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九 願いと想い

注意


この話には暴力シーン及びグロテスクな表現が含まれております

 美奈はうずくまる琴葉の髪をつかみ奥の部屋に引きずっていく。

 『さぁて、まず逃げられないようにと』

 そう言うと鉈の背で左脚を激しく何度も叩きだすと、

 『……ッ!アァァァーー!』

 叫び声をあげ美奈を突き飛ばした。

 琴葉は叩かれた脚を押さえて嗚咽を洩らしていた。美奈はキョトンとした表情で見つめ、

 『……その手、邪魔だなぁ』

 そう呟くとバッグからハンマーと五寸釘を取り出し琴葉の手を釘で壁に打ち付けだした。

 『イヤァァァァァァァァァァ!! ヤメテ! お願いヤメテェェ!』

 琴葉は涙を流し必死に懇願するが美奈は気にせず次々と打ち付けていく。両手を完全に打ち付け終えるとクスクスと笑いだし、

 『まるで虫みたい』

 両手には何本もの釘が刺さっており、僅かに動かすだけでも激痛が走る。

 『さぁて、もう逃げられないけど……』

 そう言ってハンマーを持ち、右脚に向けて激しく激しく叩き始めた。一回叩く毎に琴葉は悲鳴をあげていたが、ふと反応がなくなっていることに気がつく。琴葉は僅かに震えており、小さく嗚咽を洩らすだけであった。

 美奈はため息をつき、見下ろしていると玄関の開閉音が聞こえた。

 『まだ続くからちょっと待ってて』

 そう言って美奈は立て掛けてあった鉈を持って入ってきた人を出迎えに行く。

 『ん? あなッ……』

 そこに居たのは中年の女性。美奈に声をかけ終えるよりも早く、首を鉈で切り裂いた。その一瞬で女性はその場に倒れ、部屋中を血で汚した。

 美奈は死体を部屋の隅にかたずけて、琴葉の元に戻った。

 『おまたせ。じゃぁ続けよっか』

 そう言い手に持っていた鉈を、先程背で叩いていた左脚に向けて今度は刃を勢いよく降り下ろし、今度は叩き切り始めた。一度振るたびに周りに血が飛び散るが、琴葉はろくに反応せず何かを呟いていた。美奈は断片的にしか聞こえず『おかしい』とか『助けて』とだけ聞き取れた。

 左脚を切り落としてなお反応しなかった琴葉を見て左脚を持ってつまらなそうに呟く。

 『もういいや。死んじゃえ』

 そう言うと左脚を床に放って、

 『あ……』

 何かに気づき再び玄関に向かった。

 琴葉は何か大きな物が床に落ちる音を聞き、自らの未来が既に閉ざされているものと理解した。

 『失敗したな~』

 全身を朱に染めた美奈が戻ってくると、琴葉はただブツブツと同じ言葉を呟いていた。

 『……助……けて、この……地獄から…………誰か……』

 その言葉を聞くと美奈は突然表情が変わり完全に無表情になった。

 『何言ってんの? こんなの終わりが解ってるから全然大したことないじゃん。地獄なんかじゃないよ』

 静かに、しかし怒気をはらめて続ける。

 『さっさと助かる希望を捨てればいいんだよ。もう殺すって決めてるんだから』

 声が少しずつ震えだした。

 『本当の地獄は終わりなんて分からない! こんな少しの時間なんて全然大したことない! 死ぬか助かるかも分からないから諦めることもできない!』

 いつの間にか美奈は涙を流しながら話していた。

 『シュウちゃんがいたから耐えられた。シュウちゃんは何時でも側にいてくれる。』

 手に持つ鉈をしっかりと握り直した。

 『だから! 悪い奴はみんなみんな殺して絶対に守る! シュウちゃんを守るんだぁぁーーーー!!』

 横薙ぎに振り抜いた鉈は琴葉の腹を切り裂きその中身を吐き出させる。

 『あ……ああ……イヤ…………死にたく……ない』

 琴葉は目の前で起きた惨状を正しく理解しきれなかった。それをただ見続け怯えるだけだ。

 その間に美奈はハンマーと木の杭を手に持っていた。

 『死ん……じゃえ』 杭を胸に当て、ハンマーで叩き、打ち込んだ。

 『ガッ!! カフッ…………』

 最期に血と息を吐き出しそのまま動かなくなった。

 動かなくなった琴葉を見て、洗面所に美奈は走る。

 『ウグッ……ゲェ……』

 そこで胃の中の物を吐き出しそのままうずくまり、

 『ウ……ヒグッ……ウァァァ……アアァァァァァ!』

 美奈は泣き出した。鳴き声を隠そうとしているが、止まることなく泣き続けた。

 それから数時間してようやく落ち着きを取り戻す。

 『……シュウちゃん。もう……悪い奴は居ないから……また側にいてくれるよね』

 そのまま美奈は眠りにつき、翌日の朝になってようやくその家を立ち去った。

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