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第閑話 決勝戦・実況のお話+α

同日中に二話目の投稿です。

前話を読んでいない方はそちらからどうぞ。


いつにも増して内容が小説の体をなしていないですが、これ本当は前話のあとがきに入れる予定だったんですよ……


『――開幕早々! クノさんから繰り出されるのは、常軌を逸した量のナイフの弾幕です! あれは……一体どうなっているんですかパトロアさん!?』

『プ、プレイヤースキル……です? ……あの精度で「偽腕」を操れるなんて、本当に人外の域ではありますが』

『うわぁ、気が触れそうなほどの赤黒です……せめてあのエフェクト色だけでもなんとかなりません?』

『無・理! です。クノさんに対してあのエフェクト色は、かなり優先度の上位にありますから……あの【斬駆】だって元は白のはずなんですよ?』

『うわえげつない』


 ・・・


『――っと! オルトスさんがあの弾幕を抜けましたよ!?』

『流石は最強、と言ったところでしょうか。そこに痺れる憧れる!』

『いやしかし、どんな手を使えばアレをほぼ無傷で抜けられるのか、もう意味分かんないんですが!?』

『それは……うーん、流石にわたしの口から教えるのは無理ですね。ただ、凄く希少な手段を使っているとだけ』

『ほお……やはり頂点は格が違うということですか……』

『そうですね。彼の言っていた通り、出血も出血、大出血ですが』

『何か代償が凄いんですか?』

『まあ、そんな感じです』


 ・・・


『――!! 遂に両者、激突! 勢いも乗って武器もデカいオルトスさんの方に、やはり分があるか? いやしかし、クノさんには六本の剣が……』

『うわ。一本で受けて微動だにしてませんよ……あっ! 弾き返した!?』

『な、何が起きたんです!? あの、パトロアさん。何かの魔法としか思えない光景が広がっているんですが、クノさんって魔法使えましたっけ?』

『物理攻撃が主体だとは思いますし、アレは魔法じゃなくて単なる筋力です』

『…………魔王様パネェ!! マジパネェ!!』

『ロキシ君、カムバーック! ……まあ、どんなステータスだと突っ込みたい気持ちは本当によく分かりますが』


 ・・・


『――クノさんによる、悪魔の爪のような【斬駆】が発動! 凄いですね……いっぺんにあんなに出せるんですか』

『――あれは……! 複撃統合による【斬駆】!? どんだけ熟練させたんですかクノさん!?』

『? パトロアさん、それはなんですか?』

『えーとですね……。まず本来なら【斬駆】は、一撃にしか作用しないスキルなので、いくら武器が沢山あってもそこから同時に発生するということはないんです。……ないんですが、例外もあってですね。複撃統合を極めに極めると、今のクノさんみたいなことができちゃう訳です』

『複撃統合……? ああ、複合相殺のことですか』

『複撃統合の方が正式名称ですので、この機会に覚えてください』

『なるほど、了解です』

『ちなみにクノさんの域は、最低でもレベル100を超えてから一握りの狂人が辿り着けるかどうかのところ……だと思ってたんですけどね』

『マジか』


 ・・・


『――でたーー! オルトスさんの代名詞が一つ、【シールドインパクト】だぁああ!!』

『彼が最強を冠する盾たる所以ですね。攻防一体となったこのスキルには、隙というものがまるでありません。これには流石のクノさんも……」

『っと? 今一瞬、クノさんの剣が盾の上を滑りましたか? ……速過ぎて良く見えなかっ――って、爆発!?』

『カリンさんとの対戦の最後でも使った、赤黒の爆炎を発生させるスキルですね。これを上手く使って、どうやら回避手段にしているようです』

『ほぉ、なるほどー』

『こちらも攻防一体と呼ぶのにふさわしいです。しかしまさか【バーストエッジ】でプレイヤーが吹き飛ぶような威力がでるなんて……あり得ないですよ……』

『? 本来はどのようなものなんですか? パトロアさん』

『ええ、あの爆発は破砕属性となっていまして、爆発の起点となった武器にも破砕属性が追加されるんですよ。それに追加で、爆発自体でもダメージを少々与えられるといったところでしょうか』

