第四十一話 荒野でのお話③
第閑話 掲示板のお話
の後に、新しく一話追加しました
「某さんの極振り体験」
面倒なことしてすみません……
追記:タグ作って頂いたので、活動報告の方からとんで頂けたらと思います
「はぁあっ!!」
「せいっ!!」
「遅い、遅いですよぉぉおお!!」
ザシュザシュザシュ!
フレイが元気に飛び回りながら、モンスターを殲滅していく。
いちいち弱点部位をついてる辺り、凄いよなぁ。
アーツの挙動を把握しきって、その上で全ての攻撃が弱点に当たるように動きを調整してるってんだから脱帽もんだ。ようやるわなぁ。
そしてそんなフレイの活躍を見ている俺はというと。
バテていた。完全に。
だって、フレイとかが元気いっぱいに動き回るからその都度狩り場を変更しなきゃだし、そうなると当然俺のスタミナは減っていく訳で、ね。シャトルランをやってる所を想像してもらえると、分かりやすいかもしれない。開始20分で、俺はもう限界だよ。
おかしい。最初の二回の戦闘以外では動かずに、ナイフ投げの砲台と化しているというのに、何故こんなに疲れるのか。
フレンドリィファイア(仲間に攻撃を当てること。このゲームではダメージは無いし、武器が刺さったりもしないが、衝撃はしっかりと受ける)を気にしながらだから、余計精神が疲れるってのもあるだろうが。俺のStrで投げたナイフの衝撃とか、馬鹿に出来ないし。
後衛のプレイヤーを、改めて凄ぇと思った瞬間である。
俺としては一か所にとどまって湧きを待ってる方が楽なんだが。
もしくはもうちょいゆっくり狩りをしたい。
しかし皆はそうではないようで、元気にフィールドを駆けまわり、連戦している。戦闘よりも移動で疲れるとか一体誰得のゲームだよおい……いや主に俺のせいなんだけどさぁ……
「はぁ、はぁ、疲れた……」
「だらしがないわね、クノ」
いつも以上にはりきっているというフレイによって、活躍の場が少ないエリザが、座り込んでいる俺の隣にしゃがむ。
おい、他の皆は一応臨戦態勢だぞ? いくら格下だからって戦闘中に油断すんなよ。
ということを言おうと思ったが、自分の状況を鑑みてやめておいた。
お前が言うな、と怒られること請け合いだからな。
「仕方ないだろー。Str極振りだぞ? スタミナなんかお察しだよ」
「自業自得なのよ」
「分かってる。分かってるからつっこまないでくれい。やっぱパーティー狩りはきついなぁ」
「普通は逆なのだけどね」
まぁな。MMORPGでパーティーよりソロの方が“楽”とかよっぽどだぞ。
「一か所に留まるということができんのかね!?」
「なんでちょっと逆ギレしてるのよ……モンスターを引き寄せたり、湧きを早くしたりするアクセサリが無いことも無いのだけど」
「まじで? じゃあ其れ使おうよー」
その方が楽にモンスター倒せそうなもんだけどなぁ。
「でもデメリットが、ね」
「どんな?」
「モンスターが強化されるのよ。攻撃力と防御力が割と桁違いに。そのくせ経験値は変わらないものだから、それを使うくらいならフィールドを駆けまわった方が良いってわけ。一か所にとどまるよりも動きまわったほうが楽しめる、という意見もあるわね」
「成程な」
んー、でも俺的にはモンスターと戦えればそれはそれで満足なんだが。別に動きまわらなくても……
強いモンスターが来ても、逆に燃えるだろ。
「エリザ、そのアクセサリ後で貸してくれないか? ソロの時使ってみたい」
「え? それはいいけど……というか私達が持ってても使うことはなさそうだから、使ってくれるのならあげるけれども……本当に使うのかしら?」
「うん、寄ってくるモンスターが強くなるだけだろ?」
「それが問題だと思うのだけど」
「大丈夫だって。……多分俺の攻撃力的に言うと、その辺のモンスターが強化されようと結果は変わらないだろうし」
「……あぁ、それもそうね」
納得していただけたようでなによりです。
「じゃあギルドに帰った時に渡すわね」
「よろしく頼む」
「頼まれてあげるわ」
と、そんな和やかな会話を、フレイの奮闘する声をBGMに行う……お、終わったか。
