜のような唇から言葉を紡ぎだした。


「初めまして、皆様。わたくし、ただ今エレナ様よりご紹介に与りましたカーティス伯爵家が長女アニーと申します。弟に同年のレニーがおりますので、そちらは既にご存知でいらっしゃるかもしれません。諸事情によりこちらに参りましたのが遅れましたが、これからどうぞよろしくお願い申し上げます」


次回もお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