『少々? あんな人を丸呑みにできそうな爆炎を持ってして、少々なんですか?』

『いえ、クノさんの規模があり得ないだけです』

『……ですよねー』


 ・・・


『――オルトスさんの切り札とも言うべき攻撃スキル、【アースブレイク】! 同レベル帯であっても下手なモンスターなら一撃で屠るというその脅威の大破壊は、彼をただ防御一辺倒のプレイヤーではなくしていますね』

『これにはクノさんも堪らず爆風を起こし、高速で逃げ切ります。……あの移動方法、凄い負荷がかかってるはずなんですけどね……彼のVit値から見ても、普通なら平然と戦闘続行とか無理ですよ?』

『まあそこはもう……あまり気にすることではないんでしょうね』

『ですね……そしてそれに追いすがるオルトスさん! 対するクノさんは……前方に爆風を噴き上げ、無理やり方向転換!?』

『うわ……現実でやったら身体がねじ切れてそうです』

『いくら痛みが少ないとはいえ、これは……どういう神経してるんでしょう、本当』

『そして両者、交錯! ――ッ! これは……』

『成程、敢えて近づいて大威力の攻撃で隙を作り……最初に展開した「偽腕」まで戻る作戦ですか』

『な、なんですか今の攻撃は!? 爆発じゃなくて、炎の槍・・・!?』

『……む。ふむふむ……。移動系のスキルは持っていなかったはずですし、操作は「偽腕」辺りで慣れたのでしょうね。まあアレが制御できれば大抵のことはできますか』

『? どういう意味ですか?』

『先の槍は、【バーストエッジ】の応用なんです。爆発の形状を操作して、あの形に無理やり押し込めたのですね』

『そんなこと、できるんですか?』

『まあ、理論上は【ステップ】で自分の行きたい方向を指定出来れば、それと同じような感じでいけるはずです。……実際は同じ方向指定といっても、難易度に雲泥の差がありますが』

『うわぁ』


 ・・・


『――パトロアさん。なんですか、今の爆発。一瞬でオルトスさんが土煙に呑まれて、闘技場が揺れた気がしたんですが』

『はい、ええと。クノさんは今まで、あれでも【バーストエッジ】の威力を抑えていたようですね……そして今回は、小さめの球状にエネルギーを閉じ込めて、最大威力でぶっ放したと、そういうことでしょう』

『威力があり得ない気がするんですけど!? なんですかあのチートの化物!?』

『いえ。派手に見えますが、実際には今の爆発は精々クノさんの斬撃一回分もないくらいの威力です。元々爆発自体の攻撃性能は低いですからね』

『つまり?』

『化物です』


 ・・・


『――そして未だ土煙の舞う中、容赦なく追撃を加えるクノさん。……うわぁ』

『彼の本気度が如実に表わされていますね。……ドン引きです』

『煙を切り裂きながら投げられるナイフ……オルトスさんは、まだ動かない!』

『……ドン引きです』

『アンタそれ言いたいだけだろ。ア○サちゃん舐めんな』

『おおっと、ここでオルトスさんが立ち上がり、クノさんに突進を仕掛けたー! これは彼のアーツ「ブロークチャージ」だー!』

『おい』


 ・・・


『――おおっと!? オルトスさん、またしても回避行動! 追うクノさん、逃げるオルトスさん! ……先ほど身体を覆っていた燐光が途切れてから、オルトスさんが一気に防戦展開になりましたね』

『そうですね……魔王のしぶとさが、彼の切り札を打ち負かしたということでしょう。正直長期戦になればオルトスさんが有利だと思っていたんですが、クノさんは軽々とわたし達の予想を裏切ってくれますね』

『――――! パトロアさん! ここで両者、最大威力の攻撃を放つようです! オルトスさんは自身を防御で固め、地を割る鉄槌、【アースブレイカー】を発動! クノさんは塗り固めた魔血の斬撃、【斬駆】だ! しかも、六本!』

『これで決める、ということでしょうか。噴き上がる橙の衝撃波と、禍々しく煌めく極大の斬撃が接近し――』


『――噴き上がる衝撃波が、斬撃をすり抜け・・・・、クノさんに届くッ!』


『【アースブレイカー】最大の特徴は、その衝撃波が相殺無効の性質を持っている点です。いくら攻撃されようと、全てを透過して目標に届く無情の衝撃』

『しかしそれによって、クノさんの【斬駆】もオルトスさんに迫り――』


 ――パリィィン――



『吹き飛ばされ、地を転がる両者! 防御姿勢を取ったオルトスさんですが、魔王による極大威力の斬撃を前にしてはやはり分が悪かったのでしょうか!?