双剣をしゃらん、と鞘におさめたフレイが、こちらに駆け寄ってくる。
「どうですかクノさんー! 今日の私はいつもより120%増しで、キレキレなのですよ!」
「おー、そりゃ凄いな。格好よかったぞー」
よしよし
フレイが頭をだしてきたので、よっこらせ、と立ち上がって撫でてやる。
本格的に犬か何かかよ。
「格好良かったですか。格好良い……んー、なんか違う気がしますが、まぁ良しとします」
「しっかし凄いな、フレイは。よくあんな高速で動き回ってて目ぇ回さないもんだ」
「ふふーん。まぁ、慣れですよ、慣れ。スキルの方にもアシスト的機能がついてるみたいですけどね」
「そうなのか。いやそれにしたってあの動きはどうなんだ……?」
慣性の法則ガン無視で、目にも止まらぬ速さで敵の後ろを取ってたぞ。
普通あんなに速く小回りきかねぇよな。
「複雑軌道は、私がステップ系スキルを使い込んだ結果ですね~。感覚的に、こういうことが当たり前にできるようになったんですよ。まぁゲームの中ですしね」
「まぁ、ざっくりまとめちゃうとなんでもそれで片付いてしまう気もするけどな」
「それも本質ですよ」
まぁ、なんでも有りと言えば、ゲーム的に言うと俺の方が酷いからな。
現実世界に照らしあわせるとフレイの動きの方が、よりおかしいことになってるんだが、ゲームという枠組みからみると途端に俺が異端な感じになる不思議。
まぁ、ゲームの中では物理法則よりも大多数のプレイヤーの使うスキルの方が常識となってるからな。
大勢に入れない、というか意図して入らない俺は“変人”なんてよばれる訳だ。
それは別に、いいんだけどねー。少なくとも、俺にとっては平々凡々よりかは上等だ。
「ってかクノさん、なんで座り込んでたんですか? 調子悪いですか?」
「単にバテてただけだよ。高速狩り、パーティープレイは俺には向いてないことが改めて判明しました」
「おや、やはりステータス的にスタミナが持たないのかい?」
「おー、カリンさん正解。その通りだよ。極振りにはきついぜ……ところで、今日はいつまで続けるんだ?」
時刻は21時を回った所。
中学生はそろそろ返さないとなんじゃないかね?
「おっと、そうだね。そろそろ終わりにしようか」
「んー、あたしもそろそろ眠いよ~」
ふわぁ、と小さく欠伸をするリッカ。
確かに、心なし身体がふらふらしているな。
「リッカは健康優良児だな。ノエルは?」
「わたしは結構夜型ですので、残念ながらあまり」
「へぇ、ノエルが夜型とか意外……名前的に考えると妥当なのかな」
「名前は関係ないと思うわよ?」
「まぁ、言ってみただけだ。深い意味はないからスル―しなさい」
真面目な顔して突っ込まないでほしい。なんか恥ずかしいから。
「じゃあ、今日は帰ろうか。「帰巣符」を使うよ」
俺も「便利ポーチ改」から無駄に思考発現できるようにセットしてある「帰巣符」を実体化させる。
「あれ? なんでクノさんが持ってんですか?」
「え? ギルドに帰るんだろ?」
「いやそうですけど……一定範囲内に居れば、同じギルドの仲間は一つの「帰巣符」でギルドに帰れますよ?」
「まじか」
「帰巣符」にそんな機能があったなんて……
そういえば、カリン以外誰も持ってないもんな……俺はそそくさと、“戻れ”と「帰巣符」の実体化を解く。
「クノ君……知らなかったんだね」
「残念ながらな。まぁ、ここで知れたから良かったと思っておくよ。じゃ、やっちゃってくれ」
「了解だよ。では……」
カリンが「帰巣符」を掲げると同時に、白い光があふれる。
「っと、到着だね」
そして次の瞬間には俺達は「ロビアス」に有るギルドホームに帰って来ていたのだった。
パーティー戦の描写、ひたすら主人公はナイフを投げるだけでした。パーティーを組むと、どうしても前衛はなぁ……
ナイフ投げの威力は、一般近接プレイヤーの一撃と同等(一本で)
逆に考えると、ボスのHPバーを一撃で一本削り切るクノ君でも其れですから、普通の人が使っても投擲は地雷すぎますね。状態異常付与や、近接系プレイヤーが魔法系プレイヤーの詠唱を妨害したりするのが主な目的となってます。