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第百三十二話 第五のボスのお話②

 なんのことはない。

 回避もせずにただこちらに突っ込んでくるだけの目標など、位置と速度さえ把握しておけばあとはナイフでまるっと解決だ。


『……ナン、ダト……ハハハ、ナルホド。

 面白イナ貴様……コレハ、最初ニ神ノ試練ヲ受ケル名誉ハ、貴様ノモノニナルカモシレン、ナッ』


 カッとメルティールの全身から光が発せられる。

 その光量に思わず目をつぶってしまうが、【危機把握】で状況は確認できていた。


『サウザンド・レーザーシャワー』


 細い、銀のレーザーだ。先ほどの剣とは比べ物にならない程の数の、銀の光条。

 一瞬把握しきれなかった……。まさか、本当に名前通り千本撃っているとはな。


 一本一本は鋭い針を思わせる銀の光が、千本。花弁が開くように、大きく曲線を描きながら俺に向かって放たれたそれは、すわ弾幕ゲーかと思うほどの密度だ。一瞬にして、青空が塗りつぶされる。


 しかも、やっぱりホーミング性能付きとか。速度が遅く、相殺が出来るのがせめてもの救いか。

 到達時間の差を考えて……ちっ、割とギリギリだな。……仕方ない。


「【覚悟の凶撃】――――【斬駆】!」


 複数の赤黒の刃が伸びて、大気を撫でる。

 二十一本複撃統合、50%【斬駆】だ。更に、【覚悟の凶撃】のおまけつき。天を突かんばかりに振り上げられた長大な刃は、緩やかに迫る銀のレーザーを纏めて吹き飛ばし、そしてその対象――――メルティールへと、一気に肉薄した。


『ッ!? 馬鹿ナ、ナンダソノ攻撃ハ!?』


 はっきりと狼狽の声を上げる機械天使。


 流石に、この状況下でこんな攻撃が飛んでくるとは思っていなかったらしい。

 レーザーを放った姿勢のまま、二十一本の刃に身体を切り裂かれるメルティール。大きく回り込んでいて【斬駆】から逃れたレーザーも、途端に霧散する。


 メルティールの反応が、消えた。


 結構、呆気なかったな。

 そんな感想を抱いた、その時。


 ゾワ――――!


【危機把握】に膨大な量の死のイメージが注ぎ込まれ、メルティールの反応が復活した。

 位置は俺の真後ろ、手に持った剣で今にも俺を突き刺そうとしている。


 ……なるほど、【死返し】に似た感じのカウンターか。威力はかなり高め、ひねりもなにもない突きだが、その分シンプルに強力だ。

 しかし、短時間での連続発動は出来ないらしく、使用後は隙が多くなる……と。


 ふむ。

 一瞬でここまでの情報を読み取る。

 俺は皮一枚ほどにまで迫って来ていた剣に向かってタイミングを計り――――


「【死返し】」


 図らずもカウンター合戦になってしまったが、咄嗟に対処できる手段がこれくらいだったのだ。情報だけあっても、回避とか無理だし。ていうか回避不可攻撃なんつー属性がついてるし。

 しかし、かといって【不屈の執念】なんかを頼る前に、まずは強化された感覚でもって行う超高精度(・・・・)の迎撃手段を持ち出すべき……そうだろう?


 ふっと視界が暗転すると同時に、俺の身体は一瞬にしてメルティールの背後に転移していた。

 ……おお、一瞬自分の反応が消えた。瞬間移動をするとマップ上に存在しなくなるのか。


 そんなことを考えている間にも、俺の剣はメルティールに反応を許さない速度で迫る。


「くっはははは、残念だったなメルティール」


「――――!?」


 先ほどの奴の攻撃の速度など、Str極振りの俺からしたら遅い遅い。鍛え上げられた筋力値によって、俺の攻撃速度はゲーム内最高峰を自負している。

 背中がら空き隙だらけのメルティールが、俺の攻撃を避けられる訳もないってね。……まあ、俺の【死返し】にも回避不能――つまり、相手を強制的に硬直状態にするなんていう属性がついている訳だが。初めて知ったわ。