 そしてそのHPバーが今! 絶望を示す黒に……変わりました……!!』

『対するクノさんは……HPが、残っています』


『……【不屈の執念】……

 耐えた。あの攻撃を、しのぎ切った……』


『……と、いうことは』

『ええ、勝敗が決しました……』



『……』

『……』



『トーナメント本選決勝試合。それを制し、見事優勝の栄光を勝ち取ったのは……』






『「壊尽の魔王」――――クノさんですッ!!』




 ―――




「クノ君、優勝かぁ」


「ふおぉぉぉおおおおお!! やったぁああああ!! クノさんが優勝ですよぉおおおおお!!」


「あの、フレイ? ちょっと落ち着いてさ、周りの視線が」


「きゃぁああああ!! 優勝ですって! クノが優勝ですって! きゃぁああああ!」


「あの、エリザ? 君もちょっと落ち着いて、」


「おおぉぉぉおお!! すっげーー!! クノくん優勝じゃんかー!! まじすっげーー!!」


「……ああ、もう……恥ずかしいです……」

「……同意だよ、ノエル。……ということでむしろ私達も、一緒になって喜びを表現するというのは、」


「……どこが”ということで”、なんでしょうか。どうしてそんなうずうずしてるんでしょうか」


「クノくーーん!! さいっこうだよ君ぃいいい!!」

「……」

「……ノエル。女にはやらねばならない時があると思わないかい?」


「「「じー」」」

「……な、なんでしょう皆さん、その視線は」

「「「「じーーー」」」」


「あ、あうぅ……」

「「「「……さん、はい」」」」

「ぃ、ぃやったぁぁー……って、なんですかこの流れ!」


「あー、羞恥に悶えるノエルちゃんがかわええですー」

「可愛いわね」

「可愛いね」

「なんでこのゲーム、スクショないんだろー……」


「やめてください! み、みないでぇー!」




 ―――




 ~トーナメント敗者・試合後~


『護光の勇者』ミカエル&『戦乙女』フィーア


「フィーアちゃーん! ごめん、負けちゃった……」

「んー、まあ相手が相手だし、仕方ないんじゃないの?」

「でも、僕は最強を目指しているのに……折角それを成し遂げるチャンスが巡って来たのに力不足だなんて、情けなくてさ……」

「アンタさぁ……はぁ。そんなに落ち込まないの。アタシは確かに強い男の人が好きだけどさ、だからといってそれだけでも困るのよ」

「……どういうこと?」

「例えばオルトスさん。強いけど、顔がタイプじゃない。精悍すぎるのよね……あまりワイルドすぎるのは頂けないわ」

「へぇー」

「例えばクノさん。強いし、顔も良いけど、無表情じゃない? アタシ、何考えてるのか分からない人って、信用できないからさ。恋愛対象としては見れない訳よ」

「なるほど」

「そ、そう考えるとよ? その点アンタ、顔だけは無駄にキラキラしてるし、思った事すぐに表情に出るし……だからその、なんだ。あんまり強さにこだわって落ち込まなくてもいいってことよ!」

