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第百二十五話 サバイバル後のお話②

 残りポイントは44999、あとはなんだ、スキルでも見てみるか。

 というか、最初にそこから見るべきだったか? 迂闊だったな。妖怪いちたりないが居なければ(ポイント的に)即死だった……ありがとう、いちたりない。


 良いのが無ければMPポーションでも貰っておこう。

 もしかしたら、霊薬もあるかもしれないな。リッカの言葉が現実になるかもしれない。


 スキル……スキル……

 そういえば、『千怨神樹』の第二形態の速さは異常だったよなぁ。

 偶々勘があたって対応出来たから良いようなものの、最悪一瞬で殺されていたかもしれないのだ。

 やはり【危機察知】にばかり頼ってはいけないというのは分かってはいるが、しかしそれでもゲーム内で現実のような気配察知をやれるかと言われたら難しい訳で。


 できれば敵の動きを鈍らせるようなスキルか、感知能力を強化するスキルが欲しいところだ。これは地味に、ミカエルを意識してのことだったりもするが。あいつなんだかんだいって、将来的には『千怨神樹』の速さの域まで到達しそうなんだよな。そうなった時に【危機察知】じゃ対応しきれないし、それで負けるのはなんか悔しい。


 と、いうことで。

 こんなん見つけてみました。



【シックスセンス】PS

 感知系スキル・魔法を1つ選び、効果を強化する



【危機察知】で反応できないなら、それを強化すればいいじゃない。という単純な思考。

 強化の方向性が分からない以上若干の賭け要素はあるんだが、まぁ無いよりはマシだろう。正直このスキルがなければ『スキル上位変化チケット』を使おうかと思っていた所だしな。


「交換っと」


『スキルリングβ』で作ったスキル枠を、早速埋めにかかる俺。

 てか、イベントのたびにこんなことしてる気がするな……

【シックスセンス】の必要ポイントは、2万。残りのポイントは24999か……


 どうするかなぁ。

 良さげなものを交換しようとすると、あと一個が限界だろう。

 スキルはもう枠がないから意味ないし、アクセサリにするか? 確かまだ一つ装備枠が余ってたはずだし。


 ええと……『スキルリングα』という、アクセサリの装備枠を消費するが(というかそれが当たり前)スキル枠を+1できるやつが22500ポイントであったはずだ。丁度、『スキルリングβ』の半分のポイントだな。下位互換なんだろう。

 よし、それにしておこうか。スキル枠は有って困るものではない。


「えーと……スキルリング……と。交換」


 でもって、残りのポイントで中級MPポーションを補充しておく。


「ま、こんなところか」


 ウインドウを閉じ、しばしベッドの上で目を瞑る。

 今回のイベントでは、かなりの戦力強化ができたな。レベルも、最終的には76まであがった。

 これなら第五のボスにも挑めそうだが……


「あ、そうそう」


『スキル上位変化チケット』、使っておこう。

 俺の持っているスキルで上位変化してないのは……

【覚悟の一撃】【狂蝕の烈攻】【危機察知】【投擲】【斬駆】【バーストエッジ】【死返し】か。


 この中で一番上位変化の芽がなさそうなのは……【狂蝕の烈攻】か【覚悟の一撃】かな。

 かなり初期から、しかも毎戦闘ごとに使っているというのに、一向に変化しないし。


 ただ、【狂蝕の烈攻】を上位変化させるとなると特殊効果の方はどうなるんだろうか。更にバージョンアップされるのか、はたまた効果が消えてしまうのか。……このゲーム的に言うと、バージョンアップの方だとは思うんだけどな。


 しかし特殊効果の相手であるスキルは、【捨て身】→【賭身の猛攻】という上位変化を経験しているので、このスキルにも素で上位変化があるんじゃないか、とは想像してたんだよなぁ。なんとなく、勘だけど……いままでまっっったく音沙汰なしだけど。

