前世の記憶
エレナさん、やっと気がつきました。
気がついたらベッドの上で寝てました。
「はう!?」
まさかまた知らぬ間に赤ん坊に転生を!? と慌てて飛び起きると、いきおいで前につんのめりました。
「ふぎゅ!」
顔から思いっきりいきましたが、ふかふかベッドの上なので痛みはないですが。
よたよたと起き上がると、そこは知らないベッドの上でした。
すぐわきに大きな鏡があって、そこに映っているのは、エレナ・クラウン。
ちゃんと、いまのわたしです。
ちょっとほっと一安心。
ぐるりと周囲を見て見ると、そこは豪奢な造りのお部屋でした。
状況から考えるに、わたしはグランパとの対面の後、気を失ったと考えるのが妥当でしょう。
そうするとここはきっと、グランパの屋敷の一室か。
わたしはそう納得するとぽすっと枕に顔をつけ、考えを整理することにした。
まず、生まれる前のこと。
ここがゲームの世界、だとするなら、それは生れる前の、記憶のはず。
わたしは、以前誰だった?
…………ありゃ?
わたしは転生者。
それは間違いない。
だけど、わたしはいつ、どうして死んだの?
……まったく覚えてない。
わたしは、いくつで死んだの?
……まったく覚えてない。
わたしは、なにをしていた人なの? そもそも学生? 社会人?
……まったく覚えてない。
わたしは、そもそも、男だった? 女だった?
……まったく、覚えて、ない。
「役にたたんにもほどがあるわー!」
わたしはきーっと枕を放り投げた。
あれ? あれれ? 確かにわたしは転生者。
確かに記憶もあったはずですよ。
前世の記憶。
う・ま・れ・た・て・は。
はうっ!?
後回しにしてるうちに忘れてしまったですよ。
目が覚めたてに夢を覚えていても、時間がたつと忘れるのと同じ原理ですか!
たしかに、後回しにしたわたしが悪いですよ。
ええ、それは認めます。
わたしは自分の負けをきちんと認められる潔さはちゃんと持ってるですよ。
だ・け・ど。
赤子がメモとれますかい!
記憶の持続なんざ、自慢じゃないですが無理ですよ!
メモにでも残さなきゃ、無ー理ー!
赤子はいろいろ忙しいのですよ。
飲んで寝て飲んで寝て飲んで寝て、もよおして!
それが赤子の仕事なのですよ!
前世にかまってなんかられないのですよ!
はあ、はあ、……はー。
えと。
あの。
わたし。
……転生チート、で、あってますよね?
次回はゲームの記憶編、です。