「……わ、わかったよフィーアちゃん! 僕、もっと強くなって見せるからね!」

「……。いや、人の話聞いてた!?」



『氷刃』カリン


「カリンさ~ん! 試合、お疲れ様でした! クノさん相手にあそこまでやれるなんて、ホント尊敬します!」

「いやぁ、うん。結局負けちゃったけどね」

「それでも凄いですよ! 見ましたか最後のクノさん。なんとなく楽しそうな雰囲気してましたし……カリンさんのやられ方はアレでしたけど」

「アレとか言わないでくれるかい? ちょ、ちょっと夢にでそうだから。というか思い出しただけでも泣きそう」

「そ、そんなに? でもお腹を貫かれて、更に強引に振り落とされればそりゃあそうかしら……でも、結局あの爆発は、なんだったの?」

「ああー、確かに気になりますね~」

「新スキルってところだな。ちょっと前に取った奴」

「あ、クノさん。お疲れ様ですー」

「おう、ありがとォッ!? あの、カリンさん。どうしていきなり殴りかかって来るのでしょう」

「……むー。ク、クノ君の馬鹿! なんだい最後のアレは! 滅茶苦茶怖かったんだぞ! その前だって『偽腕』に座ったりナイフの代わりに剣投げたりなんだよあれー……私そんなの聞いてないぞぉ……」

「聞いてないって言われてもなぁ……って待て、泣くか。泣くほどか」

「な、ないてないもん! ないてないもん!」

「たっぷり涙溜めながら言う台詞かそれ……エリザー。なんでこの人幼児化してるの? 俺分かんない」

「最後のクノのアレがいろんな意味で衝撃的だったみたいね。責任もって元に戻しなさい」

「さいですか……あー、ごめんなー。怖かったな―。もう大丈夫だからなー。よしよし」

「うぅ……ないてないもん」

「そうだなー」


「……いいなー、カリンさん」

「フレイちゃんもどてっ腹に大穴空けてみるー?」

「…………………。遠慮しときます」

「そんな考えることですかフレイさん!?」



『堅牢不落』オルトス


「皆、ただいま。すまんな、負けちまった」

「はははー、流石オルトス、僕の期待をうぅらぎぃらなぁい! これで賭け金は僕の総取りだぜ、ヒャッハァー!」

「くっ……わたくしも義理でオルトスさんに賭けるのはやめておけば良かったですわ……本当はクノが勝つと思ってましたのに」

「まあでも、自分とこのリーダー推さないのもヒドイ話ッスけどね」

「頑張って霊薬集めしたのになー。がっかりだよなー」

「そうですね、流石の私も失望の色を隠せません。……勝てると、思ったのですがね」

「うっ……皆、本当に申し訳ない」

「いえ、私の見通しが甘かったせいもありますので。リーダー一人の責任ではありません。また力を蓄え、リベンジを致しましょう」

「そうだな……ありがとな、ニノン」

「しかし残念。私は五歳も年上の男性に髪を撫でられることを喜びとしませんので。早急に手をどけてください」

「その割に顔が赤いですわよー、ニノンさん」

「闘技場の熱気のせいでしょう。ええ」

「……そ、そうだよな……。ごめんなニノン……俺なんかにそんなことされてもさ……」

「あー、リーダーが落ち込んだー」

「ホント女性関係では打たれ弱いッスねこの人……」


「ヒャッハー! 有難うオルトス! 敗北万歳! 今日は良い日だぜー!!」

「「「「お前はちょっと黙れ」」」」



『蒼藍者』ミスターブルー&『綺霊の巫女』コトノハ


「へーいカノジョ! コトノハちゃんよね? 噂はかねがね聞いとったけど、ほんまロリロリしくて可愛らしいなぁ! オレと茶―しばかへん? なぁ、なぁ!」

「……近づくな変態死ね」

「ああ、罵倒さえも心地ええわぁ……無表情毒舌ロリ巫女さいっこうやで……ぐへへへ」

「……GMコール」

「あ、待て! ちょっと待って! 流石にそれは洒落にならへんというか、」


 シュンッ


『プレイヤーネーム:ミスターブルー 判定:イエロー 

 変態行動は控えてください ペナルティが欲しいですか?』


「ジャ、ジャッジ様……すんません」

『謝罪を要求している訳ではありません 罰を受ける覚悟があるかと尋ねています』

「あなたのペナルティは本当に無理です。すんませんもうしません許して下さい」

『よろしい 強く反省をしてくださるのであれば、私はこれで ……次はないものと思って下さいね』


 シュンッ


「…………っはぁ……。ああ、心臓に悪。ジャボックがボコボコにされとったからな……オレもああはならんように今度からは気ぃつけてナンパしよ。

 ……ってぇことでコトノハちゃん! お話の続き……あ、おらんわ」





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