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十四 2.罪の償い

2.少年は法による裁きを求めた

 「ミナは裁かれなきゃいけない」

 どのような理由があれ多くの人を殺してしまった。その罪を償わなければならない。秀一は決断した。

 「できることはミナを捕まえることだな」

 警察に自首させるもしくは逮捕してもらう。そのために確実な準備が必要なのは秀一は十分に理解している。そこで連絡して準備が整うのを待った。

 「ミナ……どれほど時間がかかるかわからないがすべてを償いやり直そう」

 椅子に体を預けその時が来るのを待った。

 

 時間はまだ13時を過ぎたばかり。周りには警察の関係者ばかりがいる。人気のないはずの公園は異様な緊張感に包まれていた。それは波華美奈を誘い出すために作られた網である。そこで美奈のことを思いながら待ち続けた。約束したわけではないのに美奈が来ると秀一は確信を持っている。

 全てが終わった後美奈のためにどんなことをしようかと考えているといつの間にか目の前に少女がいるのに気が付いた。その少女は無邪気な笑顔を少年に向け小走りに近づいていく。秀一は胸が痛くなるのを感じうつむいて顔をそむけた。

 美奈が秀一の目の前3mの位置まで来たとき周りにいた警察の人間にが一斉に動き美奈を取りおさえた。美奈は何が起きたのか理解していないような表情を秀一に向けていた。それは不安と恐怖が混ざった哀しい表情であった。

 「え……シュウちゃん……」

 ふと漏れた美奈の声に秀一は無反応を貫けなかった。

 「なんで……シュウちゃん、どうして……」

 すがるような目で秀一を見つめている。それに秀一はただ黙るだけだ。

 「シュウちゃん!」

 大きな声で叫んだがそれに応えないように秀一は両手で自分を抑えていた。

 「イヤ! シュウちゃんと離れるのはもうヤダ!」

 必死に手を伸ばすが遠すぎて届かない。秀一が手を伸ばせば届く距離に美奈はいるが秀一は手を伸ばさない。やがて拘束されて連れていかれようとする。

 「シュウちゃん……そばにいてくれるよね? そうだよね?」

 美奈は泣きながら秀一に話しかける。

 「イヤなの……もうシュウちゃんがいてくれないと……イヤなの……」

 美奈はそのまま連れて行かれパトカーに乗せられる。

 「何で……何で……シュウちゃんずっとそばにいてくれるって言ったのに……シュ……シュウちゃんが……」

 泣き続ける美奈は言葉を詰まらせながらそのまま連れて行かれた。そこには2人の警察官と一人の少年が残されていた。

 「ありがとう。君の協力のおかげでこの事件を終わらすことができたよ」

 少年の肩を軽くたたき労いの言葉をかけるが少年は涙を流すだけで反応は示さなかった。



 それは重大なニュースになった。6人もの人を殺害した少女として。美奈は何も話さず1日中「シュウちゃん。シュウちゃん」と泣きながらつぶやくだけであった。

 この事件はマスコミの格好の的となり秀一の元にも多くの取材がやってきた。十年前に起きた誘拐事件の被害者が起こした殺人事件。どこで嗅ぎつけたのか秀一と美奈のことをあることないこと連日報道されたが何も語らない両者にやがて飽きが来て忘れ去られていった。

 「すべての罪を償うまでミナに会わない」と秀一は心に決めていた自分に罪がないわけじゃない。それが償い終えるまで待つ。美奈が罪を償い終えてもし自分のもとに来たら迎え入れる。そんなことを秀一は考えてその日が来ることを夢見ていた。

 「また一から作り直そう。琴葉も母さんも自分のせいで死なせてしまったんだ。それが償えたらミナと笑って過ごせる未来をすごしたいな」

 秀一は重荷を下ろしたような穏やかな表情でつぶやいた。

 やがて美奈は刑に服することになった。とても長い時間になったが何時か美奈は出てこれる。

 「ミナ頑張れよ」

 また笑ってそばに入れる時を夢見ていた。

 しかし秀一の考えは美奈の想いを一切考えていない御目出度い考えであった。

 秀一と美奈が出会わなくなって半年後、美奈は獄中で自殺した。自らの首を自らの手で無理やり引き裂いたことにより死亡した。

 そこには一人の少年に宛てられた一通の手紙が残されていた。

----

 シュウちゃんへ

 ごめんね。迷惑だったね。シュウちゃんがいつも一緒にいるって約束を忘れたのはミナのことが嫌いになったからだよね。

 でもミナはそんなことにも気が付かなくてわからなくていっぱい迷惑かけちゃった。

 それでもミナはシュウちゃんが大好きなんだ。

 でもこれ以上迷惑かけたくないし、独りぼっちで生きていくのは辛いから死ぬことにするね。

 バイバイシュウちゃんごめんね。

----

 秀一のもとに届けられた手紙を見たとき全てが崩れさる感覚に襲われた。

 「あ……ああ……うあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 少女の辛さをわかってやれなかった。

 少女の懸命さをわかってやれなかった。

 少女の想いをわかってやれなかった。

 少女の弱さをわかってやれなかった。

 少年は少女のことを理解してあげなかった。

 「ミナ……すまない……」

 その言葉は届かない。自分の考えのなさを恨み続けた。少女は少年の元から遥か遠くに行ってしまい、美奈を永遠に失ってしまった。死が二人を分けてしまった。



----



少年と少女はいつも隣にいた

しかし少年は今は一人

二人は永遠に分かれてしまった

もう会えない

すぐに行けるほど近いのに二度と会えないくらい遠い

少年は孤独な人生を歩むことになる

しかしそれは少年が少女の気持ちを知れなかったがためにおこったこと


失って……

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