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第七話 注目されるお話


 月曜日


 学校で玲花と『IWO』の話をする。


「玲花はもうレベル7か。早いなー」

「はいー。ちょっと夢中になってしまって、夜中までずっとやってましたから」

「廃人レベルに片足つっこんでるな」

「いやぁ。そこまでの域にはまだまだ及びませんよぅ」

「褒めてないから」


 俺より高いな。プレイ時間的な差とはいえ、昨日あんなに狩りまくったのに、ちょっと悔しい。ささやかな見返しをするために俺は、


「なぁ、玲花のStrって今どのくらいだ?」


 と尋ねる。


「……88ですね」

「……俺の初期値にも及んでないな」

「九乃さんが異常なんですよっ! それに私はAgi重視ですけどバランスよくステータスあげてるんですから」

「まぁ、普通はそうだわな」


 怒られてしまった。

 俺がStrで勝ってもあんまり自慢にならないな。しかし、Str以外が0でも、結構戦闘できたんだがなぁ。そのことを話してみると、


「なんて非常識な……」


 とあきれられてしまった。


「リアルと同じ状態でモンスターの攻撃かわせるとか、どんだけですか」

「いや、かわすだけなら案外できるもんだぞ? まぁ、相手の攻撃のタイミングに合わせて剣振ったほうが楽なんだけどな」


 なんせ、剣速だけは他の追随を許さないほどだ。同レベル帯では、という前提だが。

 攻撃をかわせなくても迎撃ならできる。そのほうが相手にダメージもはいるし、俺のStrならまず押し負けることもない。問題点は剣の耐久値の減りがはやいことだな。昨日だけで俺の「古びた長剣」の耐久値はあと僅かとなっていた。


「……はぁ、そうですか。今日はどうします? 私は帰ったらすぐインするんで。良かったら昨日のメンバーを九乃さんに紹介したいなー、と思うんですが。あっちにももう伝えてありますし」


 昨日言ってた、玲花のVR友達か。ちょっと興味はあるな。

 ただパーティープレイか……まぁ、今日だけなら大丈夫かな。


「いいよ、こちらからお願いしたいくらいだ。約束とかしてるのか?」

「はい。今日も一緒にやろうって……今日は九乃さんとも一緒に狩れますよ! 人数もこれで丁度6人なんで、パーティー組みましょう!」


 ああ。そういえば攻撃力うんぬんで昨日は別れたんだっけ。


「そうだな、よろしく頼む。……狩り場は西か東?」

「はい、どっちかのつもりですね。……あ、そういえば昨日、西の狩り場のモンスターを根絶やしにする勢いで狩ってたプレイヤーがいるそうなんですけど、もしかして?」


 ……根絶やし、か。

 流石にそこまではいってない……はず。


「あー、多分俺だな。なんか話題になってる?」

「やっぱりですかぁ。掲示板で『黒装束のプレイヤーが西で凄いことやってる』って話題になってましたよ。私がそれ聞いたのは九乃さんがログアウトした後でしたけど」

「さいですか」


 昨日は初心者、というかほとんどのプレイヤーは南、逆にβ版のプレイヤーは北に集中していたみたいで、西はプレイヤーがほとんどいなかったから、目撃者も少ないであろうことが救いだな。黒装束ってだけじゃ特定はされない……といいなぁ。

 

「じゃあそういう訳で九乃さんも帰ったらすぐインしてくださいよ~? 集合場所は、「花鳥風月」ってマップで検索してみてください」

「りょーかい」


「花鳥風月」……ギルドの名前か? 玲花はギルドにはいったのかな?



―――



「んっ、と。ログイン完了ー」 


 チュートリアルもなく、実にスムーズに「リネン」の街にログインした俺。あの噴水広場だ。

 玲花の方が家が近いから、もうログインしてるはずだ。早速メニューからマップを呼び出し、「花鳥風月」と入力。


ギルド「花鳥風月」 ギルドホーム


 お、でたでた。やっぱギルドの名前だったな。場所は広場の北東方面の大通りを少しいったところ(「リネン」は広場が街の中心で、そこから八方にむかって大通りがのびている。結構大きな街だ)か。俺は早速移動を開始した。


 歩いていると、「黒装束……」「あいつが例の……」「本物か……?」等、プレイヤーの奇異の目にさらされた。あちゃー、やっぱ服装だけでもアウトっぽいな。さっさと防具変えようかな?

 しかし、ひそひそと話しているだけで近寄ってはこない。まぁ、その方が好都合……


「ちょっといいか?」


 体格のいい、焦げ茶色の髪を短く刈ったの男に声をかけられた。ありゃ。


「はい、なんですか?」

「あー。俺はオルトスっつうプレイヤーなんだが、お前さん、ひょっとして昨日噂になってた西のプレイヤーか?」


 どうこたえるべきか。俺が答えるのをためらっていると、オルトスさんは構わず話を続ける。


「もしそうなら、ちょっと俺達とパーティーを組んでみねぇか? これでも一応はβテスターなんでな。足手まといにはならねぇはずだよ。丁度火力がもう一人欲しかったんだが、どうだ?」


 オルトスさんの後ろでは、パーティーメンバーと思われる、眼鏡の男、癖っ毛の少女、長髪の女の人、快活そうな少年がうなずいている。オルトスさんと合わせて5人……最初から狙ってきてた?


「あー。確かにそれは俺です」

「おお! やっぱりか! じゃあ、」

「でも、これから少し用事があるんで、パーティーを組むのは無理ですね。すいません」


 軽く頭を下げる。まぁ、用事がなくても無理なんだが。


「それに俺はまだレベル5なんで。皆さんとパーティーを組めるレベルじゃないですよ」


 向こうはβテスターだ。むしろこっちが足手まといになるのは目に見えている。


「おいおい冗談だろ。西の適正レベルは5~8あたりだぜ? レベル5でさくさく狩れる場所じゃないはずなんだが。お前さん、βテスターか?……いや、それでも無理があるだろ」

「まぁ、そこら辺は、機密事項的なね?」


 秘密にする理由は特にないんだけど。

 なんとなく言ってみただけだ。


「むぅ、そうか、すまねぇな。根ほり聞くのはマナー違反だった」


 おお。なんかオルトスさん良い人っぽい!素直に謝罪してくれるなんて……同じβテスターでも昨日の馬鹿金髪とは大違いだな。


「それじゃ、せめて俺とフレンド登録でもしないか?無理強いはしねぇが、俺はこれでもβテスターでもそこそこ名が知れてんだ。損はないと思うぞ?」


 そういってニッカリと笑うオルトスさん。


「そうなんですか? では、是非」


 名が知れてるうんぬんは割とどうでもいいが、オルトスさんはなかなか気のいい人みたいだし。まだフレイ以外のフレンドがいない俺的には大歓迎だ。


 オルトスとフレンドになりました


「じゃあな、クノ! 困った時はよんでくれい!」

「はい、有難うございます。では」


 そういって、オルトスさん達は北門の方へと歩いていった。

 俺も早く「花鳥風月」に行かないと、っと。


「おい、あいつやっぱ昨日の……」「すげぇ、オルトスさんとフレンド……」「オルトスってあの……」


 まわりが一層騒がしくなった気がする……俺は早足でその場を立ち去った。




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