 どんだけ条件厳しいんだろう。俺の読みが外れたのだけかもしれないけど。


 では対して、【覚悟の一撃】が変化したらどうなるのだろうか。単純に攻撃力の増加率は大きそうだけどな……初撃限定で。

 しかし、それもロマンか? 雑魚戦では最初の一撃は攻撃力を生かせないこともままあるんだが……むしろ俺の戦闘スタイルの場合、ボス戦での初撃の方が重要だしな。ぶっちゃけ雑魚はどうとでもなる。


 こう、ボスを【斬駆】と併用して一撃でズバーっと。この先ボスも強くなってくるだろうけど、マドリーデムの惨劇を再び、みたいな。

 やはり火力特化にしている以上、一撃必殺は目指すハイエンドだよな……


 うむ。うーん……うん。

 よし、決定。


 俺は『スキル上位変化チケット』を使う。


 所持スキルの中でどのスキルを強化するかと問われたので、

 迷わず【覚悟の一撃】を選択した。


 すると次の瞬間には、聞きなれた電子音が流れる。

 スキルが上位変化したのだ。逸る気持ちをおさえて、変化後のスキルをみてみると……



【覚悟の凶撃】AS/PS


 Str/Int上昇+150%

 戦闘中、1回まで発動可能

 効果時間:発動後最初の攻撃まで


 戦闘中に自身のHPが1より多い場合、強制的に1にする

 この効果でHPが減少した場合、その戦闘中は自身の"ダメージ無効化"系スキル・魔法・アイテム無効


 なんか見慣れない表記だが、アクティブスキルとパッシブスキルを兼ねているらしい。


 しかしそれにしても……Strが従来より50%アップ! 

 はは、圧倒的じゃないか……流石はピーキースキルの代表格。上昇幅が半端じゃなかった。

 それに追加されたデメリット(?)のPS部分の"戦闘中に自身のHPが1より多い場合、強制的に1にする"という効果だって、俺からしたら全くもってメリットでしかないし。


 【神樹の癒し】で復活した場合、HPは100%の状態になるんだよな。それを速攻でHP1まで戻してくれる親切っぷりまで兼ね備えているとは……行き届いてるなぁ、まったく。素晴らしい。

 ちなみにダメージ無効化スキルどうこうという記述があるが、【不屈の執念】や【死返し】はこの隙間をすり抜けられるだろう。

 前者は"HP1で耐える"スキルだし、後者はそもそも攻撃自体を無効化……つまり攻撃によって起こりえること全てを無効化するので、ダメージがそもそも発生しないからだ。これ、地味に状態異常攻撃とかに便利だなって思ったり。


 俺は結果に満足して、ウインドウを掻き消し……


「と。そうだ」


 ついでに【シックスセンス】の方の選択もしておかないとな。『スキル上位変化チケット』と手順は同じだ。今度は一つしかない選択肢をポチっと選んで……さぁ、どうなったか。

 と、取得スキル一覧を見てみて気付く。


「あれ?」


【危機察知】が無くなって、代わりに【危機把握】というスキルが追加されていた。

 強化されて、名前まで変わってしまったらしい。地味に混乱するから、こういうのこそ『ポーン』とお知らせして欲しいんだがなぁ……まぁいいや。

 新・【危機察知】こと【危機把握】の効果はというと、こんな感じだった。



【危機把握】PS


 自身のHPが0になる威力の攻撃のみ、位置・軌道・規模・到達時間が察知できる

 自身のHPが30%以下の場合、自身の周囲の空間に対する感知能力が強化される

 ※強化の程度、強化される範囲には個人差有り



 でました、※印。これは現実のスペックによってどうしようもない部分が出てくるよー、という意味だと認識しているが。

 俺の場合は……まぁ、空間把握は得意な方だし、そこまでしょぼい効果に留まることも無い……はずだ。しょぼかったらそれはそれで、鍛えればいい話だしな、うん。

 効果発動の前提条件は、例によって問題無し。そういうスキルを選んでるからっていうのもあるんだけどな。


 これで、攻撃以外の相手の行動や、罠なんかも察知できるようになれば嬉しいんだが。さて、どうなることか。

 とりあえずそれを確かめるためにも……実戦、行っときますか。

 今度こそウインドウを消した俺は、勢いよくベッドから飛び起き、ギルドの一階へと降りるのだった。


 ちなみに、余談だが。

 一階に降りてみると、エリザがギルド倉庫にある大量の『ヘル』モード素材を発見したようで、呆れたやら嬉しいやらと、複雑な表情をしていたとか。そして他のメンバーは、死んだ目をしていたとかいないとか。