 さて、と。


 ズブリ。ザクザクザクザクザク――――


 赤黒の瘴気を纏った黒剣が、機械天使の装甲を容易く貫く。そしてその瞬間、まるで爆発したかのようにメルティールの中から無数の赤い槍が飛び出してきた。


『カハッ!?』


 ……ふむ。カウンター発動の様子は無し。他のアクションを起こす様子も、無しっと。

 メルティールのHPバーが、一瞬で黒に染まる。無駄に三本もあったくせに、呆気ないもんだな。これ一撃で落ちるとか、かなり脆いボスだったらしい。


 赤い針鼠にされたメルティールは、HPバーが消滅しても光の粒子に還元されず、崩れ落ちた。

 はじけ飛んだ大量の金属パーツとともに、コロシアムの地面に倒れ伏す。ガシャーン、という大きな音が、広い闘技場内に虚しく響き渡った。同時に、下敷きになった赤い槍がボキボキと折れて赤い粒子として散っていく。


『――――ハ、ハハハ、ハハハ――――、合格、ダ』


 頭の部分を地面にめり込ませたまま、錆付いた声で告げるメルティール。意外と重かったんだな、なんて場違いなことを考える。

 何が合格なのかとか、さっぱり分からないし。


 そしてその疑問を解決することなく。

 メルティールは目的は達したとばかりに、赤い粒子となって空に昇っていくのだった。


 ……うーん。

 そういえば、このゲームってシナリオ的な部分とか有るんだろうか。試練がどうとか合格がなんたらとか、どう考えてもなんかのイベントフラグだ。


 しかし、いままで一切触れてこなかったけど、どうにかなってるんだよなぁ……

 まあ、いっか。必要になったらその時はその時だろう。とりあえず今のところは、第五のボス撃破を喜ぼう。


「っし!」


 一つ頷き、俺はコロシアムの中央に生成された光の扉へと足を進めるのだった。


 ……ちなみにボスの初撃破ボーナスは、勿論紅砕の霊薬をもらいました。





 ―――




【『IWO』攻略wiki】

【第五の街】

【ボス――『メルティール』】


 機械の身体を持つ、人工の天使。

 その正体は"人を司りし神"『アルドミット』の従僕であり、かつての人間が作り出し、神に献上したもの。この『メルティール』に勝てなければ人間は『アルドミット』の課す試練を受けることができず、"己の限界を超えた先にある力"を手にすることは叶わない。

 この"力"に関しては様々な考察があるが、これまでの情報を統合すると『スキル枠が増える』ことは確定。更に、なんらかの特殊スキルが入手できるのではないかという説が有力。(増えた枠埋めんのかよオイ。)


『メルティール』『アルドミット』についての主な情報は、第五の街北フィールド『忘却の機神殿』(G6)の壁画に触れるとホログラム出現。他、『ホーサ』『グレンデン』および『忘却の機神殿』参照。


 弱点部位:頭

 弱点属性:全属性(頭にのみ)

 対抗属性:風・光(頭には弱点として入る模様)


 攻撃パターン:

 基本的に隙が多く、技を出す際には長時間の硬直がある。が、だからといって舐めてかかると後述の『死のカウンター』の餌食となるので注意。


 遠距離からの範囲攻撃を多用してくる嫌な敵。後衛の防御手段も考えておかなければならないだろう。弱点部位が高い位置にあるので、後衛を死守して精密ホーミング付き属性魔法で一気に決めたい。弓手が居れば、属性矢で狙撃するのも有効だろう。ちなみにHPは少なめ・かつ攻撃手段が物理属性のみなので、ガチガチに固めた前衛だけで神風特攻というのも、ワンチャン……ないか。


