この学校の教育事情
今回漢字過多。
この主に貴族が集まる学校は、十四歳から十八歳までの五年間在籍することになっている。
例外として、優秀な庶民の子弟や年齢を多少超えたもの、途中で学校を去るものなどはいる。
基本学生は寮生活。
ただこれも例外はあり。
学校の課程としてはまずは基礎として一般常識、知識、貴族典範、典礼等々。学問としては語学、数学、政治、経済、法学、社会学、化学、薬学、医術、歴史等々。教養については、マナー一般、音楽、美術、古美術、舞踏、刺繍などの裁縫、料理などの家政、化粧などの美容等々。また武門としては体術、剣術、護身術、馬術等々もある。
五年間ですべてを学びとろうとするには数がありすぎるし、まず無理である。
というより、すべてを学ぶ必要性はない。
一般の貴族であれば、広く浅くが推奨される。
文官を目指すのであれば学術面を、武官を目指すのであれば武術面を。
高位貴族の侍女になるのであれば、美容・家政面の強化を、商人・医官・法曹の高みに臨むつもりならその専門性の強化を。
目指すもの、望むものに対して、最適で最高の教えを受け取ることができる、これがこの学校の目的とする一つなのだから。
もう一つの大きな目的は小社交場の提供。
実際に大人となり、社交場へ踊りだす前の訓練。
契約や商談には人と人のつながりや家同士の関係は欠かせないもの。
学校とは、それを学びとるための、大切な場所なのである。
同学年限定のものや学年問わずのものなど様々な機会提供の場。お茶会やダンスパーティー。食事会や討論会。楽曲や自作品の発表会や演説会。
将来己に利となる環境・相手・状況をつくりだすため、見つけるため、出会うため、築くための場所。
それが、この学校の存在意義なのである。
また一部を除き、それぞれの課程に合否はない。
基本は参加型。場合により課題物の提出や試験などはあるが、基本その内容による落第などはない。
学校に在籍している間に、どれだけのものを学び、我が物とするかは個人の裁量に任される。
課程・授業の一部には必須項目もあるが、これにも不合格というものはない。
ただ、その教育課程を受ける必要がないと判じられれば免除される場合はある。
いわゆる修了、と言われるそれである。
代表例としては、ニール・エルハラン。
彼は、基本・専門・学問・武門、すべての分野に対し「学びを受ける必要性はなし」と判断された。
高スペックの塊であるニール・エルハランは、すでに学校に入る前にその課程をほぼすべて習得していたからである。
それは例外中の例外としても、必須項目が免除されるケースは少なくない。
そしてそれは、すでに習得済であるから、という理由とは限らない……。
「はう? わたしの刺繍の課程がすでに済になってるですよー? おかしいのですよ、まだ受けてないのですのに。貴族の令嬢は必須項目だったはずだったですよ」
「はは、嫌だな姉様。課題なら提出したじゃないか」
「はえ?」
「アニー嬢につくろうとしたアレだよ、アレ。僕がかわりに提出しておいたから」
「ふえ? でもそんなので課程修了……」
「大丈夫! 問題なく修了だよ! だから姉様はもうそれについては出席不要だからね?」
「んん? よくわからないですが、了解なのですよ! ふっ、一度の課題提出でクリアできてしまう自分の才能が恐ろしいのです……」
「おい、ジェレミー。おまえアレ……(小声)」
「黙れ、ラスティ。アレを見せて、もしも姉様の指でも落ちた日にはエルハラン家とクラウン家とグランフォード家が黙ってはいない、と正々堂々交渉しただけだ(小声)」
「そ、それを正々堂々と言うか……、ジェレミー、おまえ、何て恐ろしい奴……(小声)」
「抜かせ。姉様の無事が一番大事に決まってるだろ。そのためなら僕は何でもする(小声)」
「お、俺だって……!(小声)」
「あ、そうなのです! では早く課程が修了した記念に二人にも何かつくってあげるのですよ……!」
「「お願いだからそれだけはやめて……!」」
アニーさんの授業参加状況入れる前に、とのことで入れてみました。
最後のやり取りの所、時間軸的には前回と前々回の間くらいです。




