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アニー・カーティス視点

大変お待たせ致しました。

 とりあえず登校初日ということなので、やることはたくさんある。


 ということで、早めに寮を出て学校へ向かったわたしは、まずは自分に教師陣に挨拶に行き、自分に与えられた棚に荷物を収めた。

 

 受ける授業の科目により教室は異なるし、普段寛いだり歓談したり、食事や軽食をとれるサロンや食堂、広間やカフェテラスには自分の席というものはない。


 全学年共有のものもあれば、学年ごとで利用を制限されているものもある。


 また、事前の確認・面談で、わたしには結構免除可な授業の課目があることがわかった。


 しかし、とりあえず一通りは授業を受けてみようと思っているのだけれど。


 だって、受けても受けなくても年に支払うべき金額は同じ。


 わたしの場合、自分のことだけではなく家の事業を担っている部分もあるから、そればかりに時間を割かれるのは痛いのだけれど、不要だからと一切合切退けるのはもったいない。


 体験してみて初めてわかる何かがあるかもしれないし。


 そこから家の事業に役立つヒントが得られるかもしれないし。


 何よりやはり、払うもの払ってるのだから、というのが一番だけれど。


 不要だと判断すれば、修了をもらって次へいけばいいし。


 というよりすべてをクリアするのは、それしか方法はない。


 通常は一つを選び知識・技術を深めていく専門課程も、可能なら出来るだけ選択し、学んで身につけていきたいと思っているし。


 だって、どれだけ受けても払う金額は同じ。


 少しの先行投資でできるだけの利益を得るのは商人の基本だもの。


 …………あらいやだ、今のわたし貴族だったわ。


 実家の経済状況が悪すぎて、試行錯誤しているうちにいまいち思考が利に走りがちになったのよね……。


 まあ、それはそれとして、最初に受けるものは、刺繍の授業、ね。


 ……つまらなそうだわ。


 さっさと課題出してこれは一度でクリアしましょう。


 それにしても刺繍が淑女の嗜みなんて、脳が退化してるのかしら。


 そんなものは専門の職人に任せた方が上手くて良いに決まってるのに。


 趣味ならいくらでもどうぞだけれど、必須課題の一つに組み込むことが摩訶不思議だわ。


 ……そうは言っても現状が変わらないならさっさとすませましょう。

 

 でも、まだ時間あるわね。どこで時間を過ごそうかしら。


 カフェでお茶でも飲みながら、実家カーティス家の事業改善案でも検討しようかしら、と考えていた時、突如「あー! 見つけたのですー!」と、淑女にはあるまじきほどの大声が響き渡った。


 そして。


「アニー! どうして先に行ってしまうのですー? 一緒に初登校したかったのですよ!」


 と少し拗ねた顔をしたエレナががしりと抱きついてきた。


「? 一緒に行く約束なんてしてたかしら?」


 本気で首を傾げると、エレナはぷうっと頬を膨らませて見上げてきた。


「むうー。約束はしてないですけど、わたしが一緒したかったんですう」


 ……これ、本当に可愛いわ。


 これが演技ならあざとすぎて唾棄したくなるのだろうけど、エレナは間違いなく素でしている。


 まるで幼児のような、小動物的な言動にはいささか将来に不安を覚えるものもあるが、本当に可愛らしいので良しとしよう。


 まあ、何かあればわたしが対処すればいいだけね。


 彼女とはきっと長い付き合いになるだろうから。


 それに。


「ところで、エレナ? 後ろの方達は?」


 そう思っているのはわたしだけではないようだし。


 びったりとエレナに抱きつかれているわたしを、表情には出さないで警戒している少年その一と、思いっきり表情に出して羨ましそうにしている少年その二。 


 実際に会うのは初めてだけれどゲームの記憶から、この二人がジェレミー・クラウンとラスティ・グランフォードであることは疑うべくもない。


 わたしはすうっと小さく息を吐くと、にっこりとほほ笑んだ。


 さあ、はじめまして、攻略対象者さん達?


 わたしが攻略するつもりはないし、この世界そのものがはすでに元のものとは根本から違ってしまってはいるけれど。


 さあ、ゲームの舞台を始めましょうか。


 その終わりを、確実にゲームのそれとは違うものにする為に。


次回もお願い致します。

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