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最終話 さよならマーヤちゃん!また会う日まで その3

「右城くん、右城くん!」

「おい、根賀倉二年生!」

「根賀倉せんぱ~~~~~~~!」

 三つの声によって俺は目を覚ました。

 頭がぼんやりとして上手く思考が定まらない。ゆっくりと目を開け、心配そうに覗き込むゆにこと藪坂先輩と山田さんの顔を見つめる。

「もう、どうしたの右城くん。寝ちゃってたの?」

「まったく、二日酔いのあたしらがあちこち走り回っていたというのに暢気なものじゃないかね」

「白目向いて返事もしないし、死んじゃったんじゃないかって心配したんですよー」

 みんな口ぐちに好き勝手なことを言っている。

「ごめん、心配かけちゃったね」

 そこで俺ははっとして辺りを見回す。マーヤの姿がどこにもない。まさかあれは本当に全部ただの夢だったのか。

「マ――――――――――――――――――――ヤ――――――――――!」

 俺は不安を覚え、思わずあいつの名前を叫んでいた。

 けれど返ってくるのは静寂だけだった。

 やっぱり、あいつはもう……いででででででででで!

 絶望していた俺の頭に激痛が走った。

それはまるで内側から刃物で切り裂かれるような――

「呼ばれて飛び出てイマ―――――――――ジン! 妄想魔神のマーヤ・ラーニャちゃんのお出ましだぞー!」

 俺の頭をかち割って、マーヤが飛び出てきた。

「マーヤちゃん!」

 飛び出てきたマーヤに、一目散に抱きついたのはゆにこだった。心底心配していたようで、泣いていた。

「おおお! そんなところにいたのか!」

「よかったです~~~~!」

 藪坂先輩も山田さんも安堵の表情を浮かべている。

「もうもう! どこに行っちゃってたの! 心配したんだよ!」

「悪かったぞ、ゆにこ」

 俺はゆにこに抱きしめられて苦しんでいるマーヤに向かって親指を立てた。

「えへへ。ありがとうだぞ、ご主人様」

 マーヤもまたグッと親指を立てたのだった。


     ☆


「マーヤちゃんが戻ってきてよかったね、右城ちゃん」

 翌日の朝、左苗姉ちゃんは満面の笑顔でそう言った。

 マーヤは姉ちゃんが作ったパンケーキを口いっぱいに頬張っている。

「美味しいぞ! やっぱり左苗の作った料理は最高だぞ!」

「あらあら。そう言ってくれると作った甲斐があったわ」

「おい、いつまで食ってるんだよ。俺はもう学校に行くからな」

「待って―! マーヤもついていくぞー!」

 マーヤは俺の頭に飛び乗った。パンクズを頭に落とすんじゃないよまったく。



「みんなー! 見てくれー俺カメラ買ったんだ!」

 マーヤが戻ってきたその日に、俺はこれまで貯めていたお年玉やお小遣いをはたいて中古のカメラを買った。それを自慢するために俺は放課後、部室に訪れた。

「カメラ? なんでそんなものが必要なのかね」

 部室で漫画雑誌を読んでいる藪坂先輩は写真部としてあってはならない発言をした。

「写真部の部員として当然ですってば! 部費が下りないから仕方なく自腹を切ったんですよ」

「すごいじゃない右城くん。何を撮るの?」

「それはまあ、色々と」

 具体的に撮りたいもの、というのは考えていなかった。

 素人の俺がまず撮影するべきものといえばなんだろうか。

「それだったら、みんなで記念写真を撮るっていうのはどうでしょう?」

「それだ山田さん。ナイスアイデア!」

 俺はポンっと手を打った。

「ふむ。そういえば全員の写真を撮るっていうのはこれまでなかったことであるからな。やってみるのも悪くないだろう」

 バッと扇子を広げ、藪坂先輩は言った。

 さっそく俺たちは椅子や机を隅に避けて、場所を作っていく。そして俺は頭を叩き、あいつを呼んだ。

「おいマーヤ。寝てないで出てこいよ」

「ううう。なんだー」

 もそもそと頭から出てくるマーヤを引っ張り出し、しゃんと立たせる。

「やっぱり集合写真ならお前もいないとな」

「おお! 写真とるのかー! すごいぞご主人様!」

「ふむ。では皆の者並ぼうではないか」

「じゃあわたしはマーヤちゃんの隣がいいな~~~」

「うう。じゃあマーヤはご主人様の隣!」

 並び順の取り合いでみんなわいわい言っている。その間に俺はカメラを調節し、撮影の準備を始めた。

「むぅ。根賀倉二年生、貴君のカメラには自動撮影機能はついていないのではないか?」

「あっ、そういえばそうでした」

 古いカメラのせいでそんな便利な機能はついていない。これじゃあ誰かひとりがカメラを手に持って撮らなくてはいけなくなり、全員を写真に収めることができない。

「それならマーヤに任せるといいぞ! いふたふ・や~~~・しむしむ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」

「いででええええええええええええ!」

 マーヤはズバズバッっと俺の頭を曲刀で切り裂き、中から様々な妄想体が飛び出してきてしまった。

 一つ目の巨人や軟体生物のような魔物、鳥なのかラクダなのかわからない生物等々、めちゃくちゃなものばかり出てきた。

「この子たちに撮影してもらえばいいぞ!」

「グアアアアア」

 妄想体のサイクロプスは巨大な手でカメラをいじっている。ああ、壊すなよ。絶対壊すなよ!

「ギシャアアア!」

 早く撮影を済ませたかったのに、邪神っぽい謎の軟体動物とキメラが大ゲンカをし始めてしまった。

「きゃあ! なにこれー!」

「むう。なんかヌルヌルしておるな」

「きゃああ! 服が溶けていきますううう!」

 モンスターたちのせいで部室は大変なことになっていた。

「おいマーヤ! どうにかしろこの状況!」

「わはははは! そんなことよりもご主人様、はい、チーズ!」

 カシャ、と部室にシャッター音が響き、俺たちは慌ててピースをしたのだった。




(おわり)


これで妄想魔神マーヤちゃん!は完結です。

最後まで読んでくれた人ありがとう。

感想待ってます。

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