 ―――





 2月6日、日曜日、同日。


 場所は移動して、『グレンデン』の北フィールド。門から少し出た辺り。

 適正レベルは72~75なので、今の俺(Lv76)のちょっと下だな。今まで適正レベルより上のモンスターばっかり狩っていただけに、弱い者いじめ……もとい、雑魚狩りは新鮮だな。うん。


 とりあえずエリザには、『エクスカリバー』×10と『異次元の冠』『便利ポーチ』を渡して、『黒百合』も『黒蓮』も全て預けてきた。

 代わりに貰ったのは、『黒百合・代』という見た目はほぼそのままに能力値が大幅にダウンした服と、いつも通り『黒剣』というシンプルな名前の剣×30本だった。

 30本も受け取ったのは、今の俺のMPなら『偽腕』を14本出せるためだ。更に【多従の偽腕】で、扱える『偽腕』の数は28本に増え、そして俺が直接持つ2本と合わせて30本という訳だな。


 インベントリが広いと便利だなぁ、としみじみする。

 ちなみに、『黒剣』×30を持った状態でも『茨の黒手』は入れることができた。つまり、装備制限に引っ掛かっていない。どうやら"武器"は"装備"としてカウントされないような状態になったらしいな。……なんかどんどん、意味の分からない方向へ向かっている気がする。今更だが。


「さて、それじゃあ……」


 まずは、【危機把握】の設定を変更。

 といっても、【危機察知】と同じように視覚情報をOFFにしただけだが。


 ……んー。

 やはり、HPが満タンの状態では特に変わったところは見られないか。

 ちょっと集中して辺りに気を配ってみるが、なんの気配も感じられない。やはりHP30%以下場合でないと、強化の恩恵は分からないようだな。

 とりあえず、戦闘をしてみるか。「【多従の偽腕】」と小さく呟き、周囲に『偽腕』を14本展開する。連れて歩けるって、本当に便利だなぁ。


 ところで。

 今この『グレンデン』の北フィールドには、俺以外にプレイヤーの姿は無い。もはやこのボッチ状態がデフォルトになっている気がするのは、気のせいなんだろうか……

 どうやらあのイベントで急激にレベルが上がったのは、俺が特殊だったらしい。トップギルドである『花鳥風月』のメンバーでさえ、ギルドで他の皆のレベルを聞いてみると最高がカリンの72レベル。北フィールドの適正にギリギリ引っかかると言う感じだった。


 イベント中は、普段よりもモンスターが強くて、逆にレベル上げはあまりはかどらなかったらしい。フレイは俺のレベルを聞くと、


「え……? み、三日で11レベルも上げたのですか? あの『ヘル』モードで?」


 と引きつった顔をし、カリンに至っては


「そ、そんな……唯一勝っていたレベルでさえも追い抜かれるだなんて……

 あんまりだ。あんまりだよぉクノくぅん……」


 と涙目になっている有様だった。

 最初の姉御キャラの威厳は欠片も無い。主に俺のせいで。

 なんか可哀そうなのでエリザに、『ヘル』モードの素材を使って皆に装備を作ってやってくれとお願いしたところ、カリンには凄い複雑そうな顔で見られたな。別にギルマスだからって、ギルドで一番にならなきゃいけない訳でもないと思うんだけど。それに俺はほら、ちょっと特殊だしさ。


 ちなみに俺の剣や魔王ルックも同じく強化するんだが、『クノの分は少し遅れるわね』と言われた。どうやら戦力的に、俺の装備の強化は後回しになったらしい。まぁ、その分じっくり作れると嬉しそうにしていたエリザを見れば、俺から言うことは何もないんだが。


 ただ、便利ポーチの改造だけは今日中に終わらせてくれるようだ。『生産職の血が騒ぐわ……!』などと言っていたのだが、一体どうやって改造してるんだろうか。まぁこちらも、エリザが楽しそうだったので言うことは無い。


 ところでアクセサリ類は? と聞くとこれ以上は強化出来ないらしい。『黒百合・縛』も『黒妖希石のペンダント』も、効果はStr上昇+15%。これ以上の効果を望もうとすると、強化ではなく新規作り直しになる。武器や防具と、アクセサリとではまた扱いが微妙に異なるのだ。……というようなことを、『黒妖希石のペンダント』をちらちらと見ながら言ったエリザ。

 その胸元には、『黒妖希石のペンダント』とお揃いのデザインの、俺が贈ったペンダントが輝いていて――俺が新しいアクセサリを力強く辞退したのは、言うまでもないだろう。

 新しく作っても、+15%を超えられるかどうかは微妙と言われたのも一因だが。それでもちょっと嬉しそうに笑うエリザを見て、俺は心がほっこりとした。


 ふむ、まぁつまり。

 総じてエリザが喜んでくれていたので、今回のイベントは大成功だったという話だな! 




イベントでのクノの強化結果。局長もびっくりの戦果。


◇上位変化&取得したスキル


【長剣強化(中)】→【長剣強化(大)】PS

 武器「長剣」のStr上昇+30%

 武器耐久値の減少率を1/3にする


【武器制限無効化】→【武器制限無効化(真)】PS

 武器制限を無効化する

 武器の所持数制限を無効化する

 武器アーツ使用不可


【異形の偽腕】→【多従の偽腕】AS

 『腕』が増える

 『腕』の発生起点を自身の半径15m以内で動かせる

 発動時に増やした『腕』の数まで、スキル発動中に新しく『腕』を増やせる

 効果時間:任意

 ※操作は個人によって適正有り


【覚悟の一撃】→【覚悟の凶撃】AS/PS

 Str/Int上昇+150%

 発動後、自身のHPを1にする

 戦闘中、1回まで発動可能

 効果時間:発動後最初の攻撃まで


 戦闘中に自身のHPが1より多い場合、強制的に1にする

 この効果でHPが減少した場合、その戦闘中は自身の"ダメージ無効化"系スキル・魔法・アイテム無効


【シックスセンス】PS

 感知系スキル・魔法を1つ選び、効果を強化する


【危機把握】PS

 自身のHPが0になる威力の攻撃のみ、位置・軌道・規模・到達時間が察知できる

 自身のHPが30%以下の場合、自身の周囲の空間に対する感知能力が強化される

 ※強化の程度、強化される範囲には個人差有り


◇イベント中に取得した称号


〝偽腕の行使者〟

【異形の偽腕】及びその上位変化スキルの消費MP減少-25%

『腕』の発生起点を自身の半径5m以内で動かせる


"神樹を救いし者"

 HP/MPポーションの効果上昇

 固有スキル【神樹の癒し】


【神樹の癒し】PS

 自身のHPが0になった場合、戦闘中に1回のみ残存HP100%の状態で"復活"する

 この効果が発動した戦闘で"死に戻り"を行った場合、強制的にレベルが3つ下がる


〝玉兎の加護(筋力)〟

 基礎Str上昇+7%


◇その他


アイテムインベントリ枠+30

便利ポーチへのアイテム登録枠+50

『エクスカリバー』(良質な武器素材)ゲット

運営が血涙を流す

掲示板がランキングを見て阿鼻叫喚の地獄絵図


◇ステータス


クノ Lv76


HP:1600

MP:4337


Str:2737

Vit:0

Int:0

Min:0

Agi:0

Dex:0


ちなみに、最終的に『ヘル』モードで最後まで生き残ったのはクノのみでした。

ミカエル、フィーア、オルトス、ヤタガラス等のトッププレイヤー陣も二日目の夜に、疲労がたまっていた所を襲われ壊滅。仕方ないね。夜の魔物は強いものね。『ヘル』モードでは眠るなんていう概念は通用しなかった模様。最初の広場も、開始から一時間経った時点で森に呑みこまれて消滅する鬼仕様でした。


次は閑話。

他のヘルモード参加者の様子と掲示板ネタで一話ずつになる予定


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