『エターナル・ゼロ』

 開幕に必ずぶっ放してくる極太ビーム。威力は極小だが防御透過・相殺無効でなぜか物理属性(刺)。被弾した場合、"自身のステータスのうちランダムで一つが0になる"付加効果のついた凶悪な技。Min値で対抗可能だが、元々0のステータスが対象になることは無いようなので、効果が発揮されれば戦力減少必至。隙も最大級だがパーティー人数分きっちり飛んでくる。さらに強力なホーミング性能が付いていて、避けるのは至難の業。威力は無いに等しいため、Agiに寄っている軽戦士でも無い限り被弾は割り切ろう……とも言えないのが悩みどころだ。

 確実な対抗手段もあり、【光属性魔法】の派性である【神聖属性魔法】の『アブソリュートレジスト』をかけてやれば被弾しても効果を受けない。ただしこの魔法が出現するのは【神聖属性魔法】Lv5からなので、達成しうるのは高レベルの専業ヒーラーくらいか。

 パーティーにヒーラーがいなければ、自分のMin値を信じて祈るしかない。


『ブレード・ダンス』

 10から50もの剣を出現させ、高速回転させながらこちらに放ってくる。威力はかなり高めだが、防御透過も相殺無効もないので、対処は比較的容易。ただし、50本出現すると軽く地獄を見る。


『ブレード・サイクロン』

 上記『ブレード・ダンス』の派性技? 剣を一点集中で放ってくる。対象に取られると、クリーンヒットでほぼ確実に死ぬ(特に後衛)ので死ぬ気で避けよう。よほど防御に自信があるのなら、受け切ってもいいかもしれないが……オススメはしない。ノックバック的な意味でも。


『アンチマジック・フィールド』

 うざい。ひたすらウザい。30秒間、フィールド全域で魔法使用不可。ただし属性矢等は問題無く使える。


『レイン・エッジ』

 頭上から無数の剣が降り注ぐ。その数は推定100固定だが、ぶっちゃけ威力低いし狙い甘いしでなんとかなる。


『サウザンド・レーザーシャワー』

『エターナル・ゼロ』に続く鬼畜技。物理属性(刺)。弾幕ゲーを彷彿とさせる勢いで銀のレーザーが掃射される。速度は遅いがいかんせん数が多い。メルティールの視界内に余すところなく弾幕が降り注ぐので、可能なら前衛は背後を取りたい所。一発の威力は低いが、全体に向けた『ブレード・サイクロン』だと考えよう。死ねる。これの相殺のため、規模の大きな魔法を用意するのが定石となるだろう。できるなら【火焔属性魔法】が望ましい。ちなみに、強ホーミング付き(にっこり)


『デス・ミサイル』

 使用はHP30%から。滅多に使用しないが、狙われたら諦めろ。絶対不可避のミサイルが対象1に飛んでくる。

 あり得ないくらいのホーミング性能を持ち、地面にぶつかろうが仲間が切りつけようがびくともせず、絶対に対象を逃がさない。『アンチホーミング』の魔法も無効化される。どないせいっちゅうねん。

 対処法としては、蘇生石でも持っていけとしか言えない。


『死のカウンター』

 メルティールが技を使っている最中に攻撃すると、確率で起こる。

 その攻撃のダメージが無効化され、攻撃したプレイヤーの背後に瞬間移動してブスリとやってくる。回避不可。(……ぶっちゃけ某魔王様のアレの劣化版じゃねとか言ってはいけない)

 その威力は絶大の一言で、『デス・ミサイル』程ではないが割と死ねる。このため、大技中のメルティールを狙うには常にリスクが付きまとうことを覚えておくといいだろう。ちなみに、魔法で攻撃しても発動する。

 なお、HPが全損する攻撃に対しては高確率で発動する模様。蘇生石を持っていなかった場合、ラストアタッカーは絶望することになる。

 ただ、一度発動するとその後は無防備に勝ち誇ってくる&そこから30秒間は『死のカウンター』が使えないので、あえてこの技が発動するまでガチガチに固めた前衛で殴って、発動後総攻撃がオススメ。


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