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第百九話 特訓開始のお話

とりあえず、週一は守ろう。

VRに復帰。10話分空いたので、いろいろ忘れている人のために。


クノの現在レベル:46

Str:1778(通常570程度)

主な装備等:

『黒蓮壱式~拾式(長剣×10)』

『黒百合(魔王風衣装、バサバサする)』

『《邪具》茨の黒手(最終兵器)』

『《呪具》誘香の腕輪(モンスターホイホイ)』

『投げナイフ(大量所持)』

主なスキル:

【覚悟の一撃(HP1に)】

【不屈の執念(残機1)】

【異形の偽腕(腕が出る、現在五本まで可能)】

【斬駆(消費MPにより剣が伸びる、最大50m程度)】

【バーストエッジ(爆発)】

【死返し(カウンター、これから練習)】

【惨劇の茜攻(特殊効果、血色の瘴気、触れ続けると継続ダメージ)】

主な称号:

〝非情の断頭者(ダメ1.5倍)〟

〝機械仕掛けの精密攻撃(複撃統合により、複数の剣から【斬駆】可能)〟

〝ベルセルク(Str上昇、基礎Str増加)〟

〝耳栓の加護(爆音耐性)〟


 さて、つい先日めでたく新年となり、今日は3日の月曜日、お昼頃。

 思い返せば年明け早々、中々濃かったな……ていうか好きな子といきなりお泊まりですよ。

 なにやってんだかね、俺は。自分をグッジョブと誉めたたえたい反面、急に彼女を異性として意識してしまったために、節操のないことをしたもんだという後ろめたい気持ちもあるにはある。

 ……まぁ、7:3くらいだけど。エリザと過ごせて嬉しい方が優ってるに決まってる。

 しかし、玲花に俺の気持ちを悟られていたというのは素直に驚きだよな。

 普段はぼけっとしてる奴だけど、あれでやっぱり高性能なんだな、と再確認した……のはいいんだけど。

『応援します!』なんて言われたけど、玲花の応援かぁ……なんか、心配だなぁ。

 うん、やっぱあいつに頭いいキャラは似合いそうに無い。


 と、そんな俺の内心はどうでもいいか。

 今日は2日ぶりに『IWO』にログインするのだ。お正月イベントとかもあった(というか現在進行形らしい)が、例によって戦闘系ではないらしいのでパスして、主に特訓をしていこうと思う。

 なんの? それは勿論、手に入れたばかりの新スキル……【死返し】の特訓である。

 メイドさんにも、よく分からんが『頑張って』とか言われたしな。年の瀬に、『新年になったら頑張る』なんてことも言った気がするし、これはもうやるしかないだろう。

 第四のボスは、その後かな。まずは習得したスキルを使いこなさねばお話にならない。


 このスキルの説明文は、こんなんだ。


【死返し】AS


 相手攻撃を無効化し、

 その予測ダメージ分威力を上乗せした攻撃を自動で仕掛ける

 自身のHPが0となる相手攻撃にのみ発動成功

 相手攻撃が当たる直前のみ発動受付

 このスキルの発動が失敗した場合、自身のHPは0となる

 戦闘中、1回まで発動可能

 効果時間:自動攻撃終了まで


 さて、これの何が難儀な所かというと、”このスキルの発動が失敗した場合、自身のHPは0となる”、この一文に尽きるのだ。

 つまり、【死返し】をマスターするには、途方もない数の死に戻りをしなくてはいけないのだろう、ということを思うとやはり憂鬱になって来る。

 といっても、デスペナがどうこうとかじゃなくて、単純に中央広場と狩り場の往復が面倒なだけなんだが。ちなみにデスペナは特訓の妨げにはならない。

 20分間、獲得経験値と全ステータス減少-50%、これがデスペナの内容だからな。

 ガチで狩りに行くのならともかく、死んで死んで死にまくるだけのお仕事だし。


 ……よし、じゃあそろそろ、行くか。

 俺はヘッドギアを被り、ベッドに横たわる。

 それじゃ……VR、スタート。




 ―――




「おはよー」

「……おはよう? なのかしら。もうすぐ1時になるのだけど」

「さっき起きたからな。俺の感覚的には合ってる」

「随分と怠惰なことね……」


 ギルドの一階に降りて、いつも通りにエリザと軽口を叩きあう。

 ……うん、いつも通りだ。良かった、普通にできてる。

 やっぱりこの心地いい関係が一番な気もするな。逃げかもしれないけど。


「しかし、他の皆はやっぱり狩りに行ってるのか……最近、留守番多くないか?」

「あら、そんなこともないわよ? ついこの間も狩りにいって、可哀そうな人に会ったわ」

「なにそれ」


 可哀そうな人……?


「……いえ、なんでもないわ。気にしないで頂戴。

 まぁとにかく、別に私はいつも留守番をしている訳じゃなくて、ましてやクノのために工房から出てきてたりもしないのだからねっ」


 無表情でそんなことをいうエリザ。

 なにこの露骨な台詞。突っ込んで欲しいのか? 反応に困るんだが。


「…………。どうかしら、ツンデレ風に言ってみたのだけれど」

「え? あ、うん。いいんじゃないか? 可愛かった」

「……そう。なら、良かったわ」


 咄嗟に口を突いて出た言葉に、無表情から存外赤くなるエリザ。頬に手を当てて、そっぽを向く。

 いや、自分で振っといてそれはねぇよ……。エリザって、自爆癖あるよな。

 これを褒められ慣れてないととるか、それとも……って感じなんだけど。

 感情だけで言えば、できればやっぱり後者がいいなー。


「ん、んん」

「はっ」


 呆けたエリザを見ているのも良かったのだが、俺は特訓に行かねばならないのだ。

 この程度の罠に嵌っているわけにはいかない。

 軽く咳払いをして、彼女を現実に戻す。


「じゃあエリザ、俺もフィールドに、死にに行ってくる」

「……何しに行ってくるですって?」

「っと、間違えた。狩りにいってくるな」

「いえ、今確かに『死にに行く』なんていう物騒な言葉が聞こえた気がするのだけど」

「……戦いは常に死と隣り合わせなものなんだよ」

「そういう深いことが言いたかったのかしら!?」

「ん……まぁ、うん。そんな感じ」

「なにかしらその曖昧な返事は……はぁ。

 まぁいいわ、所詮は仮想現実だとは分かっているけど……それでも、痛覚が完全に無い訳ではないのだし、あんまり無茶したら駄目よ?」

「善処しよう」


 主に、死ぬ回数を減らす方向で。

 痛覚うんぬんとかいっても、あんまり意識しないんだけどなぁ。ちょっとチクっとするとかその程度だし。

 しかしエリザの心配そうな顔を見ていると、思わず特訓自体を放棄しそうになるが、我慢だ俺。

 この程度のハニートラップに引っ掛かっていては先が無いぞ。


 ……。


 よし、オッケー。


「じゃ、行ってきます」

「……ええ。いってらっしゃい」


 最後まで少し心配そうな顔は崩さずに、エリザは小さく手を振ってくれた。

 ふっ。これで今日一日の気力は満たされたな……って、あれ。

 なんていうか、俺ってこんなにちょろかったっけな……




 ―――




 第四の街『ホーサ』の北フィールド。

 敵レベル57~60のせいで、やはりまだプレイヤーは居ないようだ。こりゃあ、絶好の特訓場だな。

 入口から少し進んだ所で『誘香の腕輪』を起動させて、しばらく待つ。

 すると周囲から、わらわらとモンスターが集まって来た。


「こんなに数いらないよな……タイミングも合わせ辛いだろうし、レイレイで回った方が良かったか」


 と、後悔しても時既に遅し。

 襲いかかって来るのは、毛むくじゃらの鬼やアリクイモドキ、鎧を着た鳥人間やでっかい蜂共だ。

 とりあえず、


「ふぅ……」


【異形の偽腕】や【惨劇の茜攻】等のスキルは今回は封印だ。

 思考操作で『黒蓮』を一本だけ取り出し、最近は切っていた【危機察知】の視覚情報をオンにする。

 すると、


「うおっ!?」


 その瞬間、灰色に染め切られる視界。

 右を見ても左を見ても上を見ても、全面がモノクロカラーだ。

【覚悟の一撃】でHPを1にしていなくても、モンスターの一撃はいともあっさりと俺のHPを全損させるらしい。

 ……しかし、こうも一色に染まってると視覚情報意味ねぇじゃん……

 まさか【危機察知】にこんな穴があったとはね。すぐさま元の感覚のみに戻して、モンスターを迎え撃つ俺。


 が、しかし。

 やっぱり余計な手間を掛けてしまったせいだろうか。

 と言うか、灰色の視界に驚いたせいだろう。


 ギャギャギャッ!


「【死返し】……っと、ぉ」


 ズブリ、と鳥人間の突きだした剣が、俺の胸に刺さる。

 剣を降ろして、モンスターの攻撃に合わせて【死返し】を発動した俺だったが……

 やはり、一発成功なんてなかったみたいだ……な……


 そして、

 ゴッ、と身体を内部から揺さぶられたような衝撃を受ける。


 見てみると、俺の全身から、赤い槍のようなものが皮膚を突き破って出現していた。更に力が抜けていき、思わず膝を突いてしまう。

 明確な痛みは無いが、なんとも言えない気持ち悪さが主張する。

 まるで皮膚の裏側が、ドクンドクンと脈打っているような。体中を掻きむしりたくなるような感覚だ。

 思わず手を虚空に伸ばし、気持ち悪さに耐えるために中途半端な鉤状に握る。


 ……演出えげつな……

 これを何回も味わわなくちゃいけないとか、まじ、か……


 スキル発動失敗により、大量のモンスターに囲まれながら【不屈の執念】も発動せずにHPを0にされる俺。身体が光の粒子になっていくのを見て、少しだけホッとした。やっとこの気持ちの悪い演出から解放される。


 と、まぁ。


 記念すべき初チャレンジは、当然のように失敗に終わったのだった